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アジア人は欧米人より代謝が低い
欧米人に比べるとアジア人の脂質の摂取量は可愛いもの。なのにちょっと食べすぎるとすぐ太る。その理由のひとつは、脂肪からエネルギーを作り出すことが苦手な人々がアジア人に少なからずいること。
脂肪組織に存在し、脂肪燃焼作用に関与するβ-3アドレナリン受容体というホルモンの受け皿がある。日本人の場合、この遺伝子の変異が3人に1人に見られるという。
さらに農耕民族のアジア人は穀物を主食とし、狩猟民族の欧米人は動物性タンパク質を常食してきた歴史がある。後者の方が筋肉がつきやすく、従って代謝が高い可能性は大なのだ。
代謝が高い低いは遺伝する?
もちろん、生まれて以降の環境は代謝の高い低いに大いに影響する。何を食べ、どういう生活習慣で、人生の中で運動する機会がどれだけあるか等々。でも、そもそものカラダの構成比率は先祖代々から受け継いだ遺伝的要因であることがほとんど。
たとえば、速筋と遅筋の構成比率などがそれに当たる。 筋肉は瞬発的に大きな力を出せる速筋と、持続的に小さな力を出し続けられる遅筋にざっくり分かれるが、その比率は持って生まれたもの。運動で肥大するのは速筋なので、骨格筋による熱産生の能力はある意味遺伝する可能性はありそうだ。
日本国内でも地域によって代謝の違いはあり得る
寒い冬、ヒトは肝臓や褐色脂肪細胞という特殊な脂肪細胞で熱を作り出したり、筋肉を小刻みにふるわせて産熱する。つまり、一定の体温をキープするため代謝を上げる。冬より夏の方が代謝は低くなる。
ということは、常時気温が低めの地域と逆に気温が高めの地域では、もともとの代謝能力に差があると考えてもおかしくない。
真冬は日中でも氷点下となる北海道に住んでいる人は、体温を維持するために肝臓や褐色脂肪細胞でせっせと熱を作り出さなければ環境に対応できない。一方、真冬でも20度前後ある沖縄の住人はそんな必要なしに快適に暮らせる環境にある。
すなわち、同じ国内であっても南国より北国の住人の方が代謝は高いと考えられるのだ。
趣味の量と代謝量は比例する
テニスに推し活にアートな創作活動にと、多趣味な人は物理的に動いている時間が長い。運動以外の身体活動によるエネルギー消費をNEAT(非運動性熱産生)といい、これが一日のエネルギー消費量の20〜40%を占めるとされている。
20%の振れ幅があるのは、ライフスタイルによって消費されるエネルギーの量に個人差があるから。
日常生活でちょこまか動く人は軽く40%をカバーするし、空き時間をソファでダラダラ過ごすという人は20%に満たない場合もある。運動嫌いを自負する人は、趣味の範囲を広げて代謝アップに努める手もあり。
代謝と顔立ちには関係がある?
いかにも代謝が低そうな外見といえば、色白でヒョロヒョロ体型のもやしっ子を思い浮かべがちだが、なかには代謝が高い人間もいる(と思う)。赤身がかった顔色でがっしり体型でも代謝が低い人もいるはずだ(と思う)。
代謝の良し悪しを最もわかりやすく判断できる外見は顔色や体型ではなく、むしろ顎。顎が大きいということは食物をよく咀嚼でき、エネルギーをより作り出しやすいからだ。
縄文人の1回の食事の咀嚼回数は4000回以上だったのに対し現代人のそれは620回という話。顎が小さい人はもっと咀嚼を。
ヒトはネズミより代謝速度が遅いが、ゾウよりは速い
ロング&ベストセラー『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)の著者、本川達雄さんによれば、恒温動物の代謝量は体重の4分の3乗に比例するという。ただ面白いことに、体重が重ければ重いほど総エネルギー消費量は上がるものの、サイズが大きい動物ほど同じ1gの組織が代謝する量は少なくなるという。
で、結局のところ一生の総エネルギー量はサイズにかかわらずほぼ同じ。その代わり、3年で寿命を終えるネズミは猛スピードで代謝を繰り返し、ゾウはスローな代謝で50年生きる。生物としてのヒトの代謝スピードはその中間だ。
太っている=代謝が低いわけではない
代謝が高い人は太りにくい。糖質も脂質も余すことなくエネルギーとして消費できる能力があるからだ。ゆえに太っている=代謝が低い。でも、この法則が成り立たない例もある。
体重(kg)を身長(m)の2乗で割る肥満指標をBMIといって、数値25以上が肥満となる。この指標からすると力士は全員肥満。
じゃあ代謝が低いのかといえば、さにあらず。彼らは皮下脂肪というクッションの下に膨大な量の骨格筋を備えている。筋肉は脂肪より重いので、BMIでは簡単に肥満と判定されるが、基礎代謝量は人並み以上と考えられるのだ。