セルフ筋膜ケアを、東京五輪柔道金メダル・髙藤直寿に学ぶ
言わずもがな、アスリートにとっても筋膜ケアは重要だ。それを肌で感じたと言うのが東京五輪・金メダリストの髙藤直寿選手。導入したことで、筋肉と関節を常に良い状態に保つことができ、それが結果に繫がったと言う。髙藤選手流のケア法とは?
取材・文/神津文人 撮影/小川朋央
初出『Tarzan』No.830・2022年3月24日発売
東京五輪のためにやれることはすべてやる、その一つが筋膜ケアでした
金メダル獲得を宣言して挑んだリオ五輪で銅メダルに終わった髙藤直寿選手。捲土重来を期し、東京五輪で表彰台の頂点に立つため、全てを見直し、トレーニング改革に取り組んだ。
「あれをやっておけばよかったと後悔しないように、柔道のスタイルも見直しましたし、疎かにしていたセルフケアにも注力しました」
最も大きく意識が変わったのが、筋膜に対するケア。練習前と、入浴後のリラックスタイムに、マッサージガンを活用して筋膜ケアをするのが日々のルーティンに。それによって、筋肉と関節を良い状態にキープできるようになったそう。
「昔はストレッチなんかしなくても勝てるよと思っていましたし、筋膜って言われても全くピンと来ていませんでした(笑)。でも、ケアをすることで筋肉がほぐれている状態が分かるようになってきたんです。特に減量中は、普段より体内の水分が少ないせいか、筋膜が貼りつくような感覚があるので、より丁寧にケアをするようになりました」
疲れが溜まりやすい股関節周辺を重点ケア
重要視しているのは、疲れが溜まりやすい股関節周辺。
「柔道は腰を落とした低い姿勢を保つ必要があるので、お尻や太腿は入念にケアします。筋肉が硬くなっていると、関節の可動域が不十分で腰が高くなって投げられてしまう、足が上がりきらずに決めきれないということも起こり、パフォーマンスに直結するんです。ただ練習や試合の前は、ほぐしすぎると、瞬間的に大きな力を発揮するのが難しくなるので、程よい状態にする感じですね」
トーナメントを勝ち抜いて金メダルを獲得するためには、試合間のケアも欠かせない。
「筋肉の突っ張った感じや、関節が詰まった感覚はできる限り解消して次の試合に臨めるようにしています。相手の襟や袖を摑む指先や、カラダを支えている足裏もかなり大事にしています。特に足裏が攣るとごまかせず、試合が終わってしまうので」
柔道では右手と左手、右脚と左脚で役割が異なるため、筋肉のつき方や筋力に左右差がある。髙藤選手はそれを整え過ぎないようにしている。
「柔道に必要な左右差なので、そこはあえてそのままにしていますね。それも踏まえて、各部位の筋肉とその役割も意識しながら行うと、自ずとケアの質も高まっていくんです」
ここからは金メダル獲得を支えた髙藤選手のセルフケア術を紹介する。我々も日々のコンディション維持に役立てたい!
練習前後のケア
股関節まわりを中心に下半身を重点的にケアする。筋肉を伸ばした状態で筋肉の起始と停止を確認しマッサージガンを当てる。使用しているのは《ハイパーボルト》。写真のように、別の部位のストレッチをしながら行うことも。
練習前のケア
股関節と膝を軽く曲げ、左右に重心移動を繰り返す。体重を乗せた側のお尻でしっかりと受け止めるイメージ。股関節周辺をほぐす。
両膝を床につき、頭の後ろに両手を添える。背すじは伸ばし胸を前に向けたまま、左右に上体を倒す。脇と体側の筋肉・筋膜をほぐす。
試合直前のケア
前腕と手の指、脚の裏側と足裏および足指を伸ばすストレッチ。試合の直前、畳の上でやることが多い。冷えやすく、攣りやすいカラダの末端を伸ばしながら細かく動かしてケアをする。指先までベストな状態にして試合に臨む。