漫画で学ぶ「股関節を整える」どんな良いことが起こる?
今、このページを座りっぱなしで読んでませんか? 座りっぱなしは股関節いじめの代表行為。一方で、股関節を整えるとカラダは喜んでどんどんいい反応が出始める。さてどんなメリットがあるのか、漫画でサクッと確認。
取材・文/石飛カノ 漫画/コルシカ 監修/高平尚伸(北里大学大学院医療系研究科整形外科学/スポーツ・運動器理学療法学教授)
初出『Tarzan』No.862・2023年8月3日発売
監修
高平尚伸先生(たかひら・なおのぶ)/整形外科医。北里大学大学院医療系研究科整形外科学/スポーツ・運動器理学療法学教授。専門は股関節外科学。最小侵襲手術を手がけると同時にリハビリテーション学にも精通し、股関節痛のセルフケアの重要性を啓蒙。
登場人物
膝子©膝雄と関節子(左):40歳を越えた今でも逞しい想像力を最大限に生かし、子ども向け漫画を量産。そんな膝子©膝雄を支えるのはしっかり者のアシスタント、股関節が異様に柔らかい関節子。
ドクター須登蓮司(右):元天才整形外科医だったが交通事故で両手を負傷し、医師の道を断念。山に籠もって独自の修行を積み、股関節&姿勢の魔術師として人生をリスタート。迷える人々を日々救済中。
1|膝が痛くて
関節の役割は大きく分けてモビリティ(動き)とスタビリティ(固定)の2種類に分かれる。それでいうと膝関節はスタビリティ。膝の痛みや不調を改善し安定性を確保するためには、隣り合う股関節のモビリティを高めることが近道だ。
2|注目すべきは股関節!
股関節のトラブルの中で最も多いのは変形性股関節症。加齢や肥満などによって関節がすり減ることが主な原因で、日本人の潜在的な変形性股関節症は550万人くらいいると考えられている。
おじいちゃんおばあちゃんの不定愁訴と思うなかれ。40〜50代で股関節を痛めている人、股関節の変形による膝痛を抱えている人は少なくない。
3|滑液を分泌させる
滑液とは、関節を包み込んでいる“関節包”の内部で分泌される黄色透明な液体のこと。関節を滑らかに動かす潤滑油のような働きや関節軟骨に栄養を供給するといった役割を果たす。股関節をこまめに動かすことが滑液の分泌を促す最大にして最良の方法。
4|歩幅が広がり
歩幅が広がるということは同じ時間歩いたとしても長い距離を歩けるということ。股関節がしっかり動いて歩幅を稼げれば、それだけエネルギー消費の効率がよくなる。つまり太りにくくなる。スピードもまた大事。40〜50代なら1秒間に1.5〜1.6m程度進めるスピード感で歩くべし。
5|効率の良い歩き方
運動不足の状態が続くと、当然股関節周辺の筋肉は硬くなる。たとえば太腿前の筋肉が頑張っても、協調して働くお尻の筋肉が硬ければパワーは発揮できない。よって太腿が本来持っているパワー以上に頑張らなくてはならず、疲れやすい。筋バランスを整えることが重要だ。
6|骨盤の傾きが少なくなり猫背も解消
股関節と背骨は骨盤を介して互いに影響し合っている。股関節にトラブルがあると猫背か反り腰になりやすく、とくに高齢者に多いのは背中が曲がって骨盤が後傾する悪姿勢。重心が後ろにずれて股関節前面の靱帯や筋肉が引っ張られ、脚の付け根に痛みが生じることも。高齢者でなくても普段の姿勢の悪さでこうしたトラブルに陥りがち。
7|腰痛も軽くなる!
股関節の機能に問題があることで腰痛が引き起こされる状態を「ヒップ・スパイン・シンドローム」と呼ぶ。6で解説したような猫背や反り腰の姿勢で骨盤が傾くと、腰椎に常に余計な負担がかかり、周辺の筋肉にも負担が増し慢性腰痛に。患部以外の部位、股関節を調整することで腰痛が軽減するというケースは非常に多い。
8|近所の散歩
股関節を鍛えるためにいきなり1万〜2万歩歩いてみたはいいけれど、かえって股関節痛に。これ当たり前の話。股関節周囲の筋肉を鍛えずにいきなり歩けば関節にもろに負担がかかる。骨盤を立てるには内腿やお尻の横の筋肉が必要だし、太腿を上げるためには大腰筋がマスト。筋肉を鍛えつつ、徐々に歩く距離を延ばしていくのが正解。
9|体幹も適切に働く
マシンでのラットプルダウンにしろ、自体重を利用したスクワットにしろ、体幹がしっかり安定していないと背中や下半身の筋トレ効果が十分に得られない。猫背でバーを下げるラットプルダウンでは広背筋に効かないし、膝が前に出た姿勢でスクワットをしてもお尻の筋肉には効かず、かえって膝を痛める。体幹の安定は股関節と背骨の相互関係がうまくいっていてこそ。
10|バランス能力
片脚立ちになった瞬間、股関節には体重の3〜4倍の負荷がかかる。歩くという動作は片脚立ちの繰り返し。一歩ずつの負荷に耐え、バランスをとるためには股関節周辺の筋肉でしっかり骨盤を立てることが不可欠。小走りしたときには股関節への負担はさらに増す。バランス能力が上がれば小走りする気力も芽生えるはず。
11|片脚立ちで靴下を履く
股関節が健全な状態で十分な可動域が確保できていれば、さっと物が拾える、キビキビ速足で歩ける、いつでも小走りができる。逆に股関節の機能が低下すると、これらのことが億劫になる。股関節の不調は普段の生活ではなかなか自覚できないので、片脚立ちで靴下を履いてみよう。両足履き切れない人は股関節リボーンに努めるべし。