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量やタイミングは? 納豆が腸活にいい理由と摂り方のコツ

納豆が腸活にいい理由と摂り方のコツ

納豆がいかに腸にとっていいか。知って食べればありがたみもひとしお。栄養価や腸が喜ぶ食べ方、意外と知らない雑学までネバり強く学ぼう。

教えてくれた人:石川森夫先生 

いしかわ・もりお/東京農業大学醸造科学科教授。東京農業大学農学研究科農芸化学専攻博士後期課程修了後、同大学応用生物科学部醸造科学科で助手、講師、准教授を務め、同大学応用生物科学部醸造科学科教授博士(農芸化学)に。共著多数。

“ネバネバ”も腸に働きかける

そもそも発酵させる前から大豆は腸にいいという。水溶性と不溶性、両方の食物繊維を含むためだ。

「いろんな栄養価がありますが、まず腸活と関わりが深いのはタンパク質です。タンパク質は多くのアミノ酸が連なったもので、腸で吸収するにはアミノ酸としてバラバラに分解する必要がある。

通常は体内の酵素によって分解されますが、納豆は納豆菌が産生するタンパク分解の酵素により食べる前から多くのタンパク質を分解しています。アミノ酸として吸収するのが実にスムーズ、これが納豆の大きな特徴です」(石川森夫先生)

納豆のアイデンティティといえる“ネバネバ”も腸に働きかける。

「納豆菌が大豆の成分を分解することで発生する糸の主成分は、フルクトースという糖が連なったレバンとγ-PGA。どちらも栄養分としては食物繊維と同様の働きをします。

レバンは腸内の善玉菌といわれるビフィズス菌のエサとなり、腸内環境改善に寄与します。γ-PGAはアミノ酸の一種であるグルタミン酸が数多く繫がったもので、分解されることなく腸まで届くという性質があります」

納豆菌のアッパレな仕事ぶりと、大豆の食物繊維による整腸作用でお腹がすっきり整うのだ。

他の発酵食品と比べてどう違う?

菌を含む発酵食品全般が、腸活に向いている。そのなかで、納豆のストロングポイントとは。

塩分を含まないことが最たるもの。同じ大豆を原料とする味噌をはじめ、漬物も塩が入ります。発酵食品の成り立ちとして“保存が利く”ことがスタートなので、塩をたくさん使う必要がありました。

味わいとして、酸味がない点も他の多くの発酵食品との違いといえるでしょう。しょっぱさと酸っぱさに腐敗細菌を殺す作用があり、保存性が付与されますが、納豆は腐敗細菌が増える前に納豆菌が独自の“世界”をつくります」

塩分が気になる人もタレの量などを加減すれば、常食しやすい。

「また納豆は生きた菌を含んだ状態でそのまま食べられます。生味噌や、伝統的な製法の漬物などにも生きた菌は含まれますが、それらから納豆菌に匹敵する量の菌を摂ろうとすると、確実に塩分過多になってしまう。

近年、“死んだ菌”でも一定の効果があるという研究結果が着目されていますが、それでも生きた菌を摂れることは魅力と感じる方が多いのでは」

腸活にはどう食べるのがベスト?

オクラやメカブなどの食物繊維が豊富な食材は納豆と好相性。納豆にキムチを入れ、乳酸菌と一緒に摂るのも定番ですね。乳酸菌が生きて腸に届くと腸内環境が酸性に傾く。ビフィズス菌は酸性の環境を好むため腸内のビフィズス菌が活発に。納豆菌がエサとなり好循環が生まれます。

同時に摂取せず、朝にビフィズス菌を配合したヨーグルトを食べ、日中に納豆を食べるのも腸には有効です」

納豆単体でなく、料理に使う時には調理するうえで注意点が。

「ぐつぐつ煮たりカラカラになるまで炒めると、納豆菌の酵素の形が変わってしまうので過度な加熱は避けましょう

あと、納豆の食べ方で何より重要なのは食べ過ぎないこと。納豆は1日1パックが基本です。ホルモンのような働きをする大豆イソフラボンの過剰摂取は健康を害するリスクを高めます。食物繊維も摂り過ぎると必要な栄養分の吸収を阻害し、腸内細菌叢のバランスが乱れかねないので適量を守りましょう」

納豆と相性のいい食材ベスト3

納豆 腸

食物繊維豊富で納豆に合う食材といえばこの3つ。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を好バランスで含む山芋オクラ、水溶性食物繊維を摂れるメカブ。ネバネバタッグはやはり強し。

納豆の素朴な疑問

――栄養価的に、よく混ぜて食べた方がいい?

「栄養価は変わりませんが、口当たりは変化します。混ぜることでレバンとγ-PGAが空気を抱き込むと、数回しか混ぜない時と比べてボリュームが増します。また食物繊維が水を含むことで満腹感が持続しやすくなります」

――納豆の大豆のサイズで栄養価に差は?

大粒ほど栄養が凝縮してそうだが。

「基本的に納豆菌は豆の表面で増えます。大粒よりひきわりの方が全体の表面積が大きいので、納豆菌はより繁殖しやすいといえます。ただ、1パックでそこまで差は出ませんけどね」

――賞味期限直前の方が発酵が進んでいて食べ頃?

フレッシュな方が食べ頃です。発酵する40℃前後が納豆菌にはベストですが、流通や持ち帰る過程で温度帯が変化すると過発酵状態になることも。結果、アンモニア臭が形成されたり、混ぜてもふわっとしなくなります」

取材・文/門上奈央 イラストレーション/渡邉唯 取材協力・監修/石川森夫(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授)

初出『Tarzan』No.864・2023年9月7日発売

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