発酵バター・塩麹・水キムチ…簡単・発酵食品の作り方。

発酵食品は買うものだと思ってない? 実はあなたも家で作れる。常温で発酵させたり発酵器を使ったり。実験のようで楽しい「発酵食品づくり」にチャレンジ!

取材・文/河野友紀 撮影/高杉 純 ヘア&メイク/大西花保(B★side) イラストレーション/SANDER STUDIO 調理・スタイリング/真藤舞衣子・河村玲子

初出『Tarzan』No.909・2025年8月12日発売

MY発酵食品
教えてくれた人

真藤舞衣子(しんどう・まいこ)/料理教室やレシピ開発など幅広く活躍。『大人のおしゃれ手帖特別編集 発酵美人になりませう。』(TJMOOK)など、発酵食にまつわる著書多数。

河村玲子(かわむら・れいこ)/「カラダ作りをカラダの内外からサポートする」をコンセプトに、管理栄養士とパーソナルトレーナーとして活躍。本誌をはじめとする雑誌やウェブメディアのレシピ提案や、セミナー講師などでも活躍中。

自宅で作るMY発酵食品。

塩麴などの調味料から、ぬか漬けやキムチといった漬物まで。おなじみの発酵食品の多くは実は家の台所で作れるらしい。しかも、超簡単ってホント!?

「ほとんどの発酵食品は火を使わずに作れます。また“菌を働かせる”という作り方も実験風で面白いので、普段料理をしない人こそ楽しめると思います」

と言うのは、祖母の影響で発酵食にハマり、著書も多数出版している料理家の真藤舞衣子さん。また管理栄養士の河村玲子さんによると、

「ポイントは“菌がよく働く温度をキープすること”。例えば常温だったら時間をかけて発酵させればいいですし、難しい温度管理が必要なら、それを自動でやってくれる発酵器という便利なアイテムもあります。発酵器を使うと、誰でもほぼ失敗なくできると言い切れるくらい、簡単に作れます」

ただの野菜が、ただのご飯が、菌の働きのおかげで驚きの変貌を遂げ、美味しい発酵食品になる。その不思議を、キミも自宅で体験してみないか?

家で簡単に作れる発酵食は、これだ!

実は、難しい作業や面倒な工程がそれほどない、発酵食品。初心者でも失敗が少ない、作って美味しい&食べて楽しい品はこちら。

乳酸発酵キャベツ

キャベツの葉にもともとついている乳酸菌を塩分で発酵させる、ヨーロッパ、特にドイツでよく食べられている発酵食品。キャベツの甘みとさわやかな酸味のバランスがよく、まろやかかつ酸っぱい味わいが、肉料理と相性抜群。細かく刻んで餃子の餡に使ったり、炒め物の具材にもヨシ。塩分の量をきちんと守ることが、成功の秘訣!

発酵キャベツ

材料(作りやすい分量)

  • キャベツ…1/2個
  • 塩…キャベツ全体量の2〜3%分
  • ローリエ、鷹の爪…各1個

作り方

発酵キャベツ1

1.キャベツは幅7mmほどにザクザクと切る。

発酵キャベツ2

2.1のキャベツをボウルに入れて量を量る。キャベツ全体量の2〜3%分の塩を振りかけ全体になじませる。

発酵キャベツ3

3.手で軽く揉み込む。

発酵キャベツ4

4.しんなりしてきたら、より強く揉み込む。

発酵キャベツ5

5.ビニール袋に4を入れ、ローリエと鷹の爪を加え、空気を抜いて袋の口を結ぶ。

発酵キャベツ6

6.常温に3日〜1週間程度置く。味を見て酸味が出ればOK。その後は冷蔵庫で1週間程度保存可能。

    アレンジ

    アレンジメニュー

    本場ドイツでは、ソーセージと一緒にパンに挟み、ホットドッグとして食べるのがおなじみ。ジューシーな肉の味を引き立てる!

    水キムチ

    乳酸菌たっぷり! 漬け汁まで残さず食べたい辛くないキムチ。野菜や果物を漬け汁に入れ、常温に置いておくだけ。リンゴの酵素が上新粉を栄養に、ポコポコ…と発酵開始。ほんのり酸っぱさが出たら出来上がり。夏なら1日で完成だ! 程よい酸味と甘みがある具材はサラダのように食べられるうえ、旨味と栄養、乳酸菌が含まれる漬け汁こそ、栄養の源。

    水キムチ

    材料(作りやすい分量)

    • 【好みの野菜を総量400g程度】
      ・セロリ…1本
      ・キュウリ…1本
      ・ニンジン…1/2本
      ・パプリカ…1/2個
    • リンゴ…1/4個
    • 生姜…1片
    • ニンニク…1片
    • 塩…小さじ2
    • 【漬け汁】
      ・上新粉…小さじ1
      ・鷹の爪…1本
      ・昆布…5cm角程度
      ・水…400〜450ml

    作り方

    水キムチ1

    1.鍋に漬け汁の材料を入れて中火にかける。煮立ったら火を止め粗熱を取る。

    水キムチ2

    2.ニンジンは皮を剝き、パプリカはヘタと種を取り除き、食べやすい大きさに切る。キュウリ、セロリも同様にする。リンゴはヘタと種を取り除きいちょう切りに、生姜は皮を剝き千切り、ニンニクも皮を剝き薄切りにする。ボウルにニンジン、パプリカ、キュウリ、セロリを入れ、塩を振りかけて全体になじませ、手で軽く揉み、15分程度置く。

    水キムチ3

    3.野菜類がやわらかくなり、水分が出たら、野菜から出た水分を流す。

    水キムチ4

    4.3のボウルに、千切りにした生姜と薄切りにしたニンニクを加える。

    水キムチ5

    5.ざっと手で混ぜ合わせる。

    水キムチ6

    6.5を清潔な保存容器に入れる。

    水キムチ7

    7.6の保存容器に1を注ぎ入れる。

    水キムチ8

    8.7に蓋をし、室温に1日置いて発酵させる。その後は冷蔵庫で1週間程度保存可能。

    アレンジ

    アレンジメニュー

    真藤さんのおすすめは、茹でて冷水で締めたそうめんを、漬け汁ごと水キムチとともに食べる、冷麺風そうめん。旨味がすごい!

    ぬか漬け

    米ぬかに塩と水を混ぜて乳酸発酵させた“ぬか床”に野菜などを漬け込んで作る、日本で古くから親しまれる漬物。素材の旨味がぎゅっと凝縮し、ほんのり塩味が効いた味わいは、白いご飯とはもちろん、刻んで薬味的に食べるのもヨシ。アボカドなどは、チーズのような味わいに大変身。冷蔵庫に入れれば、毎日混ぜる必要もなし!

    ぬか漬け

    材料(作りやすい分量)

    • 市販のぬか床(すぐに漬け込めるもの)
    • ナス、キュウリ、ミョウガ、アボカド、ニンジン、ミニトマト…各適量
    • 塩…適量

    作り方

    ぬか漬け2

    1.ジップ付き保存袋にぬか床を入れる。

    2.ニンジンは皮を剝き適当な大きさに切り、ナスはヘタの手前まで縦半分に切る。水で洗いしっかり塩揉みをする。5分ほど置き、水で塩を洗い流しペーパーなどで水気を軽く拭き取る。アボカドは皮を剝き縦半分に切り種を取り除く。ミョウガは水洗いをし根元を切り落とし、トマトも水洗いしペーパーなどで水気を軽く拭き取る。

    ぬか漬け3

    3.野菜をぬか床に漬ける。ぬかがしっかりかぶるまで入れる。アボカドは崩れやすいので注意しながら。

    ぬか漬け4

    4.ジップを閉めて密封し、冷蔵庫で保存する。

    ぬか漬け5

    5.野菜を取り出しぬかをぬぐい、食べやすい大きさに切る。ぬかが気になる場合は水洗いをしてもOK。

    発酵バター

    バターが、家で、できるのか…? しかも高価な発酵バターが!? 生クリームにヨーグルトを入れ、攪拌し、それを清潔な瓶に入れ、ひたすら振れば出来上がる。作業自体は単純だが、カラダを使うので、フィジカルを鍛えたい人にはぴったり? 残った液体のバターミルクは、パンケーキに入れたり、鶏肉を漬けて焼く上級者編も。

    発酵バター

    材料(作りやすい分量)

    • 生クリーム(乳脂肪分45%以上のもの)200ml
    • 無糖ヨーグルト…大さじ1

    作り方

    発酵バター1

    1.ボウルに生クリームとヨーグルトを入れ、泡立て器でボソボソした質感になるまで攪拌する。

    発酵バター2

    2.清潔な瓶に1を入れ、固体(バター)と液体(バターミルク)に分離するまでよく振る。

    発酵バター3

    3.ザルにさらしなどの布を敷きの中身を開け、バターとバターミルクに分ける。

    発酵バター4

    4.バター部分をさらしで包み、手で成形する。冷蔵庫で1週間程度保存可能。

    塩麴

    米麴、塩、水を混ぜて作る、日本の発酵調味料。コクと深みのあるまろやかな味わいが美味しく、塩の代わりに使うのはもちろん、食材を漬け込むと、麴の力で美味しさを引き出してくれる、そんな力も。今回は、最後にミキサーにかけ滑らかに仕上げたが、もちろんつぶつぶのままで使うのもアリ。サラダチキン作りにもおすすめだ!

    塩麹

    材料(作りやすい分量)

    • 乾燥米麴…200g
    • 塩…60g
    • 水…350〜300ml

    塩麹1

    1.ボウルに乾燥麴と塩を入れてよく混ぜる。

    塩麹2

    2.水を加えてさらによく混ぜたら、清潔な保存容器に入れて蓋をし、常温に置く。

    塩麹3

    3.2を1日1回よく混ぜ、1週間から10日ほど寝かせる。

    塩麹4

    4.とろっとしたらミキサーにかけ、冷蔵庫で約2か月保存可能。

    醬油麴

    もともと発酵食品である醬油に、米麴をプラス。醬油に旨味、甘み、とろみ、まろやかな香りが加わり、一匙で料理を格段に美味しくする、発酵調味料。実は塩麴より旨味が強いという説もあり、茹でた野菜にかけるも、刺し身に乗せるも、生姜焼きの豚肉の漬け込み&味付けにもヨシ。もはやこれ、最強の万能調味料なのでは!?

    醬油麴

    材料(作りやすい分量)

    • 乾燥米麴…200g
    • 醬油…300ml
    • ぬるま湯…80ml

    作り方

    醬油麴1

    1.ボウルに乾燥米麴とぬるま湯を入れてよく混ぜ、30分ほど置く。

    醬油麴2

    2.1に醤油を加えてよく混ぜる。

    醬油麴3

    3.2を清潔な保存容器に入れて蓋をし、常温に置く。

    醬油麴4

    4.1日1回よく混ぜ、1週間から10日ほど寝かせる。その後冷蔵庫で約2か月保存可能。

    はじめての発酵、なぜなに疑問集。

    初めてトライする人が抱きがちな素朴な疑問に、識者の二人が回答。これで発酵食作りも怖くない!

    Q.水キムチや発酵キャベツなど、常温に置いておくとプスプス音がします。なんだか怖いのですが…。

    発酵食品の疑問1

    A.その音は発酵している証拠。たまに蓋を緩めて、空気を抜いてあげましょう。

    「プスプス言うのは乳酸発酵が進みガスが出ている音です。ガスが溜まったまま密閉し続けていると、瓶などの場合爆発して蓋が飛ぶ、なんてこともあるので、音がしたらたまに開封してガス抜きを」(真藤さん)

    Q.ぬか床から刺激臭みたいな臭いがします。これはヤバい?

    A.シンナーみたいな臭いがしたら、捨てましょう…。

    「刺激臭が出たぬか床は初心者には管理が難しいので、残念ですが処分を。水が浮いてベチャベチャしてきたら、水気を除去して清潔な保存容器に入れ直し、乾いたぬかを足してよく混ぜればOK」(真藤さん)

    Q.水キムチの上に白いふわふわした膜が出現。これはカビ!?

    A.カビではないけれど、除去したほうがベター。

    「これは発酵食品が空気と触れることで発生する“産膜酵母”という菌。人体に影響はありませんが風味が悪くなるので、その部分をすくって捨てればOK」(真藤さん)

    Q.忙しくてぬか床に野菜が入れっぱなしに…。食べられますか?

    発酵食品の疑問3

    A.食べられます!でもアボカドとかは、溶けてなくなります。

    「塩気が強いので、細かく刻んで肉と一緒に炒めるのも◎。アボカドなど柔らかいものは、ぬか床に溶けることも。過信せず、2〜3日に一度はかき混ぜて」(真藤さん)

    Q.塩分の多さが気になるんですが、自分の感覚で減らしていいですか?

    A.ダメです!腐る確率が上がります。

    「減塩は腐敗しやすくなるので、レシピ通りに!」(真藤さん)。「指定された温度を守らないと菌が働かないこともあるので、温度管理もレシピに忠実に」(河村さん)。

    Q.発酵させるとき、保存するとき、注意することは?

    発酵食品の疑問2

    A.雑菌を入れないことが大事。消毒した容器か、新しいビニール袋を使うのがヨシ。

    「保存容器は洗い残しがないようしっかり洗浄し、乾かした後食品対応の除菌スプレーなどをして清潔をキープ。あるいは新品のジップ付き保存袋などは、他の菌が入る心配がないのでおすすめです」(河村さん)

    Q.発酵キャベツが、見た目ぐちゃぐちゃ、嫌な臭いもします…。

    A.それは腐敗してますね。残念ながら失敗です。

    「発酵中に別の菌が入り、それが働いてしまうと失敗することも。臭いも見た目も明らかに“美味しくなさそう”なときは、無理して食べず、やり直しを」(真藤さん)