庭木の針葉樹「コニファー」は、山椒と柑橘が香る食材に。涼やかな豆腐プリンと茶香炉の作り方。|7月のハーブ・コニファー

園芸種や食用と言った区分ではなく、「植物」として見た時に、どんな可能性があるのか。〈ハーブ・スタンド〉の平野優太さんは、さまざまなテストを繰り返しながら、魅力を探求しています。植物の新しい可能性の一端を紹介する連載「ワンモア・ハーブ」。第9回は、街中でも見かける身近な植物、コニファーについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海

コニファー

コニファーとは主に、ガーデニングや園芸に用いられる針葉樹を指します。非常に種類が多いのですが、食材としてのポテンシャルは今まで探求されてきませんでした。今回はそのポテンシャルの一端をご紹介します。

今回の料理で使った「ゴールドクレスト・ウィルマ」も、ホームセンターに並んでいるような一般的な品種です。今までは園芸用に親しまれてきた植物ですが、その香りを嗅いで衝撃を受けました。実はとても香りがよく、山椒のような素晴らしい柑橘香があったんです。

強く香りが感じられるので、いろんなシェフに食材として紹介したのですが、使用の前例が無いためか最初は誰も使ってくれませんでした。しかしある方が「コンブチャ」の香り漬けの原料として使い始めると、それから人気が出始め、今では食材として生産、出荷する農家さんが僕たち以外にも出てきているくらいに。

他にもコニファー(針葉樹)には様々な種類があります。日本の固有種である「コウヤマキ」は、少しビターなシトラス系と山菜のような濃厚さ、生垣でも良く使われている「ビャクシン」は、お酒のジンに使われる「ジュニパーベリー」の仲間で、爽やかな森林香があります。花粉症の原因として嫌われ者のスギも、実は新芽や果実からは青リンゴのような素晴らしい香りがする。ヒノキの若葉は、噛むとスパイスのようで、カルパッチョの薬味に使ったり、食材として活用できたりと、その他も品種ごとに違った魅力があります。

コニファーは、葉の形状が似ているために、園芸種として一括りにされがちですが、実はそれぞれ特徴がまったく違う。個性を引き出して味わう、その面白さを提案することが、僕らの役目だと思っています。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
ゴールドクレスト・ウィルマの豆腐プリン

ー材料ー

・豆乳 150g
・生クリーム 50g
・豆腐 100g
・グラニュー糖 38g
・ゼラチン 4g
・ウィルマ 15~20g
※仕上げに オリーブオイル、塩

ー作り方ー

豆腐をミキサーに入れてペースト状にしておく。板ゼラチンを水で戻しておく。鍋に生クリーム、豆乳、グラニュー糖、ゴールドクレスト・ウィルマを鍋に入れる。

ハーブの香りが移るように弱火で火にかける。

沸々としてきたら、ペースト状にした豆腐も加え、さらに極弱火にして2分ほど火にかける。

水で戻したゼラチンを合わせ、濾しながら容器に入れて、冷蔵庫で半日~1日冷やして完成。

仕上げにオリーブオイル、塩をかけても美味しい。

山椒や生姜の様なスパイシーさと柑橘の爽やかな香り、どちらも併せ持った「ゴールドクレスト・ウィルマ」の香りを楽しむために、ごくシンプルな豆腐プリンを考えました。豆乳、生クリームと一緒に煮出して香りを移し、それをゼラチンで閉じ込めたもの。とても爽やかなデザートです。

●「使う」
コニファーの茶香炉

―材料―

・乾燥したコニファー(今回はヨーロッパゴールド使用)を好みの適量(今回は5g程)

ロウソクに火をつけて、受け皿を温める。コニファーの葉を受け皿に乗せると、香りが立つ。

茶香炉は、下から火で炙る道具なので、香りが優しく広がるイメージかと思います。今回使った「ヨーロッパゴールド・ドライブ」というコニファーは、料理に使うには香りが強すぎるくらいなので、茶香炉にちょうど良く、しっかりとした香りを届けてくれます。まるで空間を浄化するような爽やかさです。茶香炉は手軽に植物の良さを引き出すことができる、誰でも始めやすい道具だと思います。

7月のハーブスタンドの様子

いよいよ本格的な夏の気温となりました。アブラチャンや黒文字、山椒、山葡萄など様々な青み果実が実りだし、秋に向けて徐々に熟しながら色づきます。この時期の青み果実は、ピクルスなどの酢漬けやシロップ、漬け込みなど様々な方法に活用できます。