- 整える
加治ひとみさんも体感。今日もスッキリを実現する《オールブラン》の新しい使い方
PR
あらゆることを人力で行なっていた産業革命以前は、日常生活が今よりはるかにハード。それゆえ、トレーニングが本格的に一般市民に普及したのは20世紀ごろだった。そして現在にいたるまで、日本国内外でさまざまなトレーニング法が提唱されてきたが、実はその発展に宇宙も関連していた!? 意外なトレーニングの歴史とはいかに。
筋トレの起源は想像を遥かに超える大昔。紀元前2500年頃の古代エジプトまで遡るが、それは競技会での成績アップを目論んだもの。
以後も長らく、トレーニングはアスリートの専売特許だった。労働も家事も人力に頼るほかなく、日常生活がハードすぎたので、一般人にカラダを鍛えるニーズがないのも当然だ。
古代オリンピックのレスリングで6連覇したミロンには、仔牛を担いで筋肉を鍛えたという逸話が残る。牛が大きくなるにつれて負荷が自然に上がり、筋肥大は加速しただろう。
18世紀後半からの産業革命で機械化が始まり、重労働からの解放が始まった影響なのか、19世紀にはカラダを鍛えることに興味を持つ市民が出現。世界初のボディビルダーであるユージン・サンドウが活躍したのも、19世紀末だ。
20世紀初頭には、筋トレに不可欠の負荷調整可能なダンベルやバーベルも出揃ってきた。
サンドウの時代にも筋トレの基礎は出来上がっていたが、それが科学的にブラッシュアップされたのは、第二次世界大戦後。
1950年代、日常を上回る負荷を加え続けるべきだという「過負荷の原則」や、負荷は徐々に上げるべきとする「漸進性の原則」(ミロンが実践済み)が確立。
1965年には、あの〈ゴールドジム〉がアメリカに出現。1960年代には数々の筋トレマシンが生まれ、1970年代のアメリカではフィットネスジムが増えてトレーニングが一般化する。エアロビクス(有酸素運動)、ストレッチ、ジョギングなどが登場したのも、この頃。アスリートのものだったトレーニングが、普通の市民にも広まる。
その波が日本まで押し寄せたのは、1980年代に入ってから。都市にジムができ始め、エアロビクスダンスが一大ブームを巻き起こした。その波に乗り、本誌『ターザン』が創刊したのは1986年だ。
一時期有酸素に押され気味だった筋トレだが、1990年にアメリカスポーツ医学会が、体力作りの一環として筋トレを推奨した頃から、復権。「ムキムキは嫌」との誤解から筋トレを忌避していた女性や高齢者にも、筋トレが浸透する。
日本発のトレーニング法もある。海外も注目の加圧トレーニングは、ボディビルダーの佐藤義昭氏の考案。1997年に特許登録されて、加圧ジムも増えた。
また、世界一効率的なHIIT(高強度インターバルトレーニング)を、1988年頃スピードスケートのトレーニングに初めて取り入れたのが入澤孝一氏。後年、「タバタトレーニング」として大ブレイクする。
今後トレーニングはどう変わるか。ヒントはたぶん宇宙にある。
宇宙飛行士のストレスケア法として1950年代の旧ソ連で生まれたのが、メンタルトレーニング。アメリカ発のエアロビクスも、宇宙飛行士の心肺機能を高めるためのプログラムが元だ。
国際宇宙ステーションも、トレッドミルと筋トレマシンを積む。火星旅行が実現する頃には、イーロン・マスクあたりが画期的トレーニング法を開発しているに違いない。
取材・文/井上健二 イラストレーション/うえむらのぶこ 参考文献/『筋力トレーニング法100年史』(窪田登著、体育とスポーツ出版社)
初出『Tarzan』No.842・2022年9月22日発売