脳を揺らすと血圧が下がる!? ランニングが健康診断の結果を変える理由。

ウォーキングも健康には十分に効果的。ただランニングならではのご利益もあるからこそ、ぜひラン&ウォークを使い分けてもらいたい。ランニングによって得られる健康への効果を、マンガを交えながら解説していこう。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/沼田光太郎 監修/石井好二郎(同志社大学スポーツ健康科学部教授) 走り方の提案/神戸貴宏(Body Design Studio ASK代表)

初出『Tarzan』No.897・2025年2月20日発売

1. 血圧やコレステロール値が下がる。

血圧やコレステロールが下がる

「130超えたら○○茶」というくらい、昨今注意喚起が厳しくなっている血圧。そしていわゆる“悪玉”と呼ばれるLDLコレステロール値とトータルの総コレステロール値。

ウォーキングとランニングによるふたつのリスクを見てみると、運動量が上がるほど、リスクが下がっていく。健康維持のためにはとにかく歩け、とにかく走れという話。

ランとウォークの疾患リスク

3万人以上のランナーと1万5000人以上のウォーカーの健康リスクを比較した研究。高血圧と高コレステロール値のリスクはどちらもほぼ同等で、運動量が増すほど低下している。

Williams & Thompson, 2013より抜粋

2. ジョギングだと時間が短い。タイパがいい。

ジョギングだと時間が短い

同じ運動強度なら歩いても走っても健康診断の数値が下がる。なら歩けばいいじゃん、と低きに流れるのが人の性(さが)。でも、運動強度が増すほど数値が下がるとなると、走る方が簡単。理由は速度が上がるほど走るより歩く方が負荷が高く、長時間続けられないから。

さらに走った方が圧倒的に時間の効率がいい。5分のランは15分のウォークに匹敵する。

ランとウォーキングの死亡率

1日のランとウォークの時間と、すべての要因を含む死亡率の低下率を比較。5分のランの低下率は15分のウォーク、25分のランは105分のウォークに相当する。

Wen CP, et al. J Am Coll Cardiol. 2014.

3. 脳がいい感じで揺れると血圧が下がる!

脳がいい感じで揺れると血圧が下がる

頭を上下動させると血圧にいい影響がもたらされる。動物実験では認知症に関する改善効果が見られたというが、ヒトの実験で上下動する椅子に定期的に座った結果、血圧が低下した。脳への物理的刺激で自律神経のバランスが整い、その結果血圧が下がると考えられている。で、この脳の上下動は時速約7kmの軽いジョグによる刺激と同じなのだとか。

脳の上下運動による血圧の変化

高血圧者を対象にした、座面が上下する椅子に座る実験。1日30分、週に3日、1か月間の椅子搭乗を続けたところ、交感神経の活性が下がり平均動脈圧が低下。

Murase S, Sawada T, et al : Nat Biomed Eng. 2023.

まずはラン&ウォークを組み合わせよう!

健康診断の数値は気になるけれど走るのが苦手、という人はもちろんウォーキングから始めてもいい。ただし、ダラダラ歩きではなく時速6km以上のパワーウォークで。さらに時間効率を高めたり、脳の上下動による血圧改善効果を得たいなら、歩く合間にジョギングを取り入れるとよりよい結果が早く得られるはず。

ウォークとスロージョグを気まぐれに繰り返すだけでよし。週1頻度で距離は3km以内、まずはここから。

パワーウォーク

パワーウォーク

散歩レベルのウォーキングは時速4km程度。肘を直角に曲げて大きく振り、歩幅を広げて歩く時速6km以上のパワーウォークでより高い健康効果を得よう。

スロージョギング

スロージョギング

歩くスピードとほぼ変わらないけれど、両足が同時に地面から離れるジョギングではよりタイパが高まる。さらに頭の上下動の刺激で血圧改善効果も期待できる。