• 口腔環境、ストレス、etc…。腸内フローラ(腸内細菌叢)を蘇らせる4つのキーワード
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2020.12.16

口腔環境、ストレス、etc…。腸内フローラ(腸内細菌叢)を蘇らせる4つのキーワード

腸内フローラ

ライフスタイルを少し工夫するだけで、脳も喜ぶ腸内フローラ(腸内細菌叢)を作ることができる。「食生活」「口腔環境」「運動」「ストレス」という4つのキーワードから、日頃からできることを紹介する。

腸内環境とカラダの関わりについてはこちら!


目次

  1. 食生活
  2. 口腔環境
  3. 運動
  4. ストレス

① 食生活〜難消化性オリゴ糖と、水溶性食物繊維が効く。

腸内フローラ
食物繊維の1日の目標量は男性21g以上、女性18g以上だが、成人男女の平均摂取量は15g。和食などで野菜や海藻、きのこを摂ろう。

腸内環境を整えるなら、食事から。菌活(ヨーグルトなどの発酵食品を摂取して、有用菌を活用すること)以外に何をするべきか。

有用菌のエサを腸まで届けることをプレバイオティクスと呼ぶ。小腸のフローラに多い有用菌は乳酸菌。乳酸菌は食事に多く含まれる糖質をエネルギー源にする。一方、ビフィズス菌など大腸の有用菌を活性化するのは、食物繊維。消化も吸収もされない食物中の繊維質であり、大腸に唯一届く栄養素である。

「小腸のフローラは普通に食事をしていれば養われますが、大腸のフローラの賦活には食物繊維を意識的に増やすべき。なかでも、難消化性のオリゴ糖や水に溶ける水溶性食物繊維が、有用菌の代表であるビフィズス菌のエネルギー源となります」

難消化性のオリゴ糖には、タマネギやゴボウのフラクトオリゴ糖、大豆の大豆オリゴ糖などがあり、水溶性食物繊維はもち麦、ラッキョウ、海藻、きのこなどに含まれる。

逆に控えたいのは、お酒。お酒のアルコールは胃と小腸から吸収され、肝臓と筋肉で代謝される。だが、飲みすぎると一部は大腸へなだれ込み、殺菌作用で腸内フローラにダメージを与える。肝臓のためだけでなく、腸内フローラのためにも節酒を。

② 口腔環境〜唾液に混じって腸内へ入る、歯周病菌を防ぐ。

腸内フローラ
腸内フローラを健やかに養うのはバランスの取れた食事。歯周病菌からフローラを守ってくれるのは、食後に必ず行う歯磨きなのだ。

腸管は口から肛門までつながっている。ゆえに口腔環境の良し悪しは、腸内環境にも大きく響く。

腸内ほどではないけれど、口腔にも多くの微生物が共生する。その多くは残念ながら悪玉。虫歯を作る虫歯菌、炎症を引き起こす歯周病菌などである。このうち腸内環境との関わりが心配されるのは、歯周病菌。ヒトは1日1.0〜1.5Lもの唾液を飲み込み、唾液に含まれる歯周病菌も腸管へ向かって流れ落ちる。

途中にある胃では、pH1〜2と強酸性の胃酸が出ており、歯周病菌の多くはそこで殺菌される。

「しかし、胃酸のpHは日内変動が大きく、7前後と中性に近づくタイミングもあります。その間に歯周病菌が胃をすり抜けて、“生きて腸に届く”恐れがあるのです」

実際、歯周病菌の一種ジンジバリス菌は腸まで届くと、固く結合して異物や微生物の侵入から守る腸管のバリア機能を低下させることがわかっている。鉄壁のバリアが緩んだ腸管から体内に侵入した歯周病菌は全身に炎症を広げ、動脈硬化がんの発生を誘発するという指摘もある。歯磨きと定期的な歯科検診で口腔環境は極力クリーンに保ちたい。

③ 運動〜有酸素運動で有用菌が、みるみる増えてくる。

腸内フローラ
有酸素運動は筋肉や心肺機能だけではなく、腸内フローラにも良い。運動で腸管の動きが良くなると、便秘の解消も期待できそう。

ダイエットにもカラダ作りにも運動は不可欠だが、腸内フローラの改善にも役立つ。なかでも有効なのは、ランニングやバイクなどの有酸素運動

有酸素運動を行うと、腸内で酪酸を作る有用菌が増えてくる。これまで見てきたように、酪酸は免疫力をアップさせてくれる。なぜ有酸素をすると、酪酸産生菌が増えるのだろうか。

「運動はカラダにとっては一時的なストレス。そのストレスから守るために、有用菌を介して免疫力を高めようとするのではないでしょうか」

マラソンのような持久的な運動をする人の腸内には、運動不足の人よりもべイロネラという有用菌が多く存在することがわかっている。

べイロネラは、運動時に筋肉で生じる乳酸から、プロピオン酸という短鎖脂肪酸を作る。プロピオン酸は体内に吸収されると筋肉のエネルギーとなり、持久力をサポートする。

運動の刺激に対する腸内フローラは敏感に反応しやすく、走る前と走った後では腸内フローラの勢力図が変わってしまうほどの即効性がある。一刻も早く腸内フローラを変えたいなら、早速走ってみるべきかも。

④ ストレス〜脳腸相関を狂わせる、ストレスホルモンを減らそう。

腸内フローラ
大腸の機能が落ち、便秘や下痢を繰り返す過敏性腸症候群もストレスが主因。腸のためにも日々のストレスマネジメントを心掛けたい。

現代社会はストレスフルだが、コロナ禍でストレスは増えるばかり。前述のように、運動のような一時的なストレスは、腸内フローラを改善することがある。しかし、本来ストレスは運動のように一過性なものであり、現代のようにダラダラ継続するのは想定外。脳腸相関を介して、腸内環境が乱れる誘因となる。

脳が感じるストレスが腸管に作用する機序として、まずはホルモンを介したルートが考えられる。ストレスを感じると、カテコールアミンというホルモンが合成される。カテコールアミンは心拍数や血圧を上げてストレスに対処するが、その一部は腸管にも流入する。

「カテコールアミンは一種の抗菌物質。腸内フローラの生育を妨げて、大腸菌などの悪玉勢力を優位にしやすいという論文があります」

加えてストレスがあると自律神経のうちでも交感神経が優位になる。交感神経は血管を収縮させるから、それで腸管を養う血流がダウンすると当然腸内環境にも良くない。

好きな趣味や瞑想などで、思い思いにストレスを減らす努力を。腸内フローラにもいい運動でストレスを解消すれば、V字回復も夢ではない。

抗生物質は諸刃の剣だ!
腸内フローラ

感染症の治療に用いられる抗生物質(抗菌薬)は効果的だが、使いすぎると抗生物質が効かない薬剤耐性菌が増えて感染の恐れが高くなる。

加えて抗生物質の使いすぎは、腸内環境にも悪いインパクトを及ぼす。腸内細菌まで殺してしまうのだ。しかも、有用菌もそうではない菌も、見境なく殺すというやっかいな性質がある。

「脳腸相関で腸内環境は自閉症とも関わります。自閉症のモデルマウスに抗生物質を投与すると、半分は良くなるのに、半分は良くならないという結果が得られます。抗生物質がランダムに殺菌するため、自閉症に関わる悪玉菌がたまたま死んで減った場合だけ良くなるのです」

抗生物質で有用菌が死ぬと、そこに空席が生じる。空席に有用菌が定着すれば問題ないが、悪玉菌や病原菌が繁殖してしまうと腸内環境は格段に悪くなる。抗生物質を使ったら、普段以上に食物繊維を増やしたり、ヨーグルトを食べたりして腸内フローラが喜ぶような食事をしよう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/山本重也 取材協力/森田英利(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)

初出『Tarzan』No.799・2020年11月5日発売

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