世界で一番“偉大”な理由
万一無人島に流されたときに備え、全身に作用するストレッチを一つだけ覚えるなら、何がベストなのか? 答えは一択。その名も「ワールド・グレイテスト・ストレッチ(WGS)」だ。なぜ、世界一と言えるのか、その理由は以下の通り。
WGSが世界一と言える6つの理由
① 全身を効率よく満遍なくほぐせる:硬くなりやすい筋肉の多くは、重力に対して姿勢を支える抗重力筋だ。WGSは抗重力筋を中心として、全身の主要な筋肉がほぐせる。
② ラクに動けるカラダになる:アスリートがWGSを取り入れるのは、関節も筋肉も滑らかに動き、パフォーマンスが高まるから。要はラクに動けるようになるのだ。
③ 筋トレやヨガの要素も入っている:WGSを因数分解してみると、ストレッチだけではなく、筋トレやヨガの要素も含まれている。合わせ技でカラダをトータルに整える。
④ 姿勢が整って美しくなる:弱い筋肉と硬い筋肉があると姿勢は崩れる。ストレッチ×筋トレで弱い筋肉が強化され、硬い筋肉はほぐれるので、良い姿勢が作れる。
⑤ ウォーミングアップになる:一般的にストレッチでは体温は上がらないが、WGSは全身を使い、血流が促されるので、運動前のウォーミングアップにも最適。
⑥ モビリティとスタビリティが両立できる:関節は可動性(モビリティ)と安定性(スタビリティ)の両立が大事。WGSは動かす関節と安定させる関節がバランスよく働く。
「WGSは、アメリカの著名なパフォーマンスコーチであるマーク・バーステーゲンらが考えたもの。彼らが指導したサッカー・ドイツ代表、アメリカのNFLやNBAのプロ選手たちが取り入れたことにより、世界中に広がりました」(パーソナルトレーナーの澤木一貴さん)
成り立ちからわかるように、WGSはアスリートのウォーミングアップやパフォーマンスアップのために考えられたスペシャルなもの。全身の主要な筋肉を伸ばし、心地よく刺激する。ストレッチだけではなく、筋トレやヨガの要素も“全部入り”。世界一と名乗るだけのことはある。
WGSは全部で4つのポーズからなり、それぞれ2秒(2カウント)静止するのが基本。左右1セットずつ終えるのに、丁寧にやっても所要時間は30秒弱。隙間時間を見つけ、その実力を早速体験してみよう。
ワールド・グレイテスト・ストレッチのやり方
エルボー・インステップランジ|2秒(2カウント)キープ
両脚を揃えて立ち、右足を大股1歩分後ろに引き、両手を床についてしゃがむ。左膝を90度曲げ、右脚をまっすぐ伸ばし、背すじを伸ばして頭から右足の踵まで一直線にする。左手を右肩に添える。
使われる筋肉:腸腰筋、大腿直筋(以上、前脚側)、大臀筋、深層外旋六筋(以上、後ろ脚側)、前鋸筋
伸びる筋肉:大臀筋、深層外旋六筋(以上、前脚側)、腸腰筋、大腿直筋(以上、後ろ脚側)、菱形筋
ソラシック・ローテーション|2秒(2カウント)キープ
左手を天井に向けてまっすぐ上げる。右腕と左腕が床と垂直になるのが理想。ヘソを床に向けたまま、背骨(胸椎)を軸として胸郭を回して顔を天井へ向け、胸を左側へ向ける。
使われる筋肉:外・内腹斜筋、脊柱起立筋、僧帽筋(中部・下部)、菱形筋、広背筋、大円筋
伸びる筋肉:外・内腹斜筋、肋間筋、大胸筋、小胸筋
ハムストリングス・ストレッチ|2秒(2カウント)キープ
両手を床につけたら、両手の指を伸ばし、両膝を伸ばして起き上がる。左足の爪先を上げて、右足の踵を床に近づける。
使われる筋肉:腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋(以上、前脚側)
伸びる筋肉:ハムストリングス(前脚側)、下腿三頭筋
フェンシング|2秒(2カウント)キープ
上体を床と垂直に起こし、両膝を90度曲げて下半身を安定させる。上半身をグラグラしないように保ち、両手を胸の前で組む。
使われる筋肉:大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋(以上、前脚側)
伸びる筋肉:腸腰筋、大腿直筋(以上、後ろ脚側)
カラダが硬い人にはラクなやり方も
カラダが硬いなどの理由で、決められたポーズが取りにくい場合は、強度を抑えたバージョンを試してみてほしい。続けるうちにカラダが徐々に整っていき、本来のポーズが取れるようになるはずだ。
硬い人向け・エルボー・インステップランジ|2秒(2カウント)キープ
太腿後ろ側のハムストリングスが硬くて背中が丸くなる人は、後ろの脚の膝を曲げて床について、背すじを伸ばすようにする。
硬い人向け・ソラシック・ローテーション|2秒(2カウント)キープ
肩が痛くて腕が上がらない場合は、胸椎の回旋のみを行い、腕を上げなくてもよい。
硬い人向け・ハムストリングス・ストレッチ|2秒(2カウント)キープ
両膝が伸びない人は、後ろの脚の膝を曲げて行う(床についてもよい)。
硬い人向け・フェンシング|2秒(2カウント)キープ
姿勢を保つのが辛いなら、両手を膝に添えて上体を支えて行う。
WGSは、運動前のウォーミングアップや日々のコンディショニングのためなら、2セットもやれば十分。1分ほどで終わるから、新たな快適習慣としてぜひ取り入れてほしい。
さらに、「10セット以上やると、筋トレと有酸素運動の要素も加味されるので、減量にも最適です」(澤木トレーナー)。