どれか一つでも!凝りを感じたら…全身をほぐすセルフマッサージ6種目
全身は筋膜や皮膚で繫がっているから、全体をほぐすことがケアにおいては大事な一歩。そこで、今回は深いリラクセーションが得られるヨガのポーズ、ボールを活用したセルフマッサージ、フォームローラーを使ったセルフカイロプラクティック、3メソッド6種目を紹介する。どれか一つでも毎日試してみるとカラダがラクになるのを感じるだろう。
取材・文/井上健二 撮影/幸喜ひかり スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾 指導・監修/岡部朋子(ヨガセラピー指導者)、石垣英俊(あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師)、丸山祥一(カイロプラクター)
初出『Tarzan』No.867・2023年10月19日発売
目次
ヴィパリタカラニ(VK)|10〜15分
【心拍数を落ち着かせてリラックスへと誘う】
ストレスで疲れると、自律神経のうちでも交感神経が興奮して血圧が上がり、心拍(脈拍)も速くなる。そんなピリピリした状態を落ち着かせるのに有効なのが、このポーズ。
仰向けで下半身を高く上げると、血液やリンパ液の流れが促されるようになり、血圧の受容体(バロレセプター)を介して血圧を適切に下げ、心拍数を抑えてリラックスへと導く。
セッティング
椅子の座面にブランケットを畳んで置き、椅子の正面には厚めのクッションを2枚重ねて置く。その先にもバスタオルを2つ折りにして置く。
やり方
❶ 重ねたクッションに骨盤を乗せて仰向けになる。
❷ 両足を腰幅で椅子に乗せ、膝を120度程度に曲げて楽な姿勢になる。
❸ 畳んだバスタオルに頭を乗せる。
❹ バンザイをするように両腕を肩幅で床に伸ばし、肘を120度程度曲げて楽にする。
❺ 瞼を閉じ、鼻から6秒(6カウント)で息を吸い、口から6秒(6カウント)で息を吐く。
ポイント
よりリラックスしたいときは、目と耳をタオルですっぽり覆い、両手のひらもタオルを包んでしまおう。
贅沢な屍のポーズ|10〜15分
【関節を120度に曲げて究極の癒やしを】
「屍のポーズ(シャヴァーサナ)」とは、ヨガのセッションの仕上げによく行われるポーズ。
一般的にリラクセーションが得られるといわれるが、通常は仰向けで四肢も体幹もまっすぐ保つので、リラックスできているようで、実は頭も筋肉も覚醒している。胎児のようにし、「屍のポーズ」のリラックス度がアップする。
セッティング
頭と背中、両腕、膝下、足首下に、それぞれが適切な角度でリラックスできるように厚めのクッションなどをセッティングしておく。
やり方
❶ セッティングされたところで仰向けになる。
❷ 両腕を広げてクッションに置き、手のひらを上に向けて肘を120度前後で楽に曲げる。
❸ 上体を軽く起こし、背骨の自然なS字カーブを保つ。
❹ 首下のアーチを丸めたタオルで支える。
❺ 膝裏にヨガボルスター(または丸めたクッション)を置き、膝を120度前後で楽に曲げる。
❻ 足首を丸めたヨガマット(または丸めたバスタオル)に置く。
❼ 瞼を閉じ、鼻から6秒(6カウント)で息を吸い、口から6秒(6カウント)で息を吐く。
ポイント
首の後ろが詰まらないように、顎を軽く引き、額よりも低くする。
ポイント
よりリラックスが得たいなら、タオルで目と耳を覆い、タオルで両腕を包み、ブランケットでお腹を包む。
アラウンド・ザ・スパイン|各部位15〜20秒
【不調の巣窟をボールで優しくほぐしていく】
力を使わずにセルフマッサージを行うには、ボールを活用すると便利。なかでも重宝するのが、手ぬぐいでテニスボールを包んだ「手ぬぐいボール」。
慢性的な不調は背骨(スパイン)の周辺に表れやすいから、アラウンド・ザ・スパインでケアしよう。後頭部(頸椎)、肩甲骨(胸椎)、胸腰移行部(胸椎+腰椎)、仙腸関節(骨盤)を上から順にほぐして。
手ぬぐいボールの作り方
手ぬぐいボールは、あん摩マッサージ指圧師で鍼灸師の石垣英俊さんのオリジナル。作り方は簡単。長めの手ぬぐいを横に広げ、真ん中にテニスボールを置く。ボールを包むように手ぬぐい上下を帯状に畳み、ボールが真ん中で固定されるように結ぶ。
やり方
❶ 床で仰向けになり、両膝を腰幅で曲げて立てる。
❷ 手ぬぐいボールの両端を両手に持ち、後頭部に当てて、脱力して静かに体重をかける。気持ちよいところを探し、ボールが沈み込むまで深く呼吸する(以下、同)。
❸ 肩甲骨の中央部にボールを当て、脱力して静かに体重をかける。
❹ 胸腰移行部(腕を下ろしたときの肘の高さ)にボールを当て、脱力して静かに体重をかける。
❺ 両脚を伸ばし、仙腸関節(お尻の真ん中)にボールを当て、脱力して静かに体重をかける。
ポイント
仙腸関節を攻める際は、両脚を伸ばして体重をかける。
アラウンド・ザ・アキュポイント|各部位15〜20秒
【多数のツボをまとめて刺激して体調を整える】
続いて、うつ伏せになって手ぬぐいボールを使う。全身には、およそ360個ものツボ(アキュポイント)があるとか。
ツボは背骨まわりにも多くあるけれど、カラダのフロントサイドのあちこちにも点在している。そこを優しく攻め、全身の体調を整えよう。こめかみ(側頭部)、鎖骨の下、季肋部(肋骨の下端)、股関節(腸腰筋)を、上から順にリセット。
やり方
❶ 床でうつ伏せになり、両脚を揃えてまっすぐ伸ばす。
❷ 首を横にかしげ、こめかみに手ぬぐいボールを当て、脱力して静かに頭の重みをかける。気持ちよいところを探し、ボールが沈み込むまで深く呼吸する。左右を変えて同様に行う(以下、同)。
❸ 鎖骨の下に手ぬぐいボールを当て、脱力して静かに体重をかける。
❹ 肋骨の下端の季肋部に手ぬぐいボールを当て、脱力して静かに体重をかける。
❺ 鼠蹊部に手ぬぐいボールを当て、脱力して静かに体重をかける。
ポイント
静かに深い呼吸をしながら、筋肉が緩んでボールが沈み込む感覚を待つ。
バイブレーション|左右各10往復
【心地よい“揺れ”で自然回復力アップ】
誰しもカラダに備わっている自然回復力を引き出すテクニックが、カイロプラクティック。そのエッセンスがセルフで手軽に味わえるのが、実はストレッチポールに代表されるフォームローラーなのだ。
1つ目は「バイブレーション」。ローラーに背骨を乗せて仰向けになり、軽く揺らしたり、手足を動かしたりしながら、カラダ本来の回復力を引き出そう。
フォームローラーを準備する
フォームローラーは、ネット通販などで3,000〜4,000円程度から買える。頭からお尻まで乗る長めのものを選ぼう。直径が太い方が姿勢が安定してやりやすい。手元にローラーがない場合、厚めのバスタオルを筒状に硬く巻き、紐で縛ると代用できる。
やり方
❶ 頭からお尻までローラーに乗せて仰向けになる。
❷ 両腕は体側で広げ、手のひらを床に向ける。
❸ 両脚は肩幅より広めに開き、膝を90度程度曲げる。
❹ ローラーを背骨で感じながら、体幹を左右に軽く揺らす。10往復。
❺ バンザイをするように両腕を頭の先に伸ばし、手のひらを天井に向ける。
❻ ローラーを背骨で感じながら、体幹を左右に軽く揺らす。10往復。
❼ 左脚と右腕を伸ばし、カラダを対角方向へ伸ばしたまま、ローラーを背骨で感じながら、体幹を左右に軽く揺らす。10往復。左右を変えて同様に行う。
ポイント
両脚の幅を狭くするほど難しいが、それだけ背骨への刺激はアップする。
背骨伸ばし|20〜30秒
【ガチガチの背骨がしなやかに復活】
カイロでは、自然回復力のコントロールセンターは背骨にあると考える。だが、多くの現代人はじっと坐り、前屈みになる時間が長く、背骨が固まって機能不全を起こしている。とくにガチガチに凝っているのが、胸(胸椎)まわりだ。
フォームローラーを背骨に対して直角に使うと、胸椎を中心に背骨が効果的にほぐれるようになり、自然回復力もアップする。
やり方
❶ ローラーを横にし、その真ん中に肩甲骨の下端を乗せて仰向けになる。
❷ ローラーが動かないように両腕を曲げて肘を乗せる。
❸ 両脚は腰幅で90度曲げて立てる。
❹ 上体を軽く後ろに倒し、背骨が伸びるのを感じながら、深い呼吸を続けて20〜30秒間キープする。
❺ 背骨がある程度ほぐれたら、バンザイをするように両腕を頭の先に伸ばし、手のひらを天井に向けて胸を大きく開く。
❻ お尻を床から引き上げ、背骨を大きく反らしてさらに伸びるのを感じながら、深い呼吸を続けて20〜30秒間キープする。