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実は、我々のほとんどが無意識のまま口をダランと開いて口呼吸するクセがついている。そしてこれが、今抱えているカラダや心の不調の原因にもなるというから大問題。まずは口呼吸の悪影響と、鼻呼吸のメリットを整理し、セルフチェックで無意識に口呼吸になっていないか確かめよう。
今井一彰さん:みらいクリニック院長。内科医、東洋医学会漢方専門医。口呼吸を鼻呼吸に変えて自然治癒力を高め、薬に頼らない治療で多くの実績を上げている。『正しく鼻呼吸すれば病気にならない』『免疫力を上げ自律神経を整える 舌トレ』など著書多数。
近藤拓人さん:アスレティックトレーナー/ビュテイコ呼吸法セラピスト。医科学修士、アスレティックトレーナー(BOC-ATC)。感覚運動分野をベースとした運動療法を専門とし、現在はパーソナルトレーニング施設〈NEXPORT新小岩〉の代表を務める。共著に『新しい呼吸の教科書』。
「現代人の8割以上は、無意識に口で呼吸するクセがついています。そもそも哺乳類で口呼吸をするのは人間だけ。
進化の過程で高い言語能力を身につけると同時に、口が空気の出入りに使えるようになったのです。ちなみに犬が口をハアハアさせるのは熱を放散するのが目的で、呼吸をしているわけではありません」
こう話すのは、口呼吸を鼻呼吸に改善するセルフケア指導により、多種多様な疾患の治療にめざましい成果を上げている医師の今井一彰さん。
「異物を濾過するフィルター機能が備わった鼻呼吸と異なり、口呼吸ではホコリや雑菌、ウイルスなどを直接吸い込み、さまざまな不調を引き起こす原因に。自然の摂理から見れば、口呼吸は“鼻で食べる”くらい不自然なこと、と言えるでしょう」
一方、現代人は呼吸が浅く、呼吸過多になることで様々な弊害を指摘されているが、「口呼吸は酸素を取り込みすぎる原因の最たるもの」と語るのは、呼吸トレーニングを応用した運動療法に精通するトレーナーの近藤拓人さんだ。
「口呼吸で酸素を取り込みすぎると血中の酸素が効率よく細胞に運ばれず、結果的に全身へ供給される酸素量が大幅に減少。脳への場合、口呼吸の習慣で酸素供給量が半減するという研究報告もあるほどです」
冷たく乾いた空気が口内や喉を通過し、粘膜を痛めてしまうのも口呼吸のデメリット。
① 吸った空気が口内の水分を奪いながら、上咽頭や喉を通過。冷たく乾いた空気が粘膜を痛める。
② 口の中が乾燥して、抗菌成分や免疫物質を含む唾液が不足。口腔内に悪玉菌が繁殖しやすくなる。
③ 肺に送られる空気の湿気が不足し、粘膜の働きが低下。酸素の吸収量も減少するという結果に。
逆に、鼻呼吸には以下のようなメリットがある。まずは、自分が口呼吸になっていないか、下のチェックで確認し、該当する場合は対策を!
メリット① 鼻腔で異物をブロックする:鼻から吸った空気はまず、鼻腔(=鼻の穴)の内側にある繊毛(=鼻毛)と粘膜によって濾過される。細菌やウイルスなどの異物はここでキャッチされ、鼻汁に混じって排出される仕組み。
メリット② 鼻吸気の湿度・温度の調整:鼻腔の上部を副鼻腔が取り囲み、内壁の粘膜が吸い込んだ空気にほどよい温かさと湿気を与える。これによって肺の粘膜も正常に働き、口呼吸に比べて酸素の吸収量が増すメリットも。
メリット③ 上咽頭が異物を捕捉する:上咽頭(=喉の入り口)から喉にかけては、免疫の第1関門となるリンパ組織が多数存在。異物が鼻腔を突破した場合はここで捕捉され、病原体が体内に侵入するのをブロックする。
無自覚のまま口呼吸を続けるうちに、なかには以下のようなサインが表れる人も。心当たりがないかチェックしてみよう。
→睡眠中に口が開いている証拠。睡眠時無呼吸症候群を併発している可能性もある。舌のポジションが適切でないため、歯形がつく人も多い。鏡で観察してみよう。
→口が開いたまま呼吸を続けると、口まわりの筋肉が衰えてダランと下がった表情に。口角や下顎が垂れ下がったり、目の大きさが左右非対称になったりすることも。
→いずれも口呼吸によって口内から潤いが失われた状態で、年齢とともに顕著になる。咀嚼力(=嚙む力)の衰えも、口をきちんと閉じる力が低下して口呼吸の原因に。
→口内が乾燥し、口腔内の細菌バランスが崩れて悪玉菌が増殖したり、炎症が生じたりした状態。鼻粘膜の乾燥も進むため、上咽頭炎の併発や出血も起こりやすくなる。
編集・取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/世戸ヒロアキ
初出『Tarzan』No.865・2023年9月21日発売