タオルと爪楊枝を使った「セルフ鍼灸」で、自宅ケアをレベルアップ!
指を使ったツボ押しに慣れてきたら、少しレベルアップ。体調や症状に合わせてお灸や円皮鍼を使いこなせれば、セルフケアの幅はグッと広がる。今回はホットタオルと爪楊枝を使った、自宅でも実践しやすい「セルフ鍼灸」の方法を紹介。
取材・文/石飛カノ 撮影/幸喜ひかり スタイリスト/佐藤奈津美 ヘア&メイク/村田真弓 イラストレーション/mrsn 取材協力/伊藤和憲、柳本真弓
初出『Tarzan』No.891・2024年11月7日発売
教えてくれた人
伊藤和憲(いとう・かずのり)/明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、同大学院鍼灸学研究科大学院研究科長・教授、附属鍼灸施設臨床部長。著書に『はじめてのトリガーポイント鍼治療』『トリガーポイントマップ』(共に医道の日本社)など。
柳本真弓(やなもと・まゆみ)/大学卒業後、東京衛生学園で東洋医学を学び、鍼灸あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得。2007年に鍼灸専門治療院〈目白鍼灸院〉を開院。院長を務める。リンパを流すリンパドレナージセラピストでもある。
お灸と鍼による刺激で共通する作用とは。
お灸と鍼の基本的な作用には似通っている部分もある。まず、血流を改善し、凝りや痛みの元になっている発痛物質を取り去るという部分。これはツボ押しでも同様に見られる局所作用。
中枢性の作用では脳の視床下部という部分にアプローチし、自律神経を調節、内臓の機能やホルモンバランスを調整できるというところもお灸と鍼に共通する部分。その他、免疫機能を高めたりホルモン分泌などの内分泌機能を改善する効果や、脳の血流量を改善し、鎮痛効果をもたらす神経伝達物質の分泌を調整する効果も期待できる。
皮膚は一番上の表皮から真皮、皮下組織の3層構造になっていて、その下に筋肉などの深部組織がある。鍼やお灸は他の組織を傷つけずに深部組織近くにまで刺激を加えることが可能。
お灸が優れている点、鍼が優れている点。
どっちを選んだらいい?というときに知っておきたいお灸と鍼の相違点。
まず、お灸が優れている点は、お灸の痕の修復の際に免疫機能が発動するので免疫細胞が活性化されやすい。また、内臓の不調改善は鍼による機械的な刺激より熱による刺激の方が効果が高いケースがある。
鍼が優れている点は、より深部の組織に刺激が届きやすいこと。続いて、脳に刺激が加わることで、セロトニンなど鎮痛に関わる伝達物質が鍼の方が放出されやすいこと。そして、鍼の刺激はお灸より弱くすることができるので複数のツボや複数の症状に効かせやすいことだ。
初心者は手軽な鍼灸グッズを活用。
あの細くて長い鍼、煙がもくもくと出るもぐさのお灸を自分で取り扱うのはとても無理!もちろん、いきなりプロ仕様の道具を使う必要はない。現在は扱いが簡単な鍼灸グッズが容易に手に入る。初心者はまずここから。
お灸|内臓の不調改善が得意で、免疫力の向上効果もあり。
台座の上に円柱状のもぐさを乗せたタイプの台座灸。台座を肌の上に貼って使用。台座中心の穴から熱ともぐさエキスが肌に伝わる。
鍼|よりカラダの深部に届き、慢性痛を抑える効果が大。
直径1㎝ほどのシールの中央に鍼がセットされている円皮鍼。鍼がツボに刺さるように貼り付けて使用する。痛みはほぼなし。
ホットタオルを使ったセルフお灸。
まずは手軽なものを使ってお灸と鍼を始めよう。お灸の代わりに用意するのはホットタオル。
用意するもの|ホットタオル(1枚)
水に濡らしたタオルをよく絞ってレンジで数十秒温める。手で持てるくらいの熱さであればOK。適度な大きさに畳んでツボ周囲に当てる。ピンポイントのツボだけでなく、周辺のツボに同時に熱刺激を入れることができる。じんわりとした温かさを感じながら2〜3分キープ。
お灸による刺激に向いているツボの特徴は、周囲に比べてくぼんでいるところ、または冷たいと感じる部位。機能が低下している部分のパワーを補うようなイメージ。
肩井(けんせい)
肩の血行が悪く冷えを感じるときに。肩先と首の真ん中にある肩井を中心に肩全体にホットタオルを押し当てる。
三陰交(さんいんこう)・陰陵線(いんりょうせん)・足三里(あしさんり)
温めることで足の冷えの改善に。足先から骨盤に戻っていく血液を温める効果が期待できる。内くるぶし、膝内側、膝下の順番で。
中脘(ちゅうかん)
お腹が冷えて胃腸の調子が悪くなりがちというときに。みぞおちとおヘソの中間にある中脘を中心にタオルで温める。
腎兪(じんゆ)
加齢による不調や痛みが腎兪に出ている場合、その原因が冷えにあることも。背中の中心にホットタオルを当てる。
爪楊枝を使ったセルフ鍼。
「鍼ばかりはセルフではできないでしょう」と思われるかもしれない。しかし、爪楊枝を利用すればそのハードルはグッと低くなる。
用意するもの|爪楊枝(20本程度)、輪ゴム
爪楊枝鍼に向いているのは慢性的な痛みの症状に対応するツボ、皮膚の表面が張っていたり腫れぼったくなっている部位などだ。
内関(ないかん)
胸に繫がるツボ。胸苦しい、上半身が腫れぼったい場合は鍼の刺激で熱を除去。手首のシワから指3本分手前を爪楊枝で軽くつつく。
翳風(えいふう)
顔にあるツボは単純にお灸をすることが難しい。頭痛や肩こりの緩和を狙うなら耳の後ろのくぼみを鍼で軽く押してみよう。
合谷(ごうこく)
お灸でもいいが、イライラなど気の滞った状態では腫れぼったくなる場合が多いので、鍼の方がベター。手の甲の水かき部分を刺激。
百会(ひゃくえ)
頭痛やイライラが強く、頭に血が上ったような感覚があるときは、鍼の方が効果が高い。頭のてっぺんを楊枝で軽く刺激。