中村尚人さん
監修してくれた人
理学療法士の臨床経験を通し、ヨガ・ピラティスインストラクターの資格を多数取得。東京・八王子にて〈TAKT EIGHT〉を主宰。医療従事者や一般向けの『いちばんよくわかるピラティス・レッスン』など著書多数。
堀内將平さん
実演してくれた人
モデル/〈Kバレエ カンパニー〉プリンシパル。数々の作品で主演を務め、抜群の身体能力とすぐれた表現力で高い評価を得ている。
股関節の正しい動きを引き出すには、体幹の下部にあたる骨盤帯の安定性がマスト。これを実現させるために必要なのが、「四肢の分離した動き=ディスアソシエーション」だ(詳しくはTarzanWebの記事:エロンゲーションって?「ピラティスの動き」基礎から解説)。
「体幹が不安定だと股関節の動きは分離されず、骨盤帯を経由して過剰なストレスが腰椎へと伝わります。これが腰椎の不安定性を引き起こして、脊柱間の関節や椎間板の不調を招くという結果に」
ディスアソシエーションを行うポイントは、脚の動きにつられて骨盤をグラグラさせたり、腰を浮かせたりしないこと。実際にエクササイズをやってみると、インナーを利かせたお腹の引き締め、センタリングの意識などが威力を発揮することを体感できるはずだ。
初級|ショルダー・ブリッジ
骨盤が傾かないように安定させ、脚の自体重を使って体幹を強化するエクササイズ。腹筋と背筋を使って、背骨のしなやかな伸びをキープしながら脚を動かすのもポイントに。
1. 仰向けで膝を立て、腕を体側に伸ばして手のひらを床につける。ここから骨盤を後傾させながらお尻を上げ、背骨をひとつずつ床から離すように背中を持ち上げていく。
2. 腰を反らさず、背骨の伸びでカラダを一直線に上げていく。膝は開かず腰幅をキープして、お尻の筋肉を利かせることでセンタリングを意識。
3. 息を吸いながら、足先をポイントにして片脚を股関節から高く上げる。勢いをつけるのはNG。
4. 続いて息を吐きながら、脚を肩甲骨から遠くへ伸ばすイメージで反対側の膝まで下げ、10回×3セット繰り返す。背骨をひとつずつ床につけて背中を下ろし、1に戻って反対側も。
EASY
体幹はまっすぐ、骨盤を傾けないことが最重要。グラグラしてキツい場合は、膝を90度に曲げたテーブルトップのポジションで上げ下げしよう。
中級|レッグ・サークル
股関節をディスアソシエーションさせながら全方向へ動かすことで柔軟性がアップ。骨盤が安定したニュートラルポジションから無理なく動かせる範囲でコントロールしよう。
仰向けになり、手のひらを下向きで体側に伸ばし、肩を下げて背骨のエロンゲーションを意識。さらに片足をポイントにして、股関節から脚をできる範囲で高く上げる。
股関節を支点に、小さな円を描くように脚を内側へ回していく。だんだん円を大きくしながら、10回×3セット繰り返す。
外回しも同様に、円を大きくしながら10回×3セット。骨盤が浮いたり脚で踏ん張ったりしないよう、お腹に力を入れて体幹を安定させること。反対側の脚も行う。
中級|サイド・キック・ニーリング
骨盤がグラついたり、前後に傾いたりするのを防ぐため、常にお腹は引き締めておくのがポイント。安定した体幹部から股関節本来の動きが引き出され、ランやウォーキングの動作もスムーズに。
膝立ちから片脚を真横に伸ばし、上体を逆側に倒して手は肩の真下につく。上側の手は頭の後ろに当て、肘を天井に引き上げて背骨を伸ばし、骨盤はニュートラルポジションに。
足首をフレックスにして、伸ばした脚を股関節から前に振り出す。続いて、足先をポイントにして腰の反りを防ぎながら、伸ばした脚を股関節から後ろに振る。
体幹はまっすぐ、下腹部を引き上げて骨盤と肩のグラつきを防ぎ、2と交互に各10回×3セット繰り返す。反対側も1から同様に。
EASY
腰が反る、骨盤がグラつくなどでコントロールが難しい場合は動かす範囲を小さくするほか、1のポジションで横から脚の上げ下げを。
上級|シザーズ
腸腰筋を利かせながら、遠心性の動きで両脚を股関節からダイナミックに動かすエクササイズ。背中を丸めたCカーブとともに、腹筋群をまとめて刺激して強化するトレーニング効果も大。
仰向けになり、両膝を揃えて90度に曲げたテーブルトップポジションに。両手は頭の後ろに当て、首から胸椎までを順に、丸く引き起こしていく。
膝を伸ばして足先をまっすぐ天井に上げ、両手を脛のあたりに添える。お腹は薄くして腰を床に押しつけ、骨盤を安定させておくこと。さらに肩甲骨の間と肘を開くことで、背中の丸いCカーブを作る。
足先をポイントにしたまま、遠くへ伸ばすように片脚を股関節からまっすぐ下ろす。続いて左右の脚を入れ替え、上げた脚の脛をキャッチ。お腹の内側に力を入れながら骨盤を安定させ、スピーディかつリズミカルに、左右交互で各10回×3セット繰り返す。