筋トレの基礎知識・後編
トレーニングを始めるにあたって、最低限で必要十分なポイントをまとめてみた。ここはあくまで基礎。だけどこれらの知識は知っておくと今後よりコミットしたい時に盤石のベースとなってくれるはずだ。何をすべきか迷ったら、いつでも戻ってきてほしい。後編では、ギア選びやトレーニングメニューの組み方のコツをお伝えしよう。
取材・文/井上健二 イラストレーション/エイドリアン・ホーガン 取材協力/白戸拓也(MS FITNESS)
初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売
自宅で買い揃えるギアを知っている
自体重でもカラダは変えられるけれど、ちょっとしたギアがあるとトレーニングの引き出しは格段に増える。比較的安価で買えて、部屋に置いても邪魔にならないものを紹介しよう。
まずはトレーニングマット。膝や肘をついて行う種目がやりやすいし、何かの拍子に床を傷つけるミスも防げる。敷きっぱなしにしておけば、思い立ったら吉日ですぐトレーニングが始められる。
加えてダンベルがあれば、隅々まで鍛えられる。重さが自在に変えられる可変式タイプなら、部位や筋肉の発達に応じて最適の強度でトレーニングできる。
体幹を強化するなら、バランスボールや腹筋ローラーが便利。チンニングバーやディップススタンドがあると、自体重だと鍛えにくい背中も鍛錬しやすい。
有酸素運動も忘れない
世界保健機関(WHO)は、週2日の筋トレと並び、週150〜300分の中強度の有酸素運動(もしくは75〜150分の高強度の有酸素運動、または両者の組み合わせ)を推奨している。
そもそも有酸素運動とは、息が切れない軽めの運動をリズミカルかつ持続的に繰り返すもの。ウォーキング、ランニング、ダンス、水泳、自転車などだ。
最大の御利益は、酸素を介して無駄な体脂肪が燃やせること。その他、血液循環が良くなる、スタミナがついて疲れにくくなるといった作用もある。筋トレにない効能もあるから、WHOの指摘通り両者を組み合わせるのが正解。一度にまとめてやるなら、筋トレ→有酸素の順に。筋トレで分泌される成長ホルモンに体脂肪を分解する作用があり、その後有酸素を行うと体脂肪がメラメラ燃える。
鍛える順番がわかっている
食べ順で減量効果が変わるように、筋トレもどの順番で鍛えるかで結果に差がつく。ベストは下半身→上半身→体幹と行うことだ。
下半身には大きな筋肉が集まるので、それだけ高い強度が要求される。だから、まだ疲れていない最初に取り掛かる。対照的に後回しにしたいのは、お腹を中心とする体幹。ここが先に疲れるとフォームが乱れやすいので、下半身も上半身もうまく鍛えられない。従っていちばん最後に回すのだ。そして消去法により、上半身を下半身の次に持ってくる。
鍛え順に関して、まったく異なる視点もある。自分がもっとも変えたいところ、強化したい場所を優先して取り掛かるのだ。初期ほど集中力が高く質の高いトレーニングが行えるから、望み通りの体型に近づきやすくなる。
心拍数を気にしてみる
手軽な有酸素運動の代表選手は、やはりランニング。ランが続かないなら、次の2つのポイントを守ってみよう。
1つ目はいきなりスピードアップしないこと。初めはウォーキングからでいい。徐々に足を速めると、時速7kmあたりで走りたくなる。それ以上のスピードだと歩くより走る方が運動効率は良くなるため、自然にランへ移行するのだ。以降も少しずつスピードを上げていこう。
もう一つのポイントは、スマートウォッチなどで心拍数を測ること。心拍数とは心臓が1分間に何回拍動するかをカウントしたもの。強度が上がるにつれて筋肉がより多くの血液を求め、心拍数は上がるから、運動強度の客観的な指針となる。最大心拍数の50%前後の速さなら、楽にずっと走り続けられる(下参照)。
最適の心拍数の見つけ方
最大心拍数は「220−年齢」という公式で概算。安静時心拍数は起床時に坐って計測する。40歳で安静時心拍数70なら最大心拍数の50%は[(220−40)−70]×0.5+70=125拍/分と計算する。