とろろ昆布、きのこ…。手軽に食物繊維が摂れる食材4つ
穀物や野菜だけじゃない。きのこや海藻、果物も重要な食物繊維供給源。積み増し食材として優秀なこれらの食材から、いかに効率的に食物繊維を摂取するか。今日から早速実践できる摂取術のティップスをご紹介。
取材・文/石飛カノ 撮影/吉松伸太郎 スタイリスト/山根梨菜子 ヘア&メイク/村田真弓 取材協力/青江誠一郎(大妻女子大学家政学部食物学科教授)、河村玲子
初出『Tarzan』No.840・2022年8月25日発売
① きのこのめんつゆ漬けでキチンを摂る
きのこは野菜と同様、低カロリーかつ食物繊維が豊富な食材というイメージがあるが、含まれている食物繊維がちょっとユニーク。
非デンプン性の多糖類であることは野菜と同じ。ただ、野菜の食物繊維が植物性であるのに対し、きのこに多く含まれる食物繊維は不溶性のキチン。エビの殻やカニの甲羅などに含まれるキチンは動物性だが、きのこに含まれるのは植物性。キチンにもいろいろあるのだ。
不溶性の食物繊維なので便のカサ増しになることはもちろん、キチン特有の体内の余分な脂質を排出する作用にも期待が持てる。
多種類のきのこをめんつゆに漬けてレンチンして常備すれば、そうめんの具、冷や奴のトッピングにと重宝する。冷凍保存もOKなので食物繊維積み増しアイテムとして導入を。
レシピ:きのこめんつゆ漬け
材料:きのこ(シイタケ、シメジ、エリンギ、エノキなど)合わせて300g、めんつゆ50ml、水50ml、大葉、茗荷、生姜各適量
作り方
- シイタケは薄切り、シメジは石突きを除いてほぐし、エノキは3cmの長さに、エリンギは拍子木切りにする。
- 1をめんつゆ、水とボウルに入れ、ラップをして600Wで2分加熱する。
- 大葉、茗荷、生姜を千切りにする。
- 2に3の薬味を加えて和える。
② 日本人は生でもOK。海苔からも食物繊維
海苔を分解する腸内細菌を持っているのは世界で唯一日本人だけ。この話は2010年にフランスの研究所が発表した論文がきっかけ。
ただしこれ、生海苔の話。生の海苔に含まれるある種の多糖類を分解できるのは、特定の海洋バクテリア。四方を海に囲まれ、長年海産物を生食してきた日本人の腸にその細菌が棲み着き、海苔を分解できるようになったという話。
焼き海苔の場合、加工のプロセスで多糖類が壊れてしまうので、日本人でなくても分解可能。外国人がスシを食べても大丈夫。生海苔を発見したら日本人の特質を生かして堂々食べよう。
また、海苔以外の昆布、ワカメなどの海藻にも水溶性食物繊維が豊富。こちらもせっせといただくべし。
③ トッピング自由自在なとろろ昆布を活用
海洋国家ならではの食生活によって、日本人には海藻類を好む腸内細菌を持っている人が比較的多い。海苔だけでなく、その他の海藻類も有効利用しなくてはもったいない。
なかでも水溶性食物繊維の補給源として最もおすすめなのは、とろろ昆布。理由はその製造法にある。
乾燥した昆布をまず酢に漬ける。この段階で細胞壁が適度に柔らかくなる。次に圧縮してブロック状にしたものを人の手や機械によって極薄状に削っていく。このとき、細胞壁からアルギン酸という水溶性食物繊維が溶け出しやすくなる。
で、あとは口に入れればアルギン酸が速やかに腸内に到達し、腸内細菌のエサになるというワケ。めでたしめでたし。1袋常備し、冷やしおでんに、納豆に、冷や奴に鯛やイカなどの刺し身に自由自在のトッピングを。
④ 果物も食べ過ぎは厳禁。ドライフルーツを活用しよう
果物は水に溶けるとゼリー状に固まる水溶性食物繊維、ペクチンの宝庫。腸内細菌のエサになるだけでなく、便を柔らかくしたり腸壁を守ったり糖質の吸収を緩やかにするというお助け食物繊維だ。
キウイ、バナナ、ブルーベリー、リンゴなどはとくにおすすめ。ただし、デザートで口にする程度ならOKだが食べ過ぎは厳禁。果物に多く含まれる果糖は小腸から吸収されるとダイレクトに肝臓で代謝され、余ればその場で脂肪に合成される。結果、脂肪肝に繫がりやすい。
そこで、適量のドライフルーツを活用する手も。水分の抜けた少量のドライフルーツにはペクチンが凝縮されている。紅茶や飲むヨーグルト、ワインなどに数個のドライフルーツを入れ、飲みつつ食ベてみてほしい。