カッとなったら6秒数える。ストレスと上手に付き合う裏ワザ集。

ココロの元気もなくなりがちな更年期。日々のストレスはテストステロンを着々と削る。ついイライラしてしまう状況を上手にかわすコツと、ストレスを溜めない考え方を身につけよう。

編集・取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/加納徳博

初出『Tarzan』No.907・2025年7月17日発売

覚えておきたい日々のアイディア
教えてくれた人

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)/米イリノイ大学精神科に留学後、樺沢心理学研究所を設立。メンタル疾患を防ぐ医学情報をYouTubeなどで精力的に発信している。『精神科医が教える ストレスフリー超大全』など著書多数。

不安や怒りをその場で解きほぐす方法。

仕事や対人関係などのストレスでもし感情に流されそうになったら、即効性のある対処法で乗り切ろう。

1.笑顔で背すじを伸ばす。

 笑顔で背すじを  伸ばす。

緊張や不安を感じたらまず、姿勢を正してニッコリ笑おう。

「緊張している人は必ず、前かがみの姿勢で表情も硬直しています。実は姿勢にもセロトニンの働きが関与し、あえて背すじを伸ばし、笑顔を作るだけでさまざまな幸福物質が活性化。不安や緊張をコントロールして消し去ります」。

2.怒りを抑える6秒ルールと40秒ルール。

怒りを抑える6秒ルールと40秒ルール。

「脳科学的に見ると、怒りはアドレナリンによって交感神経が興奮した状態。怒りの発生から6秒後に分泌のピークを迎えるため、頭の中で1〜6までゆっくり数えてやり過ごせば冷静さを取り戻せます」

アドレナリンの効果が激減する半減期は、さらに20〜40秒後。興奮した自律神経を深呼吸などでリラックスさせつつイライラ感を鎮めよう。

3.マインドフルネスの「4・4・8」深呼吸。

マインドフルネス 4・4・8深呼吸

強い不安や緊張を感じたら、“今ここ”に集中するマインドフルネス的な効果とともに、即効性のある緩和法として、ぜひ覚えておきたい呼吸法。

「ハーバード大学・ソルボンヌ大学の根来秀行教授が提唱する方法。鼻呼吸で息を吐き切り、4秒吸う・4秒止める・8秒吐く、を4回繰り返すと気分が落ち着きます。寝つきが悪いときにもおすすめ」

溜まったストレスを発散する行動。

ネガティブ感情を引きずらず、うまく手放すコツを知ればストレスフリーな人生に。

1.抱えているストレスについて人に話す。

話す

悩みや不安も誰かに吐き出すだけで、頭の中が整理されてストレスは軽くなるもの。

「気心の知れた人と直接会って話せば、つながりと愛の幸福物質・オキシトシンも分泌されます。ただし緊張する相手に相談するのは、ノルアドレナリンが分泌されて逆効果に」

悪口はクセになりやすい! 吐き出すのは1回までに。

悪口が楽しいのは、快楽物質のドーパミンによるもの。さらに怒りで分泌されるアドレナリンは、強力な記憶増強物質でもある。繰り返すうちコルチゾールの分泌が増え、むしろストレスを増やすハメになるので注意。

2.自分自身のストレスを紙に書く。

書く

「“書く”ことは自己洞察力を高め、ストレスを発散する強烈なアウトプット。ポジティブ思考を鍛える精神医学のワークとしても広くその効果が認められ、しなやかで折れにくいココロを育みます」という。ただし書くのはスマホやPCでなく、必ず手書きにしよう。

有効な記録方法。

●3行ポジティブ日記

記憶が最も強く残る就寝15分前以内にその日の楽しかった・嬉しかった出来事を何でも3つ書き出し、その内容をイメージしながら眠りにつく。短くても毎日続けると、1週間でも効果を実感できるという研究報告が多数。

●時間差で感情を客観視する

“嫌な出来事”で生じた感情をひたすら書き出す。いったんノートを閉じて10〜30分置いた後、カウンセラーになったつもりで自分への客観的なアドバイスを書き込むことで「事実」と「感情」を切り離せるように。

心の疲れをリセットする習慣。

日々のちょっとした時間で幸せを感じたり、疲れを積極的に取り除いたりすることが、ストレスを溜めない・持ち越さないコツ。

1.豆苗ガーデニングをする。

豆苗ガーデニング

“つながり”“他者貢献”などで幸福感をもたらすオキシトシンは、植物を育てることでも分泌できる。

「おすすめはビタミン類も豊富な豆苗。カットして食べたら根を容器に入れて水耕栽培すると繰り返し収穫できます。植物の成長を愛おしく見守りハッピーな気分に」

2.青空の下で30分過ごす。

青空の下で30分

「自然に触れることは、即効性のある最強のリラックス法。セロトニンを活性化して副交感神経を高め、癒やし物質のエンドルフィンも分泌されます。昼休みに、青空の下で30分過ごすだけでも、太陽の光をしっかり浴びてセロトニンのチャージが可能に」

3.音読する。

.音読する

音読は脳の前頭前野の血流を促し、セロトニン神経を活性化する。

「深呼吸と同様に、吐く息を意識してリズミカルに発声するのがコツ。読むのは“アイウエオ、アイウエオ”など、なるべく意味のない文字列の方がいい。お経を読むというのもひとつの方法です」

4.マッサージを受ける。

マッサージを受ける

オキシトシンにはコルチゾールを減らして不安をやわらげ、副交感神経を優位にする働きがある。

「家族や仲間、ペットとの交流、スキンシップなどで分泌され、マッサージでも同様の効果が。ただし施術者は、信頼できる・安心できる相手であることが必要です」

5.中国茶・緑茶を飲む。

中国茶・緑茶

「リラックス効果のあるテアニンや抗酸化成分、ビタミン類も含む中国茶や緑茶は、いわばメンタルにいい“飲むサプリ”。しかもカフェインは1杯目でほぼ抽出される一方、茶葉にお湯を足せばテアニンなどは繰り返し摂取可能。睡眠を妨げる心配がありません」

6.高カカオチョコレートを食べる。

高カカオチョコレート

疲れると、無性にチョコレートを食べたくなるのには理由がある。

「癒やしと多幸感をもたらすエンドルフィンの濃度や身体的ストレスへの抵抗力が、カカオポリフェノールで高まるというラットの実験報告も。疲労回復やストレス解消には高カカオのものを選んで」

7.サウナに行く。

サウナ

「高温のサウナでは、快感を刺激するドーパミン、鎮痛作用のあるエンドルフィンが分泌されます。続く冷水浴の後に訪れる深いリラックスによって、ストレスで優位になりがちな交感神経が副交感神経へと強制的に切り替わり、疲労回復やメンタルの癒やしに」

8.寝る前のプチ絶食。

寝る前のプチ絶食

「寝る前の食事や間食は、まさに百害あって一利なし。血糖値が高いまま寝ると肥満を招くだけでなく、質の高い睡眠にマストな成長ホルモンの分泌が減り、心身の疲労回復効果が著しく悪化します」

“食事の門限”は少なくとも寝る2〜3時間前まで、としておこう。