不良姿勢のタイプを知ろう
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第4回は「不良姿勢のタイプを知ろう」というお話。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売
日常動作のクセで生まれる不良姿勢。
日常生活のちょっとしたクセや無意識の反復動作によって起こる不良姿勢は、肩こりや腰痛といった不調だけでなく、筋や関節の稼働力低下、心肺持久力の低下、筋張力による頭痛といった障害をもたらす可能性がある。
正しい姿勢を維持してこれらの障害を防ぐためには、まず現状の姿勢を把握しておく必要がある。前回は姿勢評価の第1ステップとして「ランドマーク」を使った評価方法を学んだが、今回はさらに一歩踏み込み、矢状面(カラダの横側)から見た背骨の弯曲で不良姿勢を見極めていく。
姿勢評価の際は壁を背にしてまっすぐ立ち、踵を5〜7cmほど離した状態で頭部、背部、臀部を壁にぴったりくっつける。この状態で、以下5つのポイントをチェックしよう。
- 胸椎に過剰な屈曲や伸展がなく、緩やかな前弯を描いている。
- 壁と腰の隙間に手のひら1枚がぴったり入る。
- 骨盤の前面上部(上前腸骨棘)と骨盤の中心下部(恥骨結合)が同一垂直面上にある。
- 骨盤の最も高い位置(腸骨稜)と大転子を結ぶ線が一直線。
- 膝関節の過剰な屈曲や伸展がなく、脛骨長軸が垂直。
これらすべてにチェックが当てはまった場合は、理想的な姿勢が維持できているといえる。一方で、どれか一つでもチェックが外れたのなら姿勢が崩れている証拠だ。では代表的な不良姿勢のタイプを見てみよう。
① 後弯前弯型
胸が後ろに出っ張るように弯曲し(後弯)、壁と腰の隙間に手を入れるとかなりの余裕がある骨盤前傾タイプ。原因としてデスクワークなどによる猫背の持続や肥満、腹筋群の筋力低下などが考えられる。
いわゆる「反り腰」はこの骨盤前傾タイプに多く見られ、腰痛、ぽっこりお腹、椎間板ヘルニアといった症状を引き起こす可能性がある。
② 後弯平坦型
胸椎が緩やかに後弯し、骨盤が後ろに倒れているタイプ。壁と腰の隙間に余裕がなく、手が途中で引っかかるか、入らない。この姿勢は筋力低下によって起こる弛緩姿勢と呼ばれ、高齢者に多く見られる。
筋力低下により衰えやすい広背筋や脊柱起立筋、大腿四頭筋が弱化し、それらの拮抗筋にあたる大胸筋、腹筋群、ハムストリングスが短縮・緊張することでこの姿勢になりやすい。胸が内側に縮まることで呼吸もしにくくなる。
③ 平背型
正常な腰椎弯曲(S字カーブ)が見られないフラットなタイプ。弯曲がないために腰部の衝撃吸収作用が低下し、クッションの役割を担っている椎間板と椎間関節に負担がかかる。椎間板ヘルニアを発症しやすいという特徴もある。
改善のための考え方。
姿勢のタイプを把握したら、次は姿勢を整えていく作業に移る。どんなタイプでも共通していえるのは、まず硬直・短縮した筋肉を伸ばした後に、伸長あるいは弱化した筋肉をエクササイズで鍛えていくこと。
たとえば、胸椎が後弯して胸の筋肉が短縮してしまっている場合、ストレッチで胸の柔軟性を高める(モビリティ)と同時に、反対の動きをする筋肉=拮抗筋である脊柱起立筋を鍛えて姿勢を支える機能を強化していく(スタビリティ)。
不良姿勢がクセづいているほど正しい姿勢を維持するのは難しいが、一日の中で何度も正しい姿勢を意識することが大切。無意識でも正しい姿勢を取れるよう、鏡で確認する習慣をつけよう。
復習クイズ
答え:呼吸が苦しくなる→これが誤り。