1日にコーヒー3杯。脂肪肝が気になる人の新・食習慣。

肝硬変や肝がんなど取り返しのつかない病気に進行する脂肪肝。改善策は、食事と運動の二軸が効果的。だが、まずは日常の過剰な糖質や脂質を見直していこう。

取材・文/石飛カノ 監修/川口 巧(久留米大学教授)

初出『Tarzan』No.900・2025年4月3日発売

コーヒー3杯で脂肪肝改善
教えてくれた人

川口巧(かわぐち・たくみ)/久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門教授。肝臓とさまざまな臓器や病気とのつながりについて研究。

急増中の脂肪肝が重篤なトラブルに。

かつてメジャーな肝臓病といえばウイルス性の肝炎。その治療法が進んだ現在では脂肪肝がうなぎ上りに増えている。健康診断で「脂肪肝」と診断され、落ち込むどころかちょっと自慢げな中年男性たちに告ぐ。脂肪肝は最悪の場合、肝硬変や肝がんなど取り返しのつかない病気に進行する可能性を秘めている。正しく怖がるべし。

「脂肪肝の有病率は成人人口の約30%ともいわれています。改善するためには食事と運動の2軸で対策していくしかありません」

と言うのは久留米大学教授の川口巧さん。食事で摂った栄養は小腸から吸収され肝臓に送られる。そこからカラダの各所に運ばれ活用されるが、過剰な糖質や脂質は肝臓で中性脂肪として蓄えられる。これが高じた状態が、問題になっている脂肪肝。

できるだけ早いうちに引き返した人の勝ち。とりあえず、今すぐにできる食事改善から実践を。

脂肪肝が進行すると

過食と運動不足で脂肪肝と診断されると、それ以降、炎症が起こるとMASLDと呼ばれる状態になり、肝硬変や肝がんに進行することも。

果糖の摂取を減らす。

過剰な糖質摂取は肝臓での脂肪合成を招く。その糖質の中でもとくに吸収スピードが速いのが果物に含まれる果糖。同じ糖のブドウ糖が筋肉や他の臓器で代謝されるのに対し、果糖の代謝は肝臓一択。フルーツを食べるなら1日ゲンコツ1個分までにしたい。

さらに、より厄介なのは加工食品や清涼飲料水に含まれる果糖ぶどう糖液糖という成分。食品ラベルを要チェックのこと。

飲料製品のラベル一例
品名 炭酸飲料
原材料名 果糖ブドウ糖(国内製造)、ローヤルゼリー…

食品ラベルの表記は含有量の多い順。常にチェックを怠りなく。

お酒は1日1合まで。

肝臓で代謝されるアルコールの過剰摂取も脂肪肝の原因となる。お酒に含まれる純アルコールの割り出し方は、お酒の量(mL)×アルコール度数(%)×アルコールの比重0.8。1日の適正量は20g程度となる。

「私が自宅で晩酌するときの飲酒量は日本酒で1合程度で純アルコール20gに相当します。この量を超えないよう心がけています」(川口さん)

純アルコール20g1合)とは?
アルコール 度数
日本酒 15% 180mL
ビール 5% 500mL
焼酎 25% 約110mL
ワイン 14% 約180mL
ウィスキー 43% 60mL
缶チューハイ 5% 約500mL
7% 約350mL

純アルコール計算式に従って編集部で計算。

1日2〜3杯のコーヒーを習慣に。

重篤な脂肪肝のリスクは高血圧や肥満、糖尿病などの基礎疾患があることでぐっと増す。それとは逆に重度の脂肪肝のリスクを減らしてくれるのがコーヒー。

「コーヒーには抗炎症作用があるため脂肪肝の改善に有効です。ただし、砂糖やミルクを入れると効果が薄れるのでブラックで飲みましょう。インスタントでもOKなので1日2〜3杯のコーヒーを飲む習慣を」

重症脂肪肝の危険度。

重症脂肪肝の危険度

Catalano Det al, Dig Dis Sci. 2010; 55: 3200-6