
教えてくれた人
山田 悟(やまだ・さとる)/北里大学北里研究所病院院長補佐、糖尿病センター長。慶應義塾大学医学部卒業。日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医。カロリー制限中心の食事療法から、緩やかな糖質制限食への大転換を図るパイオニア。医学博士。
目次
1.ピーナッツは薄皮付きのまま20粒。
ハーバード大学が約12万人の食生活を分析し、死亡率を下げる意外な食品を見つけた。ピーナッツだ。
「なぜなら血圧を下げるから。ピーナッツを毎朝20粒食べてもらう実験で、3〜4週間後に収縮期血圧が8mmHg下がりました。8gの減塩と同等の成果です」(渡辺先生)。
ポイントは無塩のピーナッツを薄皮ごと食べること。薄皮のレスベラトロールというポリフェノールが、血管をしなやかにして降圧パワーを発揮する。よく話題に挙がるレモン汁や納豆に比べると「そのまま食べるだけ」だからこそお手軽。
2.サラダには大さじ1杯のレモン汁。
カロリーを気にして和風ノンオイルドレッシングを愛用している人は多い。でも、和風ドレには大さじ1杯で1g程度の塩分が含まれる。野菜サラダにかけるなら、大さじ1杯(15ml)のレモン汁を。爽やかな酸味で美味しく食べられるし、レモンに豊富なクエン酸が血管を弛緩させて血圧を下げることも期待できる。
県立広島大学らの5年間の追跡調査によると、レモン1個分の約30mlのレモン果汁を毎日飲むと、収縮期血圧も拡張期血圧も下がったという。
3.納豆には酢をかける。
納豆は天然の降圧薬。ナトリウムを排泄するカリウムを含むほか、ポリフェノールのイソフラボンが血管を広げて、ナットウキナーゼという酵素が血液をサラサラにして高血圧を防ぐ。
唯一、タレに塩分と糖質を含んでいるのが難点。代わりにかけたいのは酢。「食酢の主成分である酢酸が体内で代謝される際に生じるアデノシンが血管を広げ、高すぎる血圧を下げます。ナットウキナーゼは熱に弱いので、熱々のご飯に納豆をかけて食べるのは控えましょう」。
ビネガードリンクで血圧ダウン。

血圧が高めの男女64人に食酢を約15ml(酢酸750mg)含む飲料100mlを毎朝10週間摂ってもらった結果、プラセボ群に比べて収縮期血圧も 拡張期血圧も下がった。
出典/「食酢配合飲料の正常高値血圧者および 軽症高血圧者に対する降圧効果」健康・栄養食品研究6(1): 51-68 2003
4.タンパク質はイカとタコから。
タンパク質は毎食摂りたい栄養素。血圧が気になるならイカやタコから摂ろう。100g当たりのタンパク質量は15〜18gと牛・豚などと遜色ないうえに、交感神経の高ぶりを抑えて高めの血圧を下げるタウリンが摂れる。
イカはコレステロールが多め(100g当たり約250mg)だから、コレ値が心配な人はタコ(100g当たり約100㎎)をセレクト。高価だが、カニはタンパク質&タウリンが豊富で、コレステロールは少なくて安心(100g当たり40mg前後)。
5.降圧4大フルーツを知る。
過剰なナトリウムを排泄して血圧を下げるカリウムの多い食品といえば、真っ先に挙げたいのが果物。種類でカリウム含有量に差が大きいので、手に入りやすくカリウム多めの果物を覚えておこう。それがアボカド、バナナ、メロン、キウイフルーツの4大降圧フルーツだ。
果物にはビタミンやミネラル、食物繊維のような栄養素も入っている一方、糖質も多い。血糖値も高いなら糖質が多いバナナを避け、糖質少なめのアボカドやメロンをチョイスしたい。
6.おやつは高カカオチョコレート。
おやつも食べ方次第で血圧は下げられる。カカオ含有率70%以上の高カカオチョコレートを1回5g×5回=25g、毎日4週間食べると、血圧はダウンするのだ(下参照)。高カカオチョコのカカオポリフェノールが、血管を広げる一酸化窒素(NO)の分泌を促すからだろう。
さらにチョコはナトリウムを排泄するカリウムも果物並みに含む。高カカオチョコは糖質もカロリーも控えめ。前述の研究でもチョコを食べ続けた被験者は体重もBMIも増えなかった。
チョコレートを1日5g×5回摂取した結果

高カカオチョコを1日25g、5gを5回に分けて毎日4週間摂取した結果。高血圧群(収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上の被験者82人)の方がより血圧が下がっている。
出典/愛知県蒲郡市、愛知学院大学、明治が行った「チョコレート摂取による健康機能に対する実証実験」。
7.《高知なす》を1日2本。
「機能性表示食品」というとサプリを思い浮かべるが、食品にもその肩書きを掲げるものがある。その一つは高知県で栽培・出荷されている《高知なす》。「ナス由来コリンエステルに血圧が高めな方の血圧(収縮期血圧)を改善する機能がある」と報告されている。
コリンエステルは神経伝達物質の一種。交感神経の活動を抑えて血圧を下げる。1日2本分で降圧に必要な量(2.3mg)が摂れるとか。コリンエステルは加熱に強いので、炒めても揚げてもOK。
8.マイボトルには 杜仲茶かギャバ茶。
「お茶にも降圧作用はありますが、確かなエビデンスがあり、私自身も効果を確認しているのは杜仲茶とギャバ茶です」
杜仲茶のゲニポシド酸という有用成分は、血管を開く副交感神経を活性化して血圧を下げる。同時に有害な酸化を防いで動脈硬化の危険も低下させる。ノンカフェインなので、夜飲んでも眠りに響かないのもメリット。
ギャバ茶とは緑茶の一種で、GABAを多く含む。GABAは血管を縮める交感神経の高ぶりを抑え、血圧を落ち着かせる。
9.ブドウジュースを飲むなら果汁100%。
赤ワインのポリフェノールは抗酸化力があり、高血圧による動脈硬化を防ぐ。でも、飲みすぎると血圧は上がるし、お酒が飲めない人もいる。そこで渡辺先生は同じ原料のブドウジュースで実験。
「果汁100%のオレンジジュースとブドウジュース、果汁10%のブドウジュースなどを1週間飲み続けると、100%ブドウジュースのみ血圧が下がりました」。
ブドウジュースのポリフェノールが血管壁に働きかけ、血管を拡張させるNOの産生を促すのだろう。
10.発酵パワーで甘酒が効く。
発酵食品ブームで脚光を浴びた甘酒。“ジャパニーズ・ヨーグルト”として海外からも健康パワーに注目が集まるが、血圧も下げる。
含まれるポリペプチドが、血管を収縮させて血圧を上げる酵素の働きにブレーキをかけるのだ。酒粕から作る甘酒は1%未満のアルコールを含んでいるが、米麴から作る甘酒はノンアルコールなので気兼ねなく飲める。
ただし100gで18g程度の糖質を含み、カロリーもそこそこ高い。がぶ飲みはしないこと。