【初級編】「正しい懸垂1回」を完成させるための練習法
正しいフォームでやる懸垂はめちゃくちゃ難しい。だからこそ、まずは1回をきちんと完成させることを目標に取り組みたい。今回は正しくカラダを使うための準備運動と、筋肉の特性を利用し、効率的に完成形へと近づけるメソッドで、確実に正しいフォームへと導いていく。懸垂初心者はもちろん、上級者も今一度正しくできているかを確認しながら取り組んでみよう。
取材・文/鈴木一朗 撮影/小川朋央、AdobeStock(TOP画像) スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮二 イラストレーション/山口正児 編集/堀越和幸 監修/清水忍(IPF代表) 撮影協力/ReBoot辰巳 https://reboot-gym.com/
初出『Tarzan』No.846・2022年11月24日発売
目次
まずは「筋収縮3種類」を学ぶ
「正しいフォームでの懸垂は難しい。多くの人は歯が立たないはず。だから、まずは1回を目標にしてトレーニングをしましょう」とトレーナーの清水忍さん。
そのために知っておきたいのが、筋肉の収縮についてだ。筋肉は収縮することで力を発揮するのだが、これには大きく3つの種類がある。
筋肉の力発揮、3つの種類
①エキセントリック:このトレーニングでは、ダンベルを遠ざける動き。ダンベルが上腕から離れ、筋肉は伸ばされながら力を発揮する。出力は最も高い。
②アイソメトリック:肘の関節をある程度曲げ、ダンベルを保持すると、筋肉は同じ長さのまま力を発揮し続ける。出力はエキセントリックの次に高い。
③コンセントリック:筋肉が縮みながら力を発揮する。アームカールでは、ダンベルを上腕に近づける動きだ。3つの中で筋肉の出力がもっとも低い。
ひとつがコンセントリック。上のイラストはアームカールだが、ダンベルを持ち上げ、上腕に近づける動作がそれに当たる。筋肉が縮みながら力を発揮する。
逆にダンベルを遠ざける動きがエキセントリックだ。筋肉は伸ばされながら力を発揮する。そして、アイソメトリック。これはダンベルを保持した状態で、筋肉は一定の長さで力を発揮し続ける。
「発揮できる力は、エキセントリックがもっとも大きく、アイソメトリック、コンセントリックという順です。なぜなら、持ち上げた重量を保持したり、ブレーキをかけながら下ろしたりすることができなければ、ケガに直結してしまうからです」
懸垂の練習に3つの筋収縮を応用
で、これを懸垂に応用する。
最初に力発揮が大きいエキセントリックで筋力を高め、規定回数をこなせるようになったらアイソメトリックでさらに強化していく。こうすることで、効率よく背面の筋肉を鍛えられる。
下に紹介した3つのドリルを完璧にこなせば、懸垂1回はできるようになるはずだ。もしできない人は、斜め懸垂を何回かやって動きを覚えてから再チャレンジしてみよう。
「ドリルでは肩甲骨の準備運動も紹介しましたが、僧帽筋の柔軟性が高まり、筋力アップも狙えます。週に2〜3回の頻度で、早い人なら1か月もあれば、美しいフォームの1回ができるようになりますよ」
正しい懸垂のフォームについてはこちらの記事をチェック:これができて初めて1回。効かせる懸垂フォームを徹底解剖|TarzanWeb
ドリル⓪ 肩甲骨の準備運動
肘が直角に曲がったとき、上腕は床と平行に、前腕は垂直になるよう、手の幅を決める。ぶら下がって、肘は曲げずに肩甲骨を寄せて下げながらカラダを引き上げ、元のぶら下がった状態に戻る。10回が目標。
エキセントリック、アイソメトリックのウォームアップとして使おう。
ドリル① 椅子を使って下りる(エキセントリック)
椅子に立ち、手幅を決めてバーを握ったら、懸垂のフィニッシュポジションを作る。フォームが決まったら膝を曲げ、足を椅子から外してぶら下がる。
4秒かけて下り切るまで肘を伸ばし、カラダを下ろしていく。下り切ったら椅子に足を乗せて元に。5回できたら次へ。
ドリル② 椅子を使って止まる(アイソメトリック)
椅子に立ち、手幅を決めてバーを握る。懸垂のフィニッシュポジションを作ったら、膝を曲げ足を椅子から外してぶら下がり、その状態で10秒間キープする。
背すじが丸まったり、肘が伸びたりとフォームが崩れたらノーカウントで終了する。10秒キープを5回できたら次へ。
ドリル③ 椅子を使って斜め懸垂(コンセントリック)
前のトレーニングがこなせたら、最低1回は懸垂ができるはず。もしできなかったら、負荷の小さい斜め懸垂で、動き方を覚えるといい。
斜め懸垂は足を前方に置くほど、負荷は大きくなる。写真のように椅子を使ってもいいし、公園なら低い鉄棒で試してみよう。
コラム:体幹を固めるという感覚をつかもう
どんな動きでも、キモになるのは体幹。ここが締まっていないと、動作中にバランスが取りにくくなる。もちろん、懸垂でも同じ。
とくにカラダを引き上げる動作のときに体幹を固めないと、カラダが安定せず、まっすぐ上げにくくなる。
といっても、鉄棒にぶら下がって体幹に力を入れる感覚がわからない人もいるはず。そんな人は、パートナーに腹を押してもらい、その感覚をつかもう。