
教えてくれた人
真藤舞衣子(しんどう・まいこ)/料理教室やレシピ開発など幅広く活躍。『大人のおしゃれ手帖特別編集 発酵美人になりませう。』(TJMOOK)など、発酵食にまつわる著書多数。
河村玲子(かわむら・れいこ)/「カラダ作りをカラダの内外からサポートする」をコンセプトに、管理栄養士とパーソナルトレーナーとして活躍。本誌をはじめとする雑誌やウェブメディアのレシピ提案や、セミナー講師などでも活躍中。
自宅で作るMY発酵食品。
塩麴などの調味料から、ぬか漬けやキムチといった漬物まで。おなじみの発酵食品の多くは実は家の台所で作れるらしい。しかも、超簡単ってホント!?
「ほとんどの発酵食品は火を使わずに作れます。また“菌を働かせる”という作り方も実験風で面白いので、普段料理をしない人こそ楽しめると思います」
と言うのは、祖母の影響で発酵食にハマり、著書も多数出版している料理家の真藤舞衣子さん。また管理栄養士の河村玲子さんによると、
「ポイントは“菌がよく働く温度をキープすること”。例えば常温だったら時間をかけて発酵させればいいですし、難しい温度管理が必要なら、それを自動でやってくれる発酵器という便利なアイテムもあります。発酵器を使うと、誰でもほぼ失敗なくできると言い切れるくらい、簡単に作れます」
ただの野菜が、ただのご飯が、菌の働きのおかげで驚きの変貌を遂げ、美味しい発酵食品になる。その不思議を、キミも自宅で体験してみないか?
家で簡単に作れる発酵食は、これだ!
実は、難しい作業や面倒な工程がそれほどない、発酵食品。初心者でも失敗が少ない、作って美味しい&食べて楽しい品はこちら。
乳酸発酵キャベツ
キャベツの葉にもともとついている乳酸菌を塩分で発酵させる、ヨーロッパ、特にドイツでよく食べられている発酵食品。キャベツの甘みとさわやかな酸味のバランスがよく、まろやかかつ酸っぱい味わいが、肉料理と相性抜群。細かく刻んで餃子の餡に使ったり、炒め物の具材にもヨシ。塩分の量をきちんと守ることが、成功の秘訣!
材料(作りやすい分量)
- キャベツ…1/2個
- 塩…キャベツ全体量の2〜3%分
- ローリエ、鷹の爪…各1個
作り方
アレンジ
本場ドイツでは、ソーセージと一緒にパンに挟み、ホットドッグとして食べるのがおなじみ。ジューシーな肉の味を引き立てる!
水キムチ
乳酸菌たっぷり! 漬け汁まで残さず食べたい辛くないキムチ。野菜や果物を漬け汁に入れ、常温に置いておくだけ。リンゴの酵素が上新粉を栄養に、ポコポコ…と発酵開始。ほんのり酸っぱさが出たら出来上がり。夏なら1日で完成だ! 程よい酸味と甘みがある具材はサラダのように食べられるうえ、旨味と栄養、乳酸菌が含まれる漬け汁こそ、栄養の源。
材料(作りやすい分量)
- 【好みの野菜を総量400g程度】
・セロリ…1本
・キュウリ…1本
・ニンジン…1/2本
・パプリカ…1/2個 - リンゴ…1/4個
- 生姜…1片
- ニンニク…1片
- 塩…小さじ2
- 【漬け汁】
・上新粉…小さじ1
・鷹の爪…1本
・昆布…5cm角程度
・水…400〜450ml
作り方
アレンジ
真藤さんのおすすめは、茹でて冷水で締めたそうめんを、漬け汁ごと水キムチとともに食べる、冷麺風そうめん。旨味がすごい!
ぬか漬け
米ぬかに塩と水を混ぜて乳酸発酵させた“ぬか床”に野菜などを漬け込んで作る、日本で古くから親しまれる漬物。素材の旨味がぎゅっと凝縮し、ほんのり塩味が効いた味わいは、白いご飯とはもちろん、刻んで薬味的に食べるのもヨシ。アボカドなどは、チーズのような味わいに大変身。冷蔵庫に入れれば、毎日混ぜる必要もなし!
材料(作りやすい分量)
- 市販のぬか床(すぐに漬け込めるもの)
- ナス、キュウリ、ミョウガ、アボカド、ニンジン、ミニトマト…各適量
- 塩…適量
作り方
発酵バター
バターが、家で、できるのか…? しかも高価な発酵バターが!? 生クリームにヨーグルトを入れ、攪拌し、それを清潔な瓶に入れ、ひたすら振れば出来上がる。作業自体は単純だが、カラダを使うので、フィジカルを鍛えたい人にはぴったり? 残った液体のバターミルクは、パンケーキに入れたり、鶏肉を漬けて焼く上級者編も。
材料(作りやすい分量)
- 生クリーム(乳脂肪分45%以上のもの)200ml
- 無糖ヨーグルト…大さじ1
作り方
塩麴
米麴、塩、水を混ぜて作る、日本の発酵調味料。コクと深みのあるまろやかな味わいが美味しく、塩の代わりに使うのはもちろん、食材を漬け込むと、麴の力で美味しさを引き出してくれる、そんな力も。今回は、最後にミキサーにかけ滑らかに仕上げたが、もちろんつぶつぶのままで使うのもアリ。サラダチキン作りにもおすすめだ!
材料(作りやすい分量)
- 乾燥米麴…200g
- 塩…60g
- 水…350〜300ml
醬油麴
もともと発酵食品である醬油に、米麴をプラス。醬油に旨味、甘み、とろみ、まろやかな香りが加わり、一匙で料理を格段に美味しくする、発酵調味料。実は塩麴より旨味が強いという説もあり、茹でた野菜にかけるも、刺し身に乗せるも、生姜焼きの豚肉の漬け込み&味付けにもヨシ。もはやこれ、最強の万能調味料なのでは!?
材料(作りやすい分量)
- 乾燥米麴…200g
- 醬油…300ml
- ぬるま湯…80ml
作り方
はじめての発酵、なぜなに疑問集。
初めてトライする人が抱きがちな素朴な疑問に、識者の二人が回答。これで発酵食作りも怖くない!
Q.水キムチや発酵キャベツなど、常温に置いておくとプスプス音がします。なんだか怖いのですが…。
A.その音は発酵している証拠。たまに蓋を緩めて、空気を抜いてあげましょう。
「プスプス言うのは乳酸発酵が進みガスが出ている音です。ガスが溜まったまま密閉し続けていると、瓶などの場合爆発して蓋が飛ぶ、なんてこともあるので、音がしたらたまに開封してガス抜きを」(真藤さん)
Q.ぬか床から刺激臭みたいな臭いがします。これはヤバい?
A.シンナーみたいな臭いがしたら、捨てましょう…。
「刺激臭が出たぬか床は初心者には管理が難しいので、残念ですが処分を。水が浮いてベチャベチャしてきたら、水気を除去して清潔な保存容器に入れ直し、乾いたぬかを足してよく混ぜればOK」(真藤さん)
Q.水キムチの上に白いふわふわした膜が出現。これはカビ!?
A.カビではないけれど、除去したほうがベター。
「これは発酵食品が空気と触れることで発生する“産膜酵母”という菌。人体に影響はありませんが風味が悪くなるので、その部分をすくって捨てればOK」(真藤さん)
Q.忙しくてぬか床に野菜が入れっぱなしに…。食べられますか?
A.食べられます!でもアボカドとかは、溶けてなくなります。
「塩気が強いので、細かく刻んで肉と一緒に炒めるのも◎。アボカドなど柔らかいものは、ぬか床に溶けることも。過信せず、2〜3日に一度はかき混ぜて」(真藤さん)
Q.塩分の多さが気になるんですが、自分の感覚で減らしていいですか?
A.ダメです!腐る確率が上がります。
「減塩は腐敗しやすくなるので、レシピ通りに!」(真藤さん)。「指定された温度を守らないと菌が働かないこともあるので、温度管理もレシピに忠実に」(河村さん)。
Q.発酵させるとき、保存するとき、注意することは?
A.雑菌を入れないことが大事。消毒した容器か、新しいビニール袋を使うのがヨシ。
「保存容器は洗い残しがないようしっかり洗浄し、乾かした後食品対応の除菌スプレーなどをして清潔をキープ。あるいは新品のジップ付き保存袋などは、他の菌が入る心配がないのでおすすめです」(河村さん)
Q.発酵キャベツが、見た目ぐちゃぐちゃ、嫌な臭いもします…。
A.それは腐敗してますね。残念ながら失敗です。
「発酵中に別の菌が入り、それが働いてしまうと失敗することも。臭いも見た目も明らかに“美味しくなさそう”なときは、無理して食べず、やり直しを」(真藤さん)