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ちょっとしたストレスで性欲は高まる|脳科学と性⑤

食欲・睡眠欲と並ぶ3大欲求のひとつ「性欲」は、私たちが生きていくうえで欠かせないものですが、メカニズムとしてよくわからないことがたくさん。そこで欲求を司る脳との関係性について、脳科学の第一人者である岡山大学の坂本浩隆准教授に伺いました。今回は「性欲低下の原因と対策」について。

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性欲が湧くのは、心身の健康があってこそ

最近なんだか性欲がない。そんなことをふと思ったときは、ぜひ自身の生活習慣を見つめ直してほしい。というのも、性欲は心身が健康でなければ湧き起こらないのだ。

「カラダはさまざまな臓器が連携して働くことで機能しています。カラダが不調に陥ると精神状態も不安定になり、性的な行為にまで考えが及ばなくなる可能性があります」(岡山大学・坂本浩隆准教授)

肉体と精神の状態は表裏一体。心身ともに良好な状態をキープすることが大切だ。特にテレワークが日常化した現在は、運動不足になり、ストレスも溜め込みやすい。

過度なストレスがかかると食事や睡眠にも影響が出てしまい、悪循環を及ぼす可能性も大いにあるため、ぜひ工夫して一日数分からでも運動を取り入れてみよう。

亜鉛は、良質な精子を作る手助けをする栄養素

より手っ取り早く体質を改善するために、サプリメントに頼りたい気持ちもある。性欲減退時には亜鉛のサプリメントが良いと噂されるが、実際の効き目はいかほどなのだろうか。

「亜鉛は細胞分裂に必要なミネラルなので、質の良い精子をつくるなど生殖能力を高めるために活用できると思います。ただ、性欲に直接効果があるかと言われると、疑問が残りますね」

亜鉛のサプリメントを飲むことで自己暗示的にセックスに自信が持てる人もいるだろうが、本当に性欲が増しているかどうかは切り離して考えたほうが良さそうだ。

特定の栄養素に限らず、バランスを心がけることが大切だと坂本先生は言う。心身が健康でなければ性欲が湧きにくいのは当然のことだろう。

性欲を高めるのに、適度なストレスは有効?

ところで、アクション映画を観ていると、極限状態に陥った男女がなにやら良いムードになる場面が。もちろんこれはフィクションの話だが、実際に何か危険を感じた時は性欲が高まりやすいのだろうか。

「強いストレスを感じると性欲は落ちる傾向にあります。ただ、ちょっとしたストレスが性的アクティビティを高めることは実験で証明されています。似たような事例だと、『吊り橋効果』が近いでしょう」

吊り橋効果は、恐怖や不安を一緒に体験すると恋愛感情を抱きやすくなる心理現象のこと。このとき脳内で何が起きているかというと、ストレスがかかることでドーパミンやアドレナリンが分泌され、交感神経が優位になり興奮状態になっているのだ。

つまり、映画の中の登場人物においても似たような状況が起きているのだろう。そして、二人を観察してみると心身ともに健康そうに見える。まずは危機を乗り切れるほど活力がある状況にまで自身のコンディションを整えることをおすすめする。

教えてくれた人
坂本浩隆先生
坂本浩隆(さかもと・ひろたか)/岡山大学大学院自然科学研究科准教授。専門は神経内分泌学。特に神経ペプチドホルモンやステロイドホルモンの神経系への影響や、行動レベルで作用している神経内分泌系の仕組みに関心を持ち、研究をしている。また、科研費研究課題を対象とした先端バイオイメージング支援事業(ABiS)にも携わる。

取材・文/石川優太、村上広大 イラストレーション/村林タカノブ

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