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「鍛え抜いた体幹を土台に四肢を操り、登り切る」クライマー・野中生萌の深彫りボディ

野中生萌(のなか・みほう)/1997年生まれ。2013年、初めて日本代表に選出。16年ボルダリングW杯で初優勝、世界選手権で銀メダルを獲得。18年W杯では年間総合優勝。東京五輪代表内定。

爆発的な力の発揮を担うのは、広背筋。

日本クライミング界をリードする野中生萌選手は、美しい筋肉を持つアスリートとしても話題だ。ファッション性も相まって、憧れるファンが多い。ホールドを摑んだ時に際立つ背中の広さやからにかけての立体的なアウトラインは、日本人選手の中でも群を抜いている。

「日本人選手は細マッチョが多いから、ここまで筋肉が大きい人はあんまりいないかも? 自分で自分の背中を見たことはないのでよく分からないんですけど(笑)、肩まわりは確かにデカいですよね」

と、淡々と自己分析する。

「各国の選手が集まる大会で毎回表彰台に上っているような選手はとにかくガタイがいい人ばかり。女子の場合、成績は筋肉量の差に顕著に表れている気がします。特におへそから上の筋肉が全体的に大きいです。ただ筋肉量は一つの指標で、クライミングでは筋肉をうまく使えるかどうかが一番重要だと思います」

野中生萌

クライミングスタイルは十人十色で定型はない。自分の強みを存分に生かせる方法を誰もが模索しているなか、野中選手は広背筋をフルに使ったスタイルを確立している。

「今でこそだいぶ強化されましたが、昔はホールドを摑む力(保持力)が弱かった。保持力が強ければ腕で全身を支えられますが、私は末端の弱さを広背筋などの強さでカバーしながら登るという戦法です。

スピードという種目では、爆発的な筋肉の出力が求められる『トモア・ステップ』という登り方がありますが、広背筋などの大きい筋肉が発達しているからこそ十分に力を発揮できるんです」

とはいえ広背筋強化のためにウェイトや器具を使って鍛えたことは一度もないというから驚きだ。

「クライミングは重力に逆らうスポーツなので、それが体脂肪であれ筋肉であれ、重すぎるのはよくない。広背筋に関しては壁を登るなかで培いました。

脇の下に位置する大円筋や肩の三角筋もそう。大円筋は肩関節の動きに関わるインナーマッスルですが、壁の上方に向かって登っていく際、ラットプルダウンのように上から下に引いていく動作が基本なので強化されたのかと。

クライミングは360度さまざまな角度でホールドを摑むので肩に無理をさせがちなんです。練習のしすぎで肩を故障し、補強のために重点的に鍛えていた時期もありました」

野中生萌

基本的には競技を通して筋力強化が叶うが、東京五輪に照準を定め、今年1、2月は筋トレを週1日から2日に増やした。

「メインは体幹部の筋肉の強化です。体幹がしっかりしていて、手足は自由に動かせるのが理想。体幹部の筋肉が弱ければ、力を末端にうまく乗せられません。活用しているのは《フローイン》というギア。表面が滑性加工された独自のシートの上で、手・足・膝などを滑らせます。今の私には筋肉を大きくする作業は必要ないですが、不安定な姿勢に耐えるための筋力強化は必要です」

クライミングウォールのホールドは同じ練習場においても随時配置換えされる。あらゆる状況に対応できる柔軟性が筋肉にも要求されるのだ。

野中生萌

コンディショニングも重視しています。大会だと手のひらに収まらないサイズのホールドがあるし、カラダを自力で支えながら登るので、変な体勢になることが多くて(苦笑)。筋肉を痛めやすいので、コンディショニングについて四六時中考えてます。

ストレッチはもちろん、登っている最中から回復について配慮し、練習後は次のトライまでに回復させるのを最優先にする。疲労を感じたら、タンパク質として鮭のおにぎりなどを食べます。あとは42度ほどの湯船に1時間ほど浸かったり……」

また、野中選手はとにかく練習熱心だとスタッフが教えてくれた。

「長いオフでも1週間休むことはありません。3日休むと感覚が結構変わるので、本当に疲れている時は2日休んで、でも3日目にはジムに行っちゃう。だから筋力が落ちるかもと不安になったことはないですね」

取材・文/門上奈央 撮影/山城健朗

初出『Tarzan』No.805・2021年2月25日発売

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