はじめは硬くてOK。白井健三さん直伝のストレッチ3種目

世界選手権、体操床運動男子で最年少金メダル獲得をはじめ、数々の偉業を成し遂げた日本を代表する元体操選手・白井健三さん。その高い柔軟性は実は、地道な努力によって得たものだった。無理をせず、コツコツ続けるのを大切にしているという白井選手のストレッチを教えてもらった。

取材・文/黒田創 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 

初出『Tarzan』No.838・2022年7月21日発売

体操元日本代表・白井健三さんのストレッチ・ルーティン

はじめはカラダを揺らすだけでもOK

現役時代は「シライ」の名を世界に轟かせた白井健三さん。その柔軟性は生来のものではなく、日々の地道なストレッチで得られたという。

白井健三さん

白井健三さん

教えてくれた人

しらい・けんぞう/1996年生まれ。床運動男子最年少(17歳1か月)で世界選手権金メダルを獲得。リオ五輪では団体総合で金、跳馬で銅メダル。6個の技を主要国際大会で初めて成功させ、すべてに「シライ」の名が付けられた。引退後は日本体育大学助教を務める。

「小さい頃はカラダが硬くて、ストレッチもやらされる感じでなかなか柔らかくならなかった。でも中学生のとき、先生に“ケガしてもよければそのままでいいよ”と言われて初めて主体的に取り組むようになり、少しずつ硬い部位も伸びるようになっていったんです。

だからカラダが硬くて悩んでいる方も、スマホを見ながら開脚して前後に揺らすだけでOK。自分に合った強度で、無理せずコツコツと毎日続けること。劣等感を持つことなく“1週間後に1cm伸びればいいや”ぐらいの気楽なスタンスでやると、次第にカラダは変わってくると思いますよ」

白井さんにとって、ストレッチは“無意識”かつ自然にやるものだ。

「大学での業務はデスクワークも多いのですが、椅子に座っていても常にどこかしら伸ばしていますね」

体操界のレジェンドはそう言って笑いながら軽やかに全身を伸ばす。その様はまさに息を吸うかの如し。背中(タオル)、股関節まわりの白井流ストレッチをとくとご覧あれ。

タオル(背中)ストレッチ

持ち手の幅を調整できる大きめのタオルを用意。

①②:横に持ち、頭の後ろで左右に広げる。「これだけで肩や背中の上部にジワジワきます」。そのまま左右に倒し体側部も伸ばす。

③④:手の幅を広げて縦にして動かす。「張りがあるときにやると効果的」。

⑤⑥:横に持ち直して背中側に回し、そのまま前へ。「肩甲骨を広げたり寄せたりできます」。

⑦⑧⑨:横に持ち頭上へ。上体を反らせると同時に左側にタオルを強く引っ張り、戻したら反対側も同様に。

「①〜⑨を止まらずにやってみてください。気持ちいいですよ!」。

股関節のストレッチ

①②:床に座り、開脚から上体を前傾させ、そのまま左右に揺らしていく。「開脚も前傾も無理する必要はありません。背中を丸めず、常に腰を立てるよう意識し、痛気持ちいい程度の強度で揺らすだけで股関節まわりやハムストリングス、臀筋が伸ばされます」。

③:片方の膝を曲げて左右の太腿をマッサージ。「片脚ずつ、内転筋やハム、ふくらはぎまで伸ばしていきます」。

④:最後はそのままグイッと前傾。「腰まわりの筋肉も伸ばしましょう!」。

肩まわりのストレッチ

①②:壁に対して横向きに立ち、片手を壁につく。そのまま壁に背を向ける。「肩まわりが伸ばされるのを感じましょう」。

③④:肩がほぐれてきたら手の位置を上へ。さらに頭を腕の側に傾け、肩のより広い範囲をゆっくりストレッチ。これを数回繰り返す。

⑤:そのまま膝を曲げ伸ばししてカラダを上下に動かし、肩関節や肩甲骨を動かしていく。「動きをキープするのではなく、ユラユラ動き続けましょう」。