「老けない顔」を作る、9つの生活習慣。

表情筋や姿勢へのアプローチだけではなく、もっと根本から顔を変えたい。それなら、生活習慣と食事の改善が最大の近道だ。厳選した9のルールを紹介しよう。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/浅妻健司 取材協力・監修/柳澤綾子(医学博士)

初出『Tarzan』No.902・2025年5月8日発売

顔が老けない9ルール
教えてくれた人

柳澤綾子(やなぎさわ・あやこ)/医学博士。専門は公衆衛生学、医療経済学、データサイエンス。海外の最先端エイジングケアメニューを提供する〈ALクリニック〉副院長。

1.抗酸化物質が豊富な食材を選ぶ。

抗酸化物質が豊富な食材を選ぶ

「酸化は“錆び”、糖化は“焦げ”といわれますが、行き着く先は細胞の衰えです。まずは糖化を促す因子となる酸化を防ぐことが第一歩」(医学博士の柳澤綾子さん)

最も手っ取り早いのは抗酸化物質を含む食材を日々の食卓に乗せること。もともとヒトには自前の抗酸化酵素が備わっているが、哀しいかなそれらは加齢によってどんどん減っていく。となれば、外から抗酸化作用のある栄養素を摂り入れるしか道はない。

お馴染みのビタミンA・C・E(エース)や植物に含まれるポリフェノール類など、食材の多くは野菜や果物。いつもの食事や間食、飲み物に導入したい。

ビタミンA‌/βカロテン モロヘイヤ、ニンジン、ホウレンソウ、オクラなど
ビタミンC パプリカ、芽キャベツ、キウイ、イチゴ、ミカンなど
ビタミンE 植物油(ヒマワリ、ヤシ、べに花など)、ナッツ、ゴマなど
ポリフェノール トマト、ブルーベリー、赤ワイン、緑茶、チョコレート

2.主食は茶色、野菜やタンパク質を先に食べる。

主食は茶色、野菜やタンパク質を先に食べる

食材だけでなく食べ方もまた大事。キーワードはインスリン。

「血糖値の乱高下でインスリンが急激かつ大量に出る食生活をしているとインスリンの効き目が悪くなって血糖値が上がり、結果的に糖化に繫がりやすくなります。そのリスクを防ぐ方法が未精製の主食や食べる順番です」

玄米や雑穀など未精製の茶色い主食は白米に比べて食物繊維を多く含んでいる。食物繊維が糖質の吸収スピードを緩やかにするためインスリンの急激な大量分泌も防げる。同じ理由で野菜やタンパク質を先に口にすることが血糖値スパイクおよびインスリンのだだ漏れ防止に。

おにぎりは白米ではなく玄米、麺類は具から食すべし。

血糖値の変化のイメージ図。

血糖値の変化のイメージ図。

食事を摂るごとに血糖値が急上昇し、直後に急下降する。この血糖値スパイク状態が続くとインスリン抵抗性が高まる。血糖値を安定させるカギは主食の選び方と食べ順。

3.調理法は「揚」より「生」を選ぶ。

調理法は「揚」より「生」を選ぶ

最終糖化産物と呼ばれるAGEsが細胞を焦がして機能不全にさせる。ならば、AGEsを増やさない対策を取り入れるしかない。できることはやはり食事。

「たとえば、タンパク質食材は加熱すればするほどAGEsが増えていきます。それ自体が細胞内に蓄積されるというはっきりしたエビデンスはありませんが、AGEsを含む食物を口に入れれば糖化のリスクが増える可能性は十分にあります」

食物中のAGEsとエイジングの因果関係はまだ不明だが、老け顔対策の可能性があるなら実践しない手はない。選択肢がある場合は揚げより焼き、焼きより茹で、茹でより生を選びたい。具体的なメニューは下の表を参考に。

食物中のAGEsとエイジングの因果関係

4.一年中日焼け止めを欠かさない。

一年中日焼け止めを欠かさない

当たり前の話だが、肌の老化は老け顔に大きく影響する。一本のシワ、ひとつのシミが一気にその人の印象を老けさせてしまう。そのシワやシミの主な原因が紫外線による酸化。

酸化反応のスイッチは多くの因子によってオンになる。紫外線もそのひとつ。紫外線が肌から体内に侵入すると、反応性の高い活性酸素が発生する。不安定で反応性が高い活性酸素は周りの細胞の電子を奪って自らを安定させようとする。これが酸化反応だ。

電子を奪われた肌の細胞は不安定になって機能が低下しシミやシワができる。いわゆる「光老化」という現象がこれ。

防ぐ方法は季節度外視の日焼け止めや日傘などの紫外線対策。

シワのできる仕組み

5.適度な運動を生活に取り入れる。

アンチエイジングには適度な運動も欠かせない。でも「適度」って一体、どの程度の運動?

2023年に厚生労働省が発表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」で、成人部門に推奨された運動は下の通り。

「身体活動」とは特別な運動ではなく日常生活の活動。1日60分以上は家事や通勤などでカラダを動かせということで、歩行にすると8000歩に相当する。よく1日1万歩と言うが、一説には1万歩という目標は高すぎるという話もある。

これとは別にジョギングレベルの運動を週60分以上、その一部に週2〜3回の筋トレを組み込み、さらに座る時間を減らす努力をすべしとのこと。この適度、あなたはクリアできているか?

厚生労働省の運動ガイド
身体活動 歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(1日8000歩以上)
運動 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上
筋力トレーニングを週2~3回
座位行動 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意する

6.メディテーションを試してみる。

メディテーションを試してみる

活性酸素を作り出す最大の要因といわれているのが、食事ではなく実はストレス。

「過度なストレスは活性酸素の原因のほとんどを占めているのではないかといわれています。たくさんストレスを抱えて爆発する前に、小さなストレスの段階で細かくガス抜きをすることが重要。血糖値と同じで上下の振れ幅ができるだけ少ない方がカラダに負担がかからないからです」

アプリなどを利用してメディテーションやマインドフルネスをしてみるのもよし。また、仕事や家庭以外の趣味の集まりなど“第3の場所〟を確保するというのも有効な手段。自分なりの方法を見つけてこまめにストレスケアをしたいものだ。

7.飲酒は純アルコール量20gを目安とする。

飲酒は純アルコール量20gを目安とする

過度なアルコール摂取は糖化を促すひとつの因子。アセトアルデヒドがタンパク質と結合してAGEsが生成されるからだ。こちらも「過度」って一体どのくらい?

「現状の医学界の最新論文では健康のためにはアルコールは一滴でも有害とされています。でも、お酒を飲んだときの楽しい気分でストレスが発散されているとしたら、数値化できない部分でアンチエイジングに役立っている可能性は否めません」

今のところ厚労省のガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める1日当たりの飲酒量は男性で純アルコール40g、女性で20g以上。適正飲酒量は1日20g。老けたくないなら守るべし。

純アルコール量の目安。

アルコール度数÷100×飲酒量×0.8=純アルコール量

ビール 500mL缶1本
ワイン グラス2杯弱
日本酒 1合
チューハイ 350mL缶1本
焼酎 グラス1/2杯(100mL)
ウイスキー ダブル1杯(60mL)

8.タバコは期限を決めて禁煙をゴールとする。

タバコは期限を決めて禁煙をゴールとする

タバコの煙には活性酸素や一酸化炭素などが含まれていて、体内で猛烈に酸化反応が促される。「百害あって一利なし」といわれるのはこのためだ。喫煙は老け顔にも深く関わっているので要注意。コラーゲンの生成が抑制され、肌の血行が悪くなり、シミやシワ、くすみ、ほうれい線が生じやすくなることが分かっているのだ。(関連記事:顔はなぜ老けるのか?老化の原因は「酸化」にあった。

アルコールがカラダに悪いとされながら、それを上回るストレス解消効果で適量ならまあよしとされているのに対し、タバコは節煙するならばよし、とはならない。それくらい健康被害が大きいからだ。いきなりスパッとやめるのは無理としても、期限を決めて禁煙の実現を目指そう。

9.7時間を目安に適正な睡眠時間を確保する。

7時間を目安に適正な睡眠時間を確保する

人は何のために眠るのか、睡眠は健康に何をもたらしてくれるのか、詳しいことは実はまだ分かっていない。でも、実際に睡眠不足が老化や病気の引き金になることは分かっている。

「クリニックで生活調査票を書いてもらうと、働き世代はほとんどの人が睡眠時間がとても短いんです。そして本人はその状態が辛いかどうかも分からなくなっています。睡眠不足が続くと成長ホルモンの一種の分泌が低下してスーパー老化因子になるので、7時間半以上は寝てくださいとアドバイスしています」

下のグラフのように死亡リスクが最も低いのは7時間睡眠という研究報告もある。7時間未満の人は睡眠環境の再考を。

睡眠時間と死亡リスクの関係。

睡眠時間と死亡リスクの関係

110万人の被験者を対象にアメリカで行われた約6年間の追跡調査。男女ともに睡眠時間7時間のグループの死亡リスクが最も低かった。

Kripke DF, et al. Arch Gen Psychiatry. 2002