顔はなぜ老けるのか?老化の原因は「酸化」にあった。

いつの間にかシワが増えて若い頃とは変わっていく顔。そもそも、なぜ加齢で顔が変化するのか? 最新の老化研究につながる細胞の話を解説しよう。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/中尾 悠 取材協力・監修/上符正志(銀座上符メディカルクリニック院長)

初出『Tarzan』No.902・2025年5月8日発売

顔が老けるってなんだ
教えてくれた人

上符正志(うわぶ・まさし)/米国抗加齢医学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。米・ニューヨークの最先端治療プログラムを習得し日本に導入。

“老ける”とは細胞が老化することだ。

「もう歳だからしょうがない」

そんなフレーズが思わず口をついて出るようになった今日この頃。でも、老化は生物にとって避けることのできない生命現象だ。

10年前の自分にはなかったシワができたり髪に白髪がチラホラ交ざったり、時間の経過とともに見た目が老けていくのはしょうがない。だって、ものごとは放置しておけば秩序をなくして乱雑になっていくという、エントロピー増大の大法則があるのだから。

……ところが、実はそうでもないらしいのだ。

「アメリカでは完全に老化は病気という前提で研究が進んでいます。病気であれば原因がある。原因が分かれば治療ができる。老化が治療対象になってきたんです」

と言うのは、抗加齢医療の専門家、上符正志さん。食が細くなったり腰が曲がるという見た目の老化は、胃腸など臓器や椎間板などの組織の機能低下が原因。もっと深いところではミクロレベルの細胞の老化が主原因のひとつと考えられるようになってきたという。

老けるとは細胞が老化する

老けを促す最初のストレスは酸化。

老化の研究が本格的に始まる前から注目されてきたのが体内で起こる「酸化」という化学反応。これもれっきとした老化の原因だ。

細胞内にはエネルギーを生み出すミトコンドリアという器官がある。ミトコンドリアは酸素を介してエネルギーを作り出すが、このとき一部の酸素が反応性の高い活性酸素に変換される。活性酸素は周りの細胞を片っ端から傷つけて機能不全に陥らせる。よく言う「カラダを錆びさせる」状態だ。

若いうちは活性酸素を無効化する抗酸化酵素が豊富に備わっているからダメージは少ない。加齢とともにその酵素は減っていくのでダメージは増える一方。さらに厄介なことに紫外線やストレス、喫煙などの因子があると活性酸素はどんどん増える。つまりダブル、トリプルで酸化の害を被ることに。

「老化の理論は複雑で原因はたくさんあります。そのなかでも酸化によるダメージは大もとで、これをきっかけにその他の現象がランダムに起こると考えられます」

老けを促す最初のストレスは酸化

糖化に進行するともう後戻りできない。

酸化と同様に糖化という化学反応も初期段階で起こる老化の一因と考えられている。

糖化は体内で余った糖質がタンパク質と結びつくことでタンパク質が劣化する反応。そのプロセスではさまざまな化学反応が起こり、やがてアマドリ化合物という物質まで辿り着くが、ここから先に反応が進むともう後戻りはできない。最終的にはAGEs(糖化最終産物)が作られて、病気や老化を促す因子となる。

糖化に進行すると後戻りできない

酸化が「錆び」ならば、糖化は「焦げ」となって組織や細胞の働きを低下させる。砂糖と卵と小麦粉を合わせて焼くとホットケーキができるが、あの反応が体内で起きているということ。

AGEsは生活習慣病などの原因にもなるが、老化、とくに顔に関してかなりの悪さをすることが分かっている。肌の弾力を保つコラーゲン線維を劣化させたり、肌の保水力を奪ったり、メラニン色素の排出を阻む。そうやってシワやしみ、くすみなどが引き起こされるのだ。