アマニ油VSエゴマ油。コレステロール対策に効くのはどっち? 

コレステロール・血糖・血圧対策に効果的なオメガ3脂肪酸を豊富に含む食材といえば、アマニ油とエゴマ油だ。「カラダに良い」と話題の両者だが、結局どっちを選べば良いのだろうか? それぞれの効能と、より効果的に摂取する方法を紹介。

取材・文・編集/大田原 透 撮影/石原敦志 

初出『Tarzan』No.898・2025年3月6日発売

コレステロール対策に効く亜麻仁油・エゴマ油
教えてくれた人

工藤孝文(くどう・たかふみ)/内科医。福岡県みやま市の工藤内科で地域の医療に従事しながら、テレビなどのメディアでも医療情報を発信。この春から、東京都内に拠点となるクリニックを開設予定。

河村玲子(かわむら・れいこ)/トレーナー、管理栄養士。カラダ作りを、フィジカル面とニュートリション面の両面からサポート。本企画では、栄養学に基づく監修と、レシピ考案と料理製作も手掛ける。

コレステロール・血糖・血圧に深く関係するオメガ3脂肪酸。

「オメガ3脂肪酸は、私たちのカラダにとって必要不可欠な栄養素です。カラダの中では作ることができず、食事から摂る必要があるからです」

と語るのは、テレビなどでの医療情報発信でお馴染みの内科医、工藤孝文先生。

注目のオメガ3は、青魚やナッツ、アマニ油やエゴマ油などに多く含まれている。

「生活習慣病の指標となるコレステロールや血糖、血圧に、オメガ3は有用な効果があります。オメガ3は、血管中の“悪玉(LDL)コレステロール”の過剰な合成を抑え、“善玉(HDL)コレステロール”を増やすため、血流がスムーズになります。また、中性脂肪も減らすので、心血管疾患の予防につながります」

オメガ3が体内で過剰な「悪玉コレステロール」の合成を抑える。

オメガ3が体内で過剰な「悪玉コレステロール」の合成を抑える

オメガ3のアマニ油の摂取を続けることで、血中のいわゆる「悪玉(LDL)コレステロール」を下げる効果が期待できる。

※Kawakami et al. Nutrition Journal(2015)14:39 より抜粋し改変

オメガ3が注目される理由は、コレステロール対策だけではない。

「血糖値に関しても研究が進んでいます。オメガ3は、炎症を抑える効果があるため、インスリンを正しく効かせることが期待できます。これにより、糖尿病の発症リスクが低下する可能性があるのです。一部の研究ですが、オメガ3は血糖値の上昇を抑え、血糖コントロールに寄与することが示されています」

となると、血圧にも?

「はい。オメガ3は“悪玉コレステロール”を減らし、血栓を予防するので、血圧対策にも役立ちます。オメガ3の分子は、折れ曲がった構造をしています。そのため、細胞膜を構成するリン脂質の間でクッションのような働きをするので、血管の柔軟性が高まって動脈硬化が生じにくくなり、血圧が下がることが期待できるのです」

コレステロールや血糖、血圧のどれかひとつでも気になれば、積極的にオメガ3を摂っておくべき、ということか。では、どんな食材から摂取すれば良いのだろうか?

「そもそもオメガ3脂肪酸は、3つに分類されます。ひとつはα—リノレン酸で、エゴマ油やアマニ油などに多く含まれ、血中の中性脂肪値を下げる働きがあるといわれています。ふたつ目は、EPA(エイコサペンタエン酸)で、青魚の脂などに多く含まれ、血液をサラサラにして血栓を予防する働きがあります。さらに青魚の脂などに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳や神経の発達に関連があるといわれています」

体内では作ることのできない必須脂肪酸オメガ3含有量TOP5
  1. アマニ油、エゴマ油
  2. アマ、エゴマ(種実類)
  3. タラの脂
  4. チアシード
  5. クジラ(本皮・生)

オメガ3を多く含む食品は、アマニ油とエゴマ油が断トツ! 番外ではあるが、アジやイワシ、サバなどの青魚にも含まれる。

※100g当たりの含有量 文部科学省「食品成分データベース」

アマニ油やエゴマ油で、オメガ3を習慣化。

工藤先生によると、厚労省が摂取目標とするオメガ3は、1日2g(厚労省「日本人の食事摂取基準」2020年版)。目安として1日にアジ3匹を食べる計算だ。ただ、頻繁に自炊する人でも毎日アジ3匹はなかなか難しい。

「EPAやDHAサプリメントの摂取も考えられますが、注意したいのは、体内ですぐに分解され、排出されてしまう点です。一方、アマニ油やエゴマ油に含まれるα—リノレン酸は、肝臓に貯蔵できて、必要に応じてEPAやDHAに分解が可能。しかも、アマニ油やエゴマ油であれば、1日小さじ1杯を好きな料理にかけるなど、手軽に取り入れられます」

α-リノレン酸であれば、肝臓に貯蔵して、EPA、DHAに分解可能

アマニ油やエゴマ油に豊富なオメガ3のひとつであるα-リノレン酸は、EPAやDHAのようにすぐに分解、排出されず、貯蔵が可能だ。

では、アマニ油とエゴマ油、どっちが効くのか?

「アマニ油とエゴマ油は、どちらもα—リノレン酸を豊富に含み、コレステロール対策や心血管の健康に役立つ植物油です。栄養には大差はなく、いずれも小さじ1杯で1日分のオメガ3が摂れると思ってください」

医学的な観点では、アマニ油とエゴマ油の甲乙がつけがたいということか。

「スーパーなどでの手に入りやすさ、という点だと、どちらかというとアマニ油がより手に入りやすいと思います。なお、アマニ油やエゴマ油を使ったマヨネーズやドレッシングなど、普段使う調味料にオメガ3を配合した製品も市販されています。そうした製品だと、無理なくオメガ3を暮らしに取り入れられると思います」

工藤先生は、普段使っている植物油を、賢くアマニ油やエゴマ油に置き換えることを薦めている。

ということで、アマニ油VSエゴマ油の第2ラウンドは「実践編」。勝つのはアマニ油とエゴマ油、どっちの油か!?

見た目はシソにそっくり、韓国料理の定番、エゴマ!

葉はもちろん、花や実もシソにそっくりのエゴマ。事実、エゴマはシソ科で、アフリカ原産のゴマ(ゴマ科)とは、種の使い方と名前が似ているだけで科目が異なる。

日本では縄文時代から栽培されてきたが、独特の風味のため、常食する地域が限られてきた。しかし、韓国料理がポピュラーになるに従い、最近ではよく見かけるようになった。

日本でも育つアマ、種を搾るとアマニ油に。

アマニ油の原料となるのは種で、アマ(アマ科。漢字では亜麻)の茎は丈夫でさらっとした布地であるリネンの原料となる。

古代から中東やユーラシア大陸の西側で、現在は世界中で栽培されている。日本での栽培地は北海道と長野県の一部。光沢のある上質なアマ糸は、「亜麻色の髪」の比喩表現に用いられてきた。

アマニ油VSエゴマ油。勝敗はいかに?

メジャーなα-リノレン酸たち

もはやメジャーなα-リノレン酸たち。スーパーの油コーナーにズラリと並ぶ、最近定番のアマニ油とエゴマ油の顔触れ。いずれも酸化しやすいため、初心者や一人暮らしの方は、小さなボトル選びから始めよう。

次なるジャッジは、トレーナーにして管理栄養士の河村玲子さん。

「対決前に押さえておきたいのは、大前提として、アマニ油やエゴマ油を含めた不飽和脂肪酸の摂取を増やし、動物性の脂などの飽和脂肪酸を減らすことです」

加えて河村さんは、不飽和脂肪酸の中身も重要だと語る。

「不飽和脂肪酸には、オメガ3だけでなく、オリーブオイルなどのオメガ9、大豆などに含まれるオメガ6もあります。それぞれ植物性の食品に多く含まれますが、異なる働きをします。動脈硬化の原因にもなる炎症を抑えるオメガ3とオメガ6の理想的な摂取比率は、1対4。でも、日本人の現状は、1対5といわれています」

α-リノレン酸を多く含む植物油の脂肪酸組成

アマニ油vsエゴマ油。期待したいα-リノレン酸の含有率の勝負では、エゴマ油がわずかにリード。含有率で選ぶか、相性で選ぶか、さらに迷うところだ。

オメガ3を積極的に摂る理由は、この比率を理想に近づける、まさに近道なのだという。

「植物性の食品の多くは、高い比率でオメガ6を含んでいます。なので、意識してオメガ3を摂らないと、この比率は変わりません。工藤先生が話されていた、肝臓に貯蔵されたα—リノレン酸を必要に応じてEPAやDHAに分解する酵素の働きを上げるためにも、オメガ3の比率を高めたいです」

アマニ油とエゴマ油のストロングポイントは、それぞれ下記の通り。つまり最終的に決めるのは、毎日取り入れる、あなたの“好み”ということだ。

エゴマ油|α-リノレン酸に加え、ビタミンEも豊富。

エゴマ油には、強い抗酸化作用を持つビタミンEが多く含まれる。市販の製品は、無色で無味無臭なものから、ほのかにエゴマの香りがするタイプまでさまざま。

韓国系はもちろん、総じてアジアの料理との相性が良く、春菊のサラダや、冷や奴にもオススメと河村さん。なお、エゴマの葉もα-リノレン酸が豊富だ。

アマニ油|ビタミンKも含む、入門者向きのオメガ3。

アマニ油には、カルシウムの吸収を助けて、骨密度アップにも役立つビタミンKも含まれている。市販のアマニ油は、無色で無味無臭のものから、ナッツを思わせる香りのあるタイプなどさまざま。

ディップやカルパッチョに加え、洋風のサラダ、冷製パスタや、豚汁のコクを増すのにアマニ油を使うのも河村さんのオススメだ。

アマニ油&エゴマ油をより効果的に使う3つのポイント。

なるほど、アマニ油やエゴマ油なら、無理なく始められそう。ただ、α—リノレン酸は、熱に弱く酸化しやすい特性もある。より効果的にオメガ3を摂取するにはコツが要る。

1.調理(加熱)に用いない。

オメガ3は熱に弱いので、炒め物などには適さず、できた料理にかけるのが基本。まずは「置き換えることから始めてほしい」と河村さん。例えば、カルパッチョにかける油をオメガ3にちょいと替えるなどだ。

2.タンパク質と一緒に。

オメガ3は、タンパク質と一緒に摂ることで吸収効率がアップ。肉や魚の脂身を取り除き、調味料とオメガ3を後がけしたり、プロテインをシェイクする際に加えるなど、タンパク質と組み合わせてちょいと賢く取り入れたい。

3.ちょいちょい継続的に摂る。

オメガ3は、1日小さじ1杯を目安に、ちょいちょいこまめに摂るのが基本。今回紹介したハーブオイルや、ディップ(パプリカもいいが、ナスも美味しい! )など、今までのオイルと置き換え、継続して習慣にしたい。

アマニ油&エゴマ油を使った簡単レシピ3選。

白身魚のハーブオイルカルパッチョ

白身魚のハーブオイルカルパッチョ

材料(1人分)

  • ハーブオイル
    ・アマニ油…150mL
    ・ディル…1/2パック
    ・ニンニク…6片
  • 白身魚(真鯛など)…1/2柵
  • ベビーリーフ…1摑み
  • ラディッシュ…1個分
  • 塩…少々
  • レモン、レッドペッパー…お好みで

作り方

  1. ニンニクは皮を剝き、包丁で叩いて潰す。ディルは洗ってよく水気を切る。
  2. 瓶に1を入れ、アマニ油を注ぐ(冷暗所で保管し、早め[1週間以内]に使い切る)。
  3. ラディッシュを薄切りにし、ベビーリーフとともに皿に盛り付ける。
  4. 白身魚(真鯛など)を切り、3の皿に並べる。
  5. 2のハーブオイルを小さじ2杯分回しかけ、塩を振る。お好みでレモン、レッドペッパーをあしらう。
焼き野菜のアマニ油ディップ乗せ

焼き野菜のアマニ油ディップ乗せ

材料(1人分)

  • パプリカ…1個
  • ニンニク…1片
  • アマニ油…小さじ2
  • アンチョビペースト…3cm分
  • パセリ…お好みで
  • 塩…少々
  • パン…2枚
  • ツナ水煮缶…1缶

作り方

  1. パプリカをへたごと半分に切り、切り目を下にしてホイルに乗せる。ニンニクもホイルに乗せ、オーブントースター220度で20分ほど、焦げ目がつくまで加熱する(ニンニクは10分ほどで取り出す)。
  2. パプリカをオーブントースターから取り出し、粗熱が取れたら皮を手で剝き、へたと種を除く。
  3. 2をニンニクとともにみじん切りにし、アマニ油とアンチョビペースト、塩と合わせる。
  4. パンにツナ水煮と3のアマニ油ディップを乗せる。お好みでパセリをかける。
エゴマそば(マッククス)

エゴマそば(マッククス)

材料(1人分)

  • 日本そば…1人分
  • 【A】
    ・エゴマ油…小さじ2
    ・醬油…小さじ2
    ・酢…大さじ1
    ・おろしニンニク…少々
  • 【B】
    ・韓国海苔…適量
    ・焼豚…3枚
    ・茹で卵…1/2個
    ・春菊、キムチ、エゴマパウダー…各適量

作り方

  1. 日本そばは表示通りに茹で、冷水で冷やし、しっかりと水気を切る。
  2. ボウルにAを合わせ、1の日本そばを入れて和える。
  3. 2を器に入れ、Bを乗せる。