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スポーツクライミングの野中生萌が、11月9日に三重県・熊野市で開催されたボルダリングコンペティションの決勝戦「レッドブル・ アシュラ」にゲスト参加。2020東京五輪の正式種目として採用されて注目を集めるこの競技に、予選を勝ち抜いた一般参加者とともに挑んだ。
通常は交通の便がいい都市部に会場を構え、人工的な壁を設営して行うボルダリング競技。しかしこの日は紀伊半島の山岳地帯に巨岩が林立する自然の岩場が舞台となった。
「毎年このイベントが1年ぶりになっちゃいます」と、世界選手権やワールドカップを連戦する野中にとっても、天然の外岩を登るのはあまりない機会だという。
「朝の光を浴びながら、山の中でのびのびとクライミングをするのは気持ちいい。原点に戻った感じがします。
人工壁だと持つ部分が飛び出ているので分かりやすいし、やることも明確なんですけど、岩場だとくぼみや突起物のその人の選択によって上り方が異なってくる。
どこを持ってもどこに足を置いてもいいので、それを見つけるのも面白いところだし、逆にそれが難しいです」
会場となったのは三重県・熊野市駅からクルマで50分ほどのボルダリングエリア。外岩に挑む一般参加型のボルダリング大会で、野中自らが発案したという。3人1組のチーム形式で行い、宮城、東京、長野、名古屋、大阪、福岡で予選を開催。予選に参加した309チームから勝ち上がった17チームが参加した。
「競技のクライミングだけでなく、色んな大会があることを、できるだけ多くの人に知ってもらうことが狙いです」
2020東京五輪種目にも採用されて競技志向が高まっているところに、「もっと楽しいクライミングもあるよね」という部分を広げていきたい。これが野中の想いだ。セッションにちょうどいい人数の3人を1チームに、必ず女性を入れるというルールも作った。
「どんなルートを選ぶのかに正解はなくて、登れたらいいんです。自分のスタイルを出せるのがクライミングだし、男女の体格差に関係なく岩を登れるのもクライミング。そこによさが詰まっている。
少しずつ攻略をしていくという、上れるまでの過程があるのも醍醐味ですね。もちろん登れたときの達成感も最高です」
大会は3年目。毎年エリアが変わるほど、この熊野の奥地にはたくさんの岩がある。自然の岩なので、崩れることもある。自然と対話し、それを判断していくのも重要。そのスリルを感じるのもワクワクするという。
「私はパワー系なので、それを生かして上るのが自分に合っている。筋力のない選手はテクニックがあったりして、力じゃないところで登っていく」
「だから楽しいんです」と、いたずら気味の笑顔で答える。
レベルアップを目指す一般クライマーへのアドバイスを訊ねると、頭の中に思いを巡らせながら真摯に答えてくれた。
「なんだろう? なんですかねえ? けっこう気合いの部分は正直あると思いますね。ポイントはたくさんあると思うんですけど。諦めないことだと思います。登っていて限界を決めないことだと思います。
“これは無理かも…”と思っても意外と(気合いで)いけたりするので、そういうトライを重ねていくことが大事だと思います」
2020東京五輪への採用やテレビでの世界選手権放映などで一気にメジャーとなり、初めて挑戦しようと思っている人も増え、手応えを感じている。いろいろな人に気軽にやり始めてほしいと背中を押す。
「まず何も持っていない状態でいいので、クライミングジムに行けば大丈夫です。動ける格好だけでいいです。
シューズもチョークもジムで借りられるので、楽しむために行ってもらえればいいと思います。気軽に始められるのもクライミングの良さなんです」
競技者として伸び盛りである22歳の今、2020東京五輪が開催される。それはまさに絶好の巡り合わせだ。
「まさにその通りです。今、いいタイミングで五輪が開催され、しかも都内出身の私にとって地元である東京開催。これ以上のチャンスはないと思っているので、この機会を掴みたいと思いますね。悔いのないように頑張りたい。メダルを絶対に取りたいです」
ゲスト参加の野中とともに、一般クライマーもみなクライミングコンペティションを心から楽しんでいた。2年前の第1回に参加したという京都の学生、田中智朗さんと橋本亞華子さんは今回、大会前に現地入りし、設営にも参加した。
「トップクライマーの登り方を見て、とても興味深く感じました。そんな選手たちを東京オリンピックでは全力で応援したいです」(田中さん)
「人工壁ではない自然の岩を上るのも、3人でチームを組んで頑張るのもこの大会ならではの魅力。他のクライマーがどんな上り方をするのかを見るのも新鮮です。とりわけ地元となる熊野のクライマーが中心となって岩を磨き、愛情を持って作ったエリアを楽しむのが好きです」(橋本さん)
外岩の魅力はかつては縁遠かった一般クライマーにも広がっている。2020年の東京五輪開催の前に、まずは手軽なジムから、そしていつかは“気持ちのいい外岩”を目指してスポーツクライミングを始めてみるのはいかがだろうか?
取材・撮影・文/山口和幸