世界中で親しまれる「フェンネル」を使った、南イタリア定番のパスタと、茎そのもののお香。

すでに世界中で広く活用されている植物であっても、新しい可能性を探す。〈ハーブ・スタンド〉の平野優太さんが続けている試みは、人と植物との関係性を問い直すものかもしれません。植物との付き合い方について教えてもらう連載「ワンモア・ハーブ」第10回は、ハーブとしての古い歴史を持つ、フェンネルについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海

フェンネル

日本では茴香(ういきょう)と呼ばれるフェンネルは、地中海沿岸が原産と言われ、ヨーロッパでは料理に欠かせないハーブです。人類の歴史の中でもかなり古い時代から栽培されてきたよう。一年生植物のようにも見えますが、多年草で毎年1メートルほど成長します。

主な種類は3つ、大きく育つ根っこ部分を食用にする「フィノッキオ」や、根が大きくならないが香りや甘みの強い「スイートフェンネル」、綺麗なブロンズ色が特徴の「ブロンズフェンネル」と、それぞれ風味や特徴が異なります。基本的にはどのフェンネルも魚料理と合わせることが多いですが、そのままサラダのように食べても、火を入れてパスタと絡めても、フルーツと合わせても美味しく万能なハーブの一つです。

葉っぱや根だけではなく、花も美味しい。いわゆるエディブルフラワーとしての人気も高いんですが、蕾の状態も独特の食感と濃縮されたような甘みがあります。フェンネル・シードはスパイスとして知られていますね。今回使ったスイートフェンネルは、特に甘みが強いので、アニスを思わせるスパイシー感もある。余すところなく使うことができる、すごくポテンシャルが高いハーブです。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
鯵とフェンネルのパスタ

ー材料ー(4人前)

・鯵 2尾
・タマネギ 80g
・ウイキョウの葉 120g
・トマトジュース 1缶
・干レブドウ 40g
・白ワイン 30ml
・砕いたアーモンド 20g
・フェンネルシード 2g
・ニンニク 一片
・塩 適量

ー作り方ー

フェンネルの葉を食べやすいサイズにカット。

鍋に湯を沸かし、塩ひとつまみを加え、フェンネルの葉を柔らかくなるまで茹でる。

ニンニクとオリーブ油を熱し、みじん切りにしたタマネギ、フェンネルシードを炒める。しんなりしたら、甘みのための干しブドウ、コクを出すためのナッツ、茹でたフェンネルの葉、トマトジュースを入れる。

三枚におろし、一口大に切った鯵を加えて、塩、コショウ。

白ワイン、フェンネル、そして煮汁も注いで沸かし、アクを取りながら1時間ほど煮込む。

茹でたスパゲッティをソースと絡め、皿に盛った後にフェンネルの花を散らして完成。

青魚とフェンネルを使った、南イタリアのパスタソースの定番です。今回は鯵をチョイスしました。フェンネルの新芽は柔らかく、そのまま食べられるのですが、硬くなってくると口に残るので下茹でするところから。その茹で汁には、しっかりと味が移っているので出汁として使いたい。それがソースのベースとなります。

●「使う」
フェンネルの茎のお香

―材料―

・フェンネルの茎

適当なサイズにカットした茎に、火をつける。高い温度で一気に燃やしてしまうと焦げた香りになってしまうため、少しずつ、ゆっくりと。しばらくは火が着いている。

枯れて残る茎部分も何かに使えないかと、色々試してみました。燃やした時の香りが燻製にすごく適していたので、そのままお香として使ってもいい。スティックタイプなので、ただ火をつけるだけ。調べてみるとフェンネルの香りには殺菌作用もあるので、空間の浄化としても使うことができます。

ただ、市販のお香のような華やかな強い香りが出るわけではありません。植物そのものを燃やした香りは、いわゆる香料に比べるととても素朴。強い直火で焦がすのでなく、優しく加熱していく事がポイント。グリルする際の焚き付けにもピッタリで、燻製したりとお料理にも活用できます。

8月のハーブスタンドの様子

8月に入り、徐々に夏キノコが出始めました。一足早い富士北麓の秋に向け、果実も徐々に熟し始めます。