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壊れつつある!? 現代人の腸内環境にまつわる悲しき真実

健康維持のみならず、運動パフォーマンスやアンチエイジングなど幅広く関係していることが明らかになっている腸内環境。一方で、研究が進むにつれ、現代を生きる我々の腸がいかに厳しい状況におかれているかもわかってきた。今回は、腸活の重要性を再認識させられる悲しき真実をお教えしよう。

日本人特有の腸内細菌が失われつつある

胎児は腸内も含めて無菌。生まれてくるときに、母親から腸内細菌の主要メンバーを受け継いで、3歳前後で定着する腸内細菌のレギュラー陣が定まる。その後、いくら有益菌を摂取しても、新たなレギュラーにはなれない。

ただし、せっかく定住した腸内細菌も、食物繊維が少ない食生活を続けると、栄養不足で徐々に数が減ってくる。ほんの少しでも菌が残っていたら、好物の食物繊維を増やしてやれば、少しずつ増えて復活が果たせるかもしれない。

だが、食物繊維が極端に少ない食生活を長年送っていると、マイナーな菌は腸内から完全に消え失せてしまい、二度とカムバックできないものが出てくることだって考えられる。

「本人一世代のうちなら何とか復活させられるとしても、母親が喪失した腸内細菌を、その後に生まれてくる子どもに、引き継ぐことはできないのです」

食生活や環境などの違いで、腸内細菌叢には民族や地域に応じた特徴がある。日本人が古くから脈々と引き継いできた特徴的な腸内細菌を、現代に生きる私たちが食物繊維に乏しい食事で失うと、次世代に伝えられなくなり、古き良き腸内細菌の伝統が途絶える恐れもありそう。

腸内細菌の多様性
腸内細菌の多様性

京丹後市の同一家系3世代で、腸内細菌叢の多様性を評価。祖父母(第1世代)⇒両親(第2世代)⇒孫・子ども(第3世代)と腸内細菌叢の多様性が減り、世代間で失われた腸内細菌があることを示唆。資料提供/内藤裕二

動物性脂質、糖質、塩分が腸内環境を壊す

腸内環境を整える善玉が食物繊維なら、腸内環境を狂わせる悪玉トップ3は動物性脂質糖質塩分。まずは、赤肉(牛・豚・加工肉など)などに含まれる動物性脂質について。

「脂質がリッチな赤肉などの摂取が増えると、小腸までで消化しきれない動物性脂質が大腸に流れ込みます。すると、それをエサとする悪玉菌が増えて“腐敗”を起こし、硫化水素などを作り出して腸内環境を悪化させるのです」

高脂肪食は腸内細菌叢を変化させる
高脂肪食は腸内細菌叢を変化させる。

217人に6か月間、低脂肪食(脂質エネルギー比20%)、中脂肪食(同30%)、高脂肪食(同40%)を食べてもらい、腸内細菌叢の変化を調査。低脂肪食群では酪酸を作る善玉菌が増え、高脂肪食群では状況次第で悪玉になる日和見菌が増えた。Wan Y, et al. Gut 2019; 68: 1417-1429

次は糖質。食物繊維の宝庫である穀物もでんぷんという複合糖質を含むが、問題なのは砂糖などの単純糖質

「砂糖も一部は腸内まで届き、腸内細菌のバランスを崩します。善玉の代表格のビフィズス菌も砂糖が大好物。砂糖でビフィズス菌が増えすぎるのも、腸内環境が乱れる誘因になり得る。実際、糖質の代謝が悪い糖尿病患者では、ビフィズス菌が増えることもわかっています」

塩分の過剰摂取も腸内環境を悪くする。

「塩分が要因とされる高血圧や胃がんは、過剰な塩分で腸内細菌叢が悪化し、悪玉菌が優勢に傾くことでリスクが上がっているのかも。4人に1人は減塩しても血圧は下がりませんが、背景に腸内細菌叢の違いがあるという説もあります」

取材・文/井上健二 イラストレーション/岡田丈 取材協力/内藤裕二(京都府立医科大学大学院医学研究科教授)

初出『Tarzan』No.840・2022年8月25日発売

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