• 「全方位にバランスの取れた上半身で、激流を制御する」カヌースラローム・羽根田卓也の上半身トレ
COLUMN
2021.05.06

「全方位にバランスの取れた上半身で、激流を制御する」カヌースラローム・羽根田卓也の上半身トレ

カヌースラローム・羽根田卓也
羽根田卓也(はねだ・たくや)/1987年生まれ。ミキハウス所属。高校卒業後、スロバキアへ留学。2014年と18年のアジア大会で連覇し、16年のリオ五輪では銅メダルを勝ち取る。日本選手権では12度の優勝歴を誇るエース。

仰け反りや捻る動作で要となるのが腹斜筋。

カヌースラロームの羽根田卓也選手は、ドライスーツ越しにも上半身の筋肉の存在感を見て取れる。それもそのはず、圧倒的な力が求められる激流を乗り切るには、それに打ち克つ筋力を鍛錬することが必要条件の一つだ。羽根田選手は自体重トレ、フリーウェイト、マシントレの全てをバランスよくこなしている。

自体重:フリーウェイト:マシンを行う比率は4:4:2くらい。自体重トレはカヌーに直結するコーディネーション能力やバランスを伴う専門的な動きを試したい時に。フリーウェイトで筋肥大、は最大筋力の強化が目的です」

そうして機能性と洗練を兼ね備えた羽根田選手の筋肉が培われた。では、カヌーのパフォーマンスにおいて欠かせない上半身の筋肉とは。

「パドリングは引く動作なので、広背筋などの背中の筋肉はよく使います。ただしカヌーは激流の中という不安定な状況下でバランスを保つことが大切です。つまり広背筋が強いのは前提ですが、腹筋群も当然必要です。特に腹斜筋は仰け反りや捻りなどのダイナミックな動きをするうえで生きてきます」

体幹全体を懸垂で鍛えぬく。

広背筋と腹斜筋と腹直筋、胴まわりの筋肉を360度満遍なく鍛えることで激流に対応できるようになる。

「広背筋を強化するうえで欠かさず行うのは懸垂。カヌーは自分のカラダを引っ張る動作が多く、懸垂の動きに近いんです。高校生の頃からずっとやっているので、懸垂ではそんじょそこらの人には負ける気がしません!(笑)

いろんなバリエーションでやっていて、30〜40kgの重りをつけたり、片手懸垂を行うことも。通常の懸垂の場合の回数ですか? 脚で反動をつければ無限にできますが、毎回丁寧に効かせるなら50回ほど。決してごまかさないで、毎回きれいなフォームでやることが一番大事だと思っています」

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カヌースラローム・羽根田卓也

腰から15kgのプレートを2枚下げて懸垂。

カヌースラローム・羽根田卓也

半球型バランスボールを土台に、両脚でバランスボールを挟んだ状態で超人的な逆さ腕立て伏せ!

背中はもちろん肩まわりの筋肉が大きいのは日々の懸垂の賜物だ。

「確かに肩の三角筋については懸垂と競技の中で強化されたもの。実際激流というのは非常に力が強くて、激流に負けて肩を脱臼してしまう選手はすごく多い。懸垂はそのリスクの軽減にもつながってます」

懸垂をやるのは週2回程度。

「セットで必ず行うのがワイパー。懸垂バーにぶら下がったまま脚を突き上げ、左右に両脚を振る。50往復ほどかな。腹斜筋はもちろん、体幹部の筋力を鍛えるのにも有効です。

懸垂もワイパーも掴まってぶら下がるところがあれば、行う場所を選びません。海外遠征が多いので、“ここでしかできない”種目には僕は頼れない。思い立ったらいつでも行える種目をベースに、その時にいる環境でできることを模索します」

自宅でも工夫を凝らしたトレーニングを実践。

そんなトレーニング観が、羽根田選手のインスタグラムには色濃く反映されている。昨年4月のステイホーム期間にはアブローラーならぬ“雑巾ローラー”中の動画も!

「これ、体幹部強化にすごくいいです。外出自粛期間に入った当初、自宅にアブローラーがなかったんで思いつきまして。アブローラーと同じ要領でフローリングの上に雑巾を滑らせるだけですが、〈傷だらけの床〉×〈乾燥したキメの粗い雑巾〉など、組み合わせによってとんでもなく負荷が上がる。

僕は立ちの姿勢で膝をつけずにやりますが、膝をつけば多少強度を調整できるので、ぜひ。今も家でトレーニングする日は1種目目にやります。というか最初じゃないとキツすぎてできない(笑)」

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カヌースラローム・羽根田卓也

噂の雑巾ローラー。

カヌースラローム・羽根田卓也

ハンマーで爆発的な筋出力を養う。

カヌースラローム・羽根田卓也

ブロックを乗せて腕立て伏せ。

カヌースラローム・羽根田卓也

樽を持ってツイストし腹斜筋トレ。

日頃から固定のメニューを持たないことで、いかなる場でも対応できる柔軟な思考ないし筋肉を育む。

「トレーニング中に限らず、常にカラダのことを考えてますよ。例えばドアを開ける時、肩が上がらないように注意して、肩関節の可動域を意識しつつ小指から引けば、広背筋を刺激できる。

あとは体幹部の筋力はもちろん姿勢のためにも、立っている時も歩いている時も腹圧を高めています。ただお腹を膨らませるのでなく、ボトムスのウェスト部分全体を胴まわりで押すイメージで。普段の生活でも筋肉にプラスの影響を与えることを無意識にやってるのかもしれません」

その積み重ねによりアジアのカヌー界のトップに上り詰めた。そんな羽根田選手が思う、強いカヌー選手に共通する上半身の特徴とは?

「背中がデカくて、腕は筋肉はあるけれどすらっとした印象。腕が長いのでしょうね。服を脱ぐと腹斜筋がぼこっと出てますが、背中や肩の筋肉があるため逆三体型で、スーツが似合う人が多い。ただし僕が好きな着物はもっと腹が太い方が似合うらしいです。それは少し惜しい(笑)」

取材・文/門上奈央 撮影/内田紘倫

初出『Tarzan』No.805・2021年2月25日発売

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