自粛生活に潜む、ダイエットの6つの不正解

自粛が明けても体重は元に戻らず(涙)そろそろ痩せたいですか? ならばこれまでの日々を思い返すことからスタート。自粛生活の中にはダイエットの不正解=「太る理由」がこんなにあったんです…。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/タケウマ 取材協力/石川三知(Office LAC-U)

初出『Tarzan』No.795・2020年9月10日発売

ここ2〜3ヶ月で太ってしまった!

4月の緊急事態宣言によって、日本全国が自粛生活に突入。仕事はテレワーク、外食は極力控え、飲み会の機会は減り、買い物は最低限の時間で。旅行にも映画館にもジムにも行けない日々。自粛が解けた今なお、オフィス縮小などの理由で、仕事はテレワーク中心という人も決して少なくない。

で、なにが起こったか?

太ってしまった。鏡を見れば分かる、外出用の服を着れば分かる、体重計に乗ればもっとよく分かる。認めたくはないが、自粛前より明らかに肥えている。ダイエットに正解があるとしたら、これは明らかに不正解による結果。では、その不正解とは? 正解に辿り着くために、まずは数ヶ月前を顧みてみよう。


理由1|日常生活の活動量が明らかに減った。

太った理由は運動量が減ったせい。だってこれまで頻繁に通っていたジムが閉鎖されてしまったから。

いやいや、ジムで運動していた時間はどれくらい? 1時間、2時間? 一般人でそれ以上ってことはないだろう。つまりジムでの運動は一日24時間のうちのほんのひととき。

それに比べて通勤の電車で踏ん張ったり階段を上り下りしたりする時間は最低でも2時間はあったろう。オフィスでの移動や活動を含めればもっと長時間になるはずだ。

電車で踏ん張っているときに使われているのは体幹の筋肉。その刺激が失われたせいで腹まわりが緩み、出っ張ってくる。“自粛太り”の多くの人の腹に脂肪が上乗せされているのは、日常生活の活動量が減ったせい。そして立って姿勢を保つことによる筋肉への刺激が失われたせいなのだ。

体幹の筋肉同様、衰えが著しいのはビッグ3と呼ばれる大腿四頭筋、大臀筋、脊柱起立筋といった筋肉。ごろごろ寝転んでいたり、だらしなく座っているとこれらの筋肉のどこにも刺激は入らない。腹まわりはボリュームアップしたけれど、なぜか脚はほっそりした。それは大腿四頭筋がサイズダウンしたから。下半身の筋肉が減ると基礎代謝が徐々に落ち、ますます腹まわりに肉がつく。自粛明けの通勤で息切れしたという人、要注意。

理由2|自炊料理にハマって食べる量が増えた。

これまでは外食一辺倒だったけれど、自粛を機に自炊に目覚めた。そんな男性は意外と多いに違いない。

まずは道具から入らねばということで、寸胴鍋、食材別の包丁、取っ手が取れるフライパンセット、フードプロセッサーなどなどを入手した人もいるのではなかろうか。

こだわりカレーを皮切りにステーキにポテサラにチャーシューに餃子に手打ちうどんにと、どんどんレパートリーを広げていくうち、もう楽しくって仕方がない。

自炊にハマって食事量増加

そして豪快な男子のこと。ついつい作り過ぎからの過食、という罠に陥ってしまいがち。4人前レシピで作ったカレーはおかわりのループが止まらない。1ポンドの熟成肉ステーキは完食しなきゃ焼いた意味がない。フライパンに敷き詰めた円盤餃子も以下同文。

自炊に目覚めて食の価値が上がるのはとてもいいこと。食事は栄養を補給するというだけではなく、五感すべてを使って味わい楽しむもの。美味しく食べなきゃただのエサになってしまう。でも、生き物は動くために栄養を補給するのだという大原則を忘れちゃならない。ごろごろグダグダの生活でそれは食べ過ぎってものでしょう?

理由3|リモート飲みを頻繁に行っていた。

昨日は仕事仲間で盛り上がり、今日もヨガ仲間の午後6時からのリモート飲みに招待されました。好きなお酒と好きなつまみを自分のペースでぐびぐびパクパクやりながらのリモート飲み、結構自分に合ってるかも。でも、今日は気をつけて飲まなくちゃ。前回は寝オチして翌朝気づいたら誰もモニターに映っていなかったし。当然か。

リモート飲みは制限なく飲みやすい

ラストオーダーや終電というリミッターのないリモート飲みは、どうしても時間が長くなってしまう。聞けば6時間、7時間という耐久レースになることもあるという。

パソコン越しに飲むという新鮮さでつい杯が進むかもしれないが、そのハイボール500mLのカロリーは240kcal。濃いめ? なら300kcalだ。3缶空けたら900kcal、カツ丼1杯分に相当する。糖質が入ってないから大丈夫と思っている人、つまみのポテチは糖質と脂質の塊で、1袋空けたら300kcal以上だ。で、寝オチしたら脂肪になるのも当然。

理由4|時間を選ばずチョコチョコ食べが習慣に。

自炊にハマって今まで作ったことのない料理を大量に作るのも、毎晩のリモート飲みも、このまま続けていてはヤバいとやがて誰もが気づく。考えてみればどちらも非日常なアクションで、ちょっとしたイベント。我に返って日常に戻れば、料理はハレのものばかりじゃなくていいと思うし、リモート飲みにも適度な頻度や節度、ルールが生まれてくるはず。

こうして特別な行動に修正をかけた後、多くの人が陥るのが「チョコチョコ食べ」だ。

お菓子は脂肪に変換されやすい

自粛中はずっと家にいて動かないから、朝と夜はしっかり食べてもランチは抜き、という人が結構いたという話。じゃあ朝食べたきりで夜まで何も口にしないかというと、そんなことはない。テレワークの合間にチョコレートを口にしたり、クッキーを齧ったり。

少量ポーションという見かけに騙されるので罪悪感を感じない。そして「ランチ抜きだから」という大義名分に寄り添ってしまう。ところが、これらのお菓子類、ビタミンやミネラルがほとんど含まれていないので代謝効率が非常に悪い。つまり使い切れずに体内に留まり、脂肪に変換されやすいのだ。それくらいなら時間を決めてきちんとランチを食べた方がはるかに健全。

理由4|食事や睡眠の時間がバラバラ。

人の脳やカラダには体内時計というシステムが備わっている。日中は交感神経の働きでアクティブに活動し、夜は副交感神経の働きで静かに休息して英気を養う。こうした自律神経のシフトチェンジも体内時計が一日24時間のリズムに同調しているからできること。

人それぞれの体内時計リズムは大抵、24時間よりちょっとだけ長いので、朝起きて太陽の光を浴びることで、正しいリズムにリセットする必要がある。ところが、睡眠時間がバラバラだと体内時計リズムは狂い、食欲や代謝のコントロールが乱れてしまう。

通勤する必要がないから夜更かしをして翌朝も寝坊。朝食抜きでだらだらブランチ。てなことをしているとあっという間に体内時計は乱れまくり。

睡眠時間がバラバラだと体内時計が乱れる

睡眠、食事、排泄は最も分かりやすい生理現象。これらのリズムが整っていると人は安心感を感じる。逆に排泄できなかったり眠れなかったら不快で不安。朝起きて光を浴び、食事をすると「胃・大腸反射」という腸の蠕動運動が起こり、排泄が促される。一連の流れがスムーズに運べば、気分はスッキリ。体内時計も正しいリズムを刻み、太るリスクも減るのだ。

理由5|人とのコミュニケーションの機会が減った。

電話のマークをポチッと押せば、相手がPCの画面上に現れる。「はじめましてー」と礼儀正しく挨拶しながら相手から見えない下半身はパンツ一丁。そんなバカなと思うかもしれない。でも、大きく捉えればPCを介した人とのコミュニケーションなんて、案外そんなもの。見えないところには油断がいっぱい。

人に見られているという意識があると筋肉に力が入る

外に出て直接人に会うときはそうはいかない。とくに大事な取引先の相手に会うときなどは、頭のてっぺんから足の爪先まで隙のない格好で、一挙一動に気を遣わねばならない。

こうした「人に見られている」という意識は非常に重要。姿勢をピシッと正しくするだけで全身の筋肉、とくに重力に逆らって直立姿勢を保つ抗重力筋に刺激が入る。体幹まわり、脊柱起立筋、大臀筋などだ。

また、オフィスで誰かを呼び止めるときには腹筋や肋骨周辺の呼吸筋にも刺激が入る。ひと言も声を出さないおこもり生活ではそれも期待できない。やはり代謝低下の原因に。

理由6|代謝に必要な各種栄養素が減っている。

オフィスワークからテレワークへ。そんな変化もなんのことはない、やる仕事は一緒だし。と思っているかもしれない。

でも、「環境の変化」というのは非常に大きなストレスを人にもたらす。ストレスの強さで「子どもの死亡」を1位とすると「勤務時間や労働条件の変化」は36位。「就職」の次にストレスが大きいという順位につけている。

ストレスを感じている人いない人にかかわらず、環境変化という状況に対応するためにカラダの中では各種栄養素がすごい勢いで消費されている(『成人期における生活ストレス』ナカニシヤ出版)。

具体的にいうとビタミンB群、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム。これらはすべて代謝を促したり、細胞同士の神経伝達に関わる栄養素。こうした栄養素がストレス対応によって減る。理由は、自律神経が不安定な状態では、神経伝達が頻繁に起こるから。とくにビタミンCは抗ストレスホルモン、コルチゾールを作り出すのに欠かせないビタミン。なのでストレスがかかるとみるみる消費されてしまう。

その結果、代謝システムが回りにくくなり、食べたものが燃えずに体脂肪となって合成されてしまうのだ。

よって今こそ、これらの栄養素を積極的にカバーすることに努めたい。ホウレンソウや小松菜などでビタミンB群やマグネシウムを、柑橘類、トマト、パプリカ、ゴーヤなど果物や実の野菜でビタミンCを、根菜類や海藻でカルシウムやマグネシウムを積極的に補給のこと。

ストレスで消費される栄養素を補給

自粛生活からひとまず解放されて、食事をコントロールしたり運動しているのになぜか脂肪が減らない。そんな人は代謝に必要なこれらの栄養素が不足している可能性が高い。リスタートするなら、減った栄養素を補充して歪みを埋める。まずはそこから始めるべし。