山下杏也加選手をMVPに導いた“起き上がり”ストレッチ
女子サッカー日本代表の守護神、山下杏也加選手。ゴールキーパーという責任感が伴うポジションで、結果を出し続ける秘訣は、試合前の独自のストレッチにあった!? 一連の流れの中で、全身の可動性を高め、動けるカラダをつくる“山下式起き上がり”ストレッチを大公開! 運動前のルーティンに取り入れてみよう。
取材・文/黒田創 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓
初出『Tarzan』No.838・2022年7月21日発売
山下杏也加さん
教えてくれた人
やました・あやか/1995年生まれ。INAC神戸レオネッサ所属のプロサッカー選手。ポジションはGK。女子日本代表。2021-22シーズンは19試合出場で7失点。同シーズンのWEリーグアウォーズにおいて、日本の女子リーグ史上初となるGKによるMVPを受賞した。
女子プロサッカーの守護神が練習前に必ず行うストレッチ
女子プロサッカーWEリーグ・INAC神戸の、そして日本代表の守護神でもある山下杏也加選手。彼女の手がボールに数mm届くか否かで試合展開は大きく変わる。その責任感がストレッチを特に入念に行わせる。
「昔は筋トレばかりだったのですが、膝のケガを機に回復力を高めて故障を防ぐことや、動きの精度を高める方に考えをシフト。ストレッチにかなりの時間をかけるようになりました。
練習前は大きく腕を伸ばすための肩まわりはもちろん、股関節まわりもしっかりほぐしながら、徐々に出力を高めてようやくプレーに入っていくイメージです。毎日1時間くらいはやるでしょうか。十分ストレッチできていないと動きは確実に鈍くなるし、試合でいきなりピンチを迎えても失点を防げませんから」
スタートは地面に座ったポジションから。下半身→上半身と徐々に大きな動きを作っていく。
「流れの中で全身の可動域を高め、動けるカラダを作っていくのが私のルーティン。どんなスポーツにも応用できてケガ防止にもつながる。一連の動きを止めず、動き続けることを意識しながら、皆さんも運動前にやってみてください」。
山下式「地面からの起き上がり」ストレッチ
① ベタ座り姿勢からの片脚前屈
片脚ずつ、ハムストリングスからふくらはぎを伸ばす。「足先を手でワイパーのように動かすと裏側のより広い範囲をストレッチできます」。
② 定番の開脚で効率的に伸ばす
内転筋とハムストリングス、尻まわりを1ポーズで伸ばす開脚ストレッチ。「倒す、起こすをゆっくり繰り返しましょう」。背中を丸めないように。
③ 内転筋を伸ばし、1歩目を俊敏に
足裏を合わせ、踵を股間に引き寄せる。足の爪先を持ち、上体を前傾させて内転筋をストレッチ。「踵を股間に寄せると効きどころが変わります」。
④ 尻の柔軟性は大きなパワーを生む
両手を後ろにつき、片膝を立て、その膝に反対の足首を乗せて胸に近づけながら尻の筋肉を伸ばす。「カラダが硬い人もやりやすいストレッチです」。
⑤ 膝を曲げると体重をかけやすくなる
床に座り、前後に脚を広げ、前の膝を曲げる。次に前脚に上体を覆い被せるように体重をかける。「伸ばしている感を得やすいストレッチです」。
⑥ 上半身、下半身を連動させて伸ばす
⑤の姿勢からさらに上体を前傾させ、床に近づけるように倒して腕を伸ばす。「尻と内転筋、腸腰筋に加え、背中や肩甲骨まわりも伸ばせます」。
⑦ このひと捻りが細かい部位に効く
⑥の姿勢から軽く上体を起こし、そのまま左右に捻り、同時に曲げた膝側の肘で足裏をグイグイ押す。「腰骨の下あたりが思い切り伸ばせるんです」。
⑧ 上下をつなぐ部位も意識的に
両足を前後に開いて立ち、前の膝を曲げる。片腕を上げ、体重を真下にかけつつ上体を左右に倒す。「股関節まわりと腸腰筋、体側部を伸ばします」。
⑨ 伸ばすだけじゃなく、可動域も作る
脚を前後に開いて立ち、上体を前傾。手は床に。重心を真下にかけつつ両膝を曲げ伸ばし。「ハムとふくらはぎを伸ばし、膝の可動域も広げます」。
⑩ 股関節まわりを前後左右に伸ばす
脚を前後に開いて立ち、上体を前傾。手は床に。重心を真下にかけつつ両膝を曲げ伸ばし。「ハムとふくらはぎを伸ばし、膝の可動域も広げます」。
⑪ 複数部位にアプローチするのがコツ
10の姿勢から、前の膝の内側をさらに手で押し、肩甲骨を下に押し込みつつ上体を捻る。「股関節まわりと肩、背中の可動域を同時に広げましょう」。
⑫ 立位からの前傾&上体傾き
いよいよカラダを起こす。脚を左右に開き、前傾。そのまま片手を真上に上げながら上体を大きく開く。「脚の裏側、背中、腰まわりを伸ばします」。
⑬ 内転筋と背中を伸ばして総仕上げ
脚を左右に開き、膝の角度を90度に。両膝の内側に手を置き、片膝を押しながら肩を内側に入れていく。「内転筋と背中を同時に伸ばしましょう」。