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頚椎から頭痛や肩こりを改善する「背骨リセット」3ステップ

自分の背骨のコンディション、それを知るには「①頸椎、②胸椎、③腰椎」という3大エリアごとに細かくチェックするのが近道。今回は重たい頭を支えている「頚椎」のチェック&リセット術。

頸椎のチェック&3ステップを実践!

背骨を効果的にリセットするには、頸椎、胸椎、腰椎という3大エリアごとに細かくチェックするのが近道。3大エリアにはそれぞれ特徴があり、弱みや異変の表れ方が違うからだ。

3大エリアに詳しい3人のトレーナーに協力を仰ぎ、各々の現状を知るチェック法と、歪みをリセットするエクササイズを教えてもらった。

エクササイズは「ゆるめる」→「うごかす」→「きたえる」という3ステップで。「ゆるめる」「うごかす」は週4〜5回、「きたえる」は週2回以上実践しよう!

「頚椎リセット」を教えてくれた人

伊藤和磨(いとう・かずま)/MARO’S代表。プロサッカー選手としてJリーグで活躍。頸部痛や腰痛に悩んだ経験から治療家の道へ。プロ選手から一般人まで、現在まで3万回以上のセッションを実施。https://www.maros.jp/

まずは頚椎の状態チェック!

頸椎は7つあり、背骨でいちばん可動性に富む。頸椎は前方へ緩やかにカーブしているが、現代人はそのカーブがフラットに近づきやすく、俗にストレートネックと呼ばれる。

頚椎の位置

「スマホやパソコンの画面を見ている時間が長くなると、頭が前に出るフォワード・ヘッド・ポスチャー(FHP)に陥り、ストレートネックが起こりやすくなります」(メディカルトレーナーの伊藤和磨さん)

頭の重みは、ボウリングの球ほどもある。頸椎は背骨でもっとも小さく剛性が低いため、クッションの役目を果たす前彎カーブが消えてストレートネックになると、頭の重みに耐えられなくなる。

それが、肩こりや頭痛といった不調の引き金に。頸椎に異常はないか、早速チェックだ。

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頚椎カーブのチェック
頚椎カーブのチェック
  1. 柱や壁の角に背を向けて立ち、角から半足分だけ両足を離す。
  2. 両足は肩幅に開く。両腕は体側に下ろす。
  3. 次にお尻(仙骨)と背中(肩甲骨の間)を角につける。
  4. 顎を引いて後頭部をゆっくり角につける。
  • 【OK】首の後ろと角の間に、人差し指と中指2本分の隙間ができる。
  • 【NG】後頭部がつきにくい。無理につけようとすると口が開きやすい。
屈曲・伸展のチェック
屈曲・伸展のチェック
  1. 椅子に骨盤を立てて浅く坐り、両膝を肩幅に開いて90度曲げる。両手を太腿に添える。
  2. 顎を引いてから、頭を前に倒して首を曲げる(屈曲)。
  3. 次に、天井を見るように頭を後ろに倒して首を伸ばす(伸展)。
  • 【OK】伸展→痛みや引っかかりがなく、顔面が床と平行に近づくまで伸びる。屈曲→痛みや引っかかりがなく、顎が胸に近づくまで曲がる。
  • 【NG】十分に屈曲・伸展できない。途中で痛みや引っかかりがある。
側屈・回旋のチェック
側屈・回旋のチェック
  1. 「頭の上下運動」と同じように椅子に坐る。
  2. できるだけ大きな円を描くように、頭を時計回りに回す。
  3. 同様に、反時計回りにも回す。ゆっくり行い、無理をしないこと。
  • 【OK】どの角度でも痛みや引っかかりがなく、肩が上がらずにスムーズに回せる。
  • 【NG】どこかに痛みや引っかかりがある。首を回しているうちに肩が自然に上がってくる。
詳しい動きを動画でもチェック!

ステップ①|ゆるめる

背骨の土台となる骨盤が歪んでいたら、頸椎は緩みにくい。そこで、初めに行いたいのは、腸腰筋ストレッチ。腸腰筋は背骨と骨盤を結ぶ筋肉で、ほぐすと骨盤が整いやすい。

次に重要なのは、後頭部と頸椎の間を走る後頭下筋群マッサージ

「この筋肉は頭蓋骨の挙動を微調整し、頭の位置を脳に伝える働きがある。加えて眼球を固定する補助的な役割も担うため、デスクワーカーは後頭下筋群がパンパンに張り、頸椎まわりの神経や血管を圧迫して頭痛めまいなどを起こします」

後頭下筋群を緩め、頸椎をモビライゼーションでほぐしてやると、首がラクになるだけではなく、脳の血液循環が促されて頭もクリアになる。

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骨盤の傾きを確認
骨盤の傾きを確認
  1. 椅子に坐り、両腕を床と平行に伸ばし、手のひらを下に向ける。
  2. 上体を左右に限界までスライドさせる。

スライドしやすい方は、それだけ骨盤が下がっている証拠。普段からそちら側の脚を組むクセがあることが多い。

腸腰筋のストレッチ(20秒×1〜2セット)
腸腰筋のストレッチ

※右側の骨盤が下がっていた場合(左側の場合は逆の動きを)

  1. 椅子の右端に左側のお尻だけで坐り、右脚を後ろに伸ばす。左脚は膝を90度曲げる。
  2. 右腕を天井に伸ばし、左手は左の太腿に。お尻を締めて骨盤が前傾しないようにロック。
  3. 右足で床を蹴り、上体を床と垂直に保ち、骨盤を押し出し、右側の股関節を伸ばして20秒保つ。
後頭下筋群のマッサージ(20秒×1〜2セット)
後頭下筋群のマッサージ
  1. 背もたれの高い椅子に浅く座る。
  2. 後頭部と首の境目を背もたれに引っかけ、全身を脱力させて真上から圧迫。
  3. 位置を少しずつズラし、脳天や側頭部、目の奥にズンと響く場所を探す。
  4. そこを20秒間圧迫し続けてマッサージ。
頚椎のモビライゼーション①(左右交互に計12〜16回)
頚椎のモビライゼーション①
  1. 両足を腰幅に開いて立ち、両腕を床と平行にまっすぐ伸ばす。
  2. 拳を軽く握り、動きを良くするために親指を天井へ向ける。
  3. 片方の親指を下に向け、上を向いている親指に顔を向ける。
  4. 親指の上下を入れ替え、上を向いている親指に顔を向ける。腕を下げず、ゆっくりと。
頚椎のモビライゼーション②(20秒×3セット)
頚椎のモビライゼーション②
  1. 仰向けで腰幅に開いた両膝を曲げて立てる。
  2. タオルの両端を両手に持ち、首の後ろの真ん中に回す。
  3. 脇を締め、タオルが弛まないように伸ばす。
  4. 斜め上(目の方向)へタオルを引き上げ、首にカーブを作り、20秒保つ。
ファシリテート・ストレッチ(16秒×1〜2セット)
ファシリテート・ストレッチ
  1. 両足を腰幅に開いて立ち、左耳を左肩に近づけるように頭を左へ倒す。左手を右側の側頭部に当てる。
  2. 右肩を下げ、左手で頭を左側へ倒すように全力の50%ほどの力をかけ、それに抵抗して頭の位置を動かさずに6秒保つ。
  3. 力を抜いて2秒リラックスしたら、頭をさらに深く倒し、同様に8秒保つ。
  4. 左右を変えて同様に行う。※頭を斜め前に倒して同様に。

ステップ②|うごかす

猫背で肩が前に出て、肩甲骨が背骨から離れる外転位で固まると、首の後ろと背中を走る筋肉が緊張して弱くなり、頸椎の前彎カーブが保てなくなる。そこで肩甲骨を背骨に寄せて肩を後ろに引き、肩甲骨をあるべき位置に収めるリポジショニングを行う。これで、上のチェック項目はほぼOKに近づくはずだ。

「筋膜にあるセンサーから、ポジションが変わったという情報が届くと、脳は緊張していた首の後ろと背中の筋肉に“緩め”という指令を出します。それで頸椎が解放されるので、首も肩も動きが軽くなるのです」

ウォール・ダイナミックストレッチでは、後頭部を壁につけて頸椎カーブを作り、腕でリードしながら、肩甲骨の可動性をアップさせよう。

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肩甲骨のリポジショニング(8〜12回)
肩甲骨のリポジショニング
  1. 両足を腰幅に開いて立つ。両腕を下げる。両肩をすくめるように上げる(肘を曲げない)。
  2. 肩を後ろに引くように回し、脱力して肩を下げる。
  3. 肩を下げたままだと肩甲骨は後ろに引きにくいので、肩を上げてから後ろに回す。
ウォール・ダイナミック・ストレッチ(8〜12回)
ウォール・ダイナミック・ストレッチ
  1. 壁に背を向けて立ち、踵、お尻(仙骨)、背中(肩甲骨)、後頭部を壁につける。
  2. 両腕を壁に沿って肩幅で上げ、手のひらを正面に向ける。
  3. 肘を伸ばしたまま、手の甲で壁を擦りながら、大きな円を描くように両腕を下げる。
  4. 肩の高さで手首を返して手のひらを壁に向けて体側まで下ろしたら、逆の動きで元に戻る。

ステップ③|きたえる

FHPを改善するためには、視点を正面に固定したまま顎を引くことが不可欠。現代人は眼球が下向きのままフリーズしているため、顎を引くと眼球も下を向く。頭蓋と眼球の動きを分離させる、ペン・エクササイズが効果的だ。

仕上げに、顎を引いて頸椎に自然なカーブを取り戻すトレーニングを行う。それがチンタック

「7個の頸椎は、上から2つの上部頸椎と、その下の中・下部頸椎に分かれており、作りも働きも異なります。FHPだと上部頸椎が伸展し、中・下部頸椎が屈曲したまま固定されます。チンタックで顎を引くと、上部頸椎が屈曲し、中・下部頸椎が伸展して、頸椎カーブをよりナチュラルにリセットできるのです」

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ペン・エクササイズ(8〜12回)
ペン・エクササイズ
  1. 片手にペンを持ち、椅子に浅く坐る。
  2. 顔の前で、ペンを床と垂直に立てる。視点をペン先に固定し、顎を引く。
  3. 額と眉間にシワが寄らないように注意し、ゆっくり頷き、元に戻る。
チンタック①(8〜12回)
チンタック①
  1. 柱や壁の角に背を向けて立ち、角から半足分だけ両足を離す。両足は肩幅に開く。
  2. お尻(仙骨)と背中(肩甲骨の間)を角につける。
  3. 片手の指で顎を軽く押しながら、顎を引いて後頭部を角に押し付けて3秒キープ。
チンタック②(8〜12回)
チンタック②
  1. 椅子に浅く坐り、片手の拳を軽く握って胸の谷間に置き、人差し指を立てて顎に当てる(前屈みがクセの人は、おそらく人差し指よりも顎が前に出ている)。
  2. 舌を上の歯の裏に当て、二重顎を作るように、人差し指よりも顎を後ろに引いて3秒キープ。
詳しい動きを動画でもチェック!

取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/音成 健 イラストレーション/野村憲司(トキア企画)

初出『Tarzan』No.818・2021年9月9日発売

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