「走る映画」のプレイリスト|vol7. レースドライバーも、まずは走り込みが重要。
映画の主人公気分で走りたい! 「走る」シーンが象徴的な数々の名画のサウンドトラックをつないで、ランニング気分を高め、鼓舞してくれるプレイリストを作る試み。第7回は、ブラッド・ピット主演『F1®/エフワン』をはじめとしたモータースポーツ映画から、走るテンションを高めてくれるサウンドトラックを厳選。映像と音楽で「走り」を描いた作品たちの名曲をつなぎ、疾走感あふれるプレイリストをお届け。
選曲・文/渡辺克己(サントラ・ブラザーズ) 写真/アフロ
ブラッド・ピットがレーサーを演じる映画『F1®/エフワン』』が公開され、現在大ヒットを記録している。タイトルが示す通り、F1の世界選手権を題材にした今作は、ジョセフ・コシンスキー監督&クラウディオ・ミランダ撮影監督の『トップガン マーヴェリック』(2022年日本公開)コンビが制作するという情報から、迫力満点の映像が期待されていた。
劇中で運転を担当するレーサーに、ポイント・オブ・ビュー(一人称視点)用のカメラを装着し、まるで自分がマシンに乗ってような気分になるレースシーン。高解像度と大画面によるIMAX上映で鑑賞すると、擬似体験に近い興奮が得られる、期待を裏切らない作品だ。
平均200キロ、最高350キロのスピードで走行するF1カーの運転は、動体視力や反射神経はもちろん、体力も必要になってくる。それゆえ、肉体的な鍛錬も欠かせないため、モータースポーツをモチーフにした作品の多くには、トレーニングシーンが登場する。
そこで、今回はモータースポーツ映画のサウンドトラックの中から、登場人物たちがワークアウトするシーン、そしてレースで使用されるスコアや使用楽曲を選び、プレイリストを制作。テンションの高い競技だけに、テンポのいい、時に激しい楽曲が多いが、ここではもちろん、ランニングに最適の楽曲をセレクトするので、ご安心を。
まずは、緩やかに走り始める時の爽やかな曲から。数々のトレーニングを積んだことでお馴染みのトム・クルーズが、ストックカー・レースのドライバーを演じた『デイズ・オブ・サンダー』(1990年日本公開)のメインテーマM1。時代的にガンズ・アンド・ローゼズやジョーン・ジェットといった、80’sロックが劇中歌として使用されているが、オリジナルスコアはメロウなもの。
劇伴を手掛けたのは、映画音楽界の巨匠であるハンス・ジマー。バグルス『ラジオスターの悲劇』(1979年)で聴ける、有名なシンセサイザーの演奏を筆頭に、数多くのポップスをプロデュース。
電子楽器とオーケストラを融合させた迫力ある作曲/編曲がハリウッドで認められ、80年代末から映画音楽へ参入。SFやアクションはもちろん、モータースポーツ作品の劇伴も数多く手掛けている。現在は電気自動車の起動音なども手掛けており、何かとテクノロジーと相性がいいことがわかる。
続く『ラッシュ/プライドと友情』(2014年日本公開)のM2もジマーのよる劇伴。メロディ自体は美しく、シンプルな曲にも聴こえるが、シンセとギターリフ、オーケストラを組み合わせることで、独特の緊張感を漂わせている。
また、ジマーと交流のある、デヴィッド・ボウイのM3が使用されている。ジマーがスコアを手掛けた最新のモータースポーツ作『F1®/エフワン』で、ブラッド・ピットが実際に行うテクニカルかつ理論的なトレーニングシーンは、実際の肉体作りの参考になるものが多い。
そろそろランニングのテンションを上げるため、ここではジマーとコシンスキー監督が選んだ劇中使用曲を。ティエストとセクシー・レッドのM4、ポウザのM5、そしてペギー・グーによるM6。現在注目を集める新しいハウスミュージックを、超大作で3曲も起用するとは、さすがの選曲。
続いては、10代にしてレーシングシミュレーションゲーム『グランツーリスモ』の天才プレイヤーとして名を馳せたヤン・マーデンボローが、トレーニングの末、現実世界でプロのレーシングドライバーになるまでを描いた映画『グランツーリスモ』(2023年日本公開)のM7。どこかゲーム音楽っぽさが残るスコアは『ミッション・インポッシブル』シリーズでお馴染みのローン・バルフ。
カーレース史に残る一戦を描いた『フォードvsフェラーリ』(2020年日本公開)から、クリスチャン・ベールが演じた伝説のレーサー、ケン・マイルズが耐久レースに臨む前に行ったトレーニングと、レースシーンで使用されたM8、M9、M10。
そろそろランニングも終盤を迎え、スピードを落とすタイミングに差し掛かったら、『スピード・レーサー』(2008年日本公開)からジャジーなM11。この映画は日本のアニメ『マッハGoGoGo』のハリウッド実写化ゆえ、メインテーマであるM12は、越部信義による原曲をカバーしたもの。最後は『栄光のライダー』(1972年日本公開)のメインテーマであるM13で、爽快なゴールを迎えよう。