仰向けで寝るのはSTOP! 血圧を下げる新習慣10選。

「血圧高め」と診断されて何もしないのは、限られた寿命を投げ捨てるようなもの。今回ご紹介するのは、いずれも難なく習慣化できる対策ばかりだ。さあ、モチベーションが下がらないうちに今すぐ始めよう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/タイマタカシ 取材協力・監修/渡辺尚彦(日本歯科大学生命歯学部客員教授)

初出『Tarzan』No.898・2025年3月6日発売

仰向けで寝るのはNG 血圧を下がる週間
教えてくれた人

渡辺尚彦(わたなべ・よしひこ)/高血圧専門医、日本歯科大学客員教授。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。東京女子医科大学教授、早稲田大学客員教授などを経て現職。1987年から自らの血圧を30分おきに測り続けて研究に活かす。医学博士。

1.仰向けで寝ない。

減塩に励んでも血圧が高め。そんなタイプは眠りに問題アリかも。睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を疑ってみよう。SASで呼吸が止まると血圧は上がりやすい。放置すると4年後に高血圧になる確率は最大3倍にも。

SASの一因は仰向け寝で喉の奥の軟口蓋などが重力で下がり、気道が塞がること。横向き寝なら気道は塞がりにくい。大イビキをかく、日中に耐え難い眠気があるといった自覚症状があるなら、睡眠外来を受診せよ。

4年後の高血圧リスク。

4年後の高血圧リスク

アメリカで行われた大規模な睡眠時呼吸障害の研究結果。AHI(睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数)が多くなるほど、AHIがない人よりも4年後の高血圧発症リスクが高くなっていた。

出典/Peppard PE et al. N Engl J Med 2000: 342(19); 1378-1384

2.風呂はぬるめ。熱湯禁止。

浴槽入浴の習慣があると要介護リスクが減るという研究がある。でも、熱すぎる風呂で長湯すると交感神経が興奮し、血管が縮んで血圧が上がる。脱衣所と浴室の温度差などによるヒートショックで心筋梗塞や脳卒中で亡くなる人は後を絶たない。

入浴時は脱衣所と浴室を暖め、39〜40度のぬるめのお湯に10分くらい入る。すると副交感神経に切り替わりリラックスできる。入浴前後はコップ1杯の水分を飲み、危険な脱水を避けたい。

3.部屋着はゆったりオーバーサイズで。

3位部屋着はオーバーサイズめ

オーガニックコットンパジャマトップス19,800円、オーガニックコットンパジャマボトムス18,700円、共にフートウキョウ。 WEBサイト

病院に血圧が高く意識を失った急患が運ばれると、医師はまず衣服を緩めるとか。「カラダを締め付けると交感神経が優位になり、血管が圧迫されて血圧は上がりやすい。衣服を緩めるだけでも血圧は落ち着くからです」。

ベルトやネクタイをギュッと締めたり、キツすぎる矯正下着や着圧ソックスを愛用したりしていると、血圧は知らない間にアップする。人目のない部屋着やパジャマは、できるだけゆったりした作りのモノをオーバーサイズで着こなそう。

4.階段は一方通行。下るだけで上らない。

駅などではエスカレーターやエレベーターを避け、階段を使うと足腰が鍛えられる。しかし、血圧高めなら少なくとも上りはエスカレーターやエレベーターに頼るべき。「通勤時などに急いで階段を駆け上がると血圧が急上昇。3分で平均80mmHgの血圧上昇が起こるという研究もあります」。

下りなら血圧を上げにくいし、ブレーキをかけながら行うエキセントリック運動だから足腰への筋トレ効果も高い。階段下りの習慣で血圧が下がるというデータもある。

階段下りで血圧は下がる。

階段の上り下りで血圧の変化

肥満の高齢女性30人(60〜82歳)を、階段を下るだけのエキセントリック運動をする群と、階段を上るだけのコンセントリック運動をする群に分けて、それぞれ週2回・12週間実施してもらった。すると前者では血圧やコレステロールなどが下がりやすかった。

出典/Chen et al. Med Sci Sport Exerc. 2017

5.部屋にはラベンダーの香りを。

5位部屋にはラベンダーの香りを

嗅覚が脳に与えるインパクトは大きい。香りの情報は脳内で自律神経の中枢である視床下部に伝わり、交感神経と副交感神経のバランスに響く。それで血圧にも影響するのだ。

副交感神経を刺激して血圧を下げるアロマとして有名なのは、ラベンダー。逆にローズマリーの香りは交感神経を高ぶらせて血圧を上げる。

ただし、ラベンダーの香りが嫌いだと、逆に血圧が上がってしまう。自身が心からホッとできる好きなアロマを見つけて活用するのが賢いようだ。

6.デスクワークでは1日3回合谷を押す。

降圧作用を謳うツボはいくつかあるが、渡辺先生が自信を持って薦めるのは「合谷」。両手の人差し指と親指の付け根にあるツボだ。「合谷を押すと、血管が開いて血圧が下がる。血圧が高い患者さんは、合谷を5分くらい押すだけで10分後に収縮期血圧が20〜30mmHg下がります」。

一度の指圧で降圧作用は4時間ほど続くとか。4時間おきに1日3回押せば、起きている間の血圧をずっと下げることもできそう。デスクワークの合間にやってみよう。

合谷1.親指と人差し指の間のデルタ地帯。

6位合谷を押す2.人差し指の骨が親指の骨と交わるところ。

6位合谷を押す

3.人差し指の骨に沿ったところという3か所ある。左右のツボを3〜5分ずつ反対の手の親指で押そう。

7.食物繊維多めで快便。排尿は便座に坐って。

重たいモノを持ち上げるときのように、息を止めてイキむと血圧は上がりやすい。これは「バルサルバ効果」と呼ばれる。排便時にイキみすぎると、バルサルバ効果で血圧は上がる。

とくに便秘気味で強くイキむ癖がある人はご用心。野菜や海藻などから食物繊維を多く摂り、便秘に陥らないのが肝心だ。

排尿を堪えるだけで血圧は上がるから我慢は禁物。また男性は洋式トイレに坐って排尿した方が肉体的な負担が少なく、立ってするより血圧は上がりにくい。

8.昼寝で血圧ダウン。30分以上は逆効果。

睡眠中に血圧は下がるから、平均血圧は睡眠時間が長いほど低く、短いほど高い。睡眠不足を自覚しているなら、日中15分〜20分の短い昼寝を。昼寝をすると緊張がほぐれ、血圧は下がりやすくなる。

逆に30分以上の昼寝をすると、睡眠圧(眠りたいという欲求)が落ち、夜寝付けなくなるから逆効果。長時間の昼寝では代謝を司る体内時計も乱れて、血圧や血糖値が上がりやすい。また30分以上の昼寝で認知症リスクが上がるという研究もあるから注意。

9.2分握って1分休むタオルグリップ。

9位 2分握って1分休むタオルグリップ

バスタオルを筒状に丸める。椅子に坐り、バスタオルを30%ほどの力で優しく握る。呼吸をしながら2分間握り続け、1分休む。これを左右2回ずつ、週2〜3回行うのが効果的。

高負荷で筋トレすると血圧は一時的に上がる。息を止めると前述のバルサルバ効果で血圧は一層アップするから、息は止めないこと。でも、ごく軽めの筋トレなら血圧低下が期待できる。

それが筒状に丸めたタオルを30%くらいの握力で握る「タオルグリップ」。「軽く握ると一時的に血流が滞り、力を緩めると停滞した血流が一気に流れます。それにより、血管を広げる作用を持つNOが分泌されるのです」。週2〜3回ペースで続けると平均血圧が下がる。

10.ストレスに勝つズボラ自律訓練法。

過度なストレスで自律神経が乱れると血圧は上がる。自律神経を整えるのに有効なのが「自律訓練法」。自己催眠の一種で温感(温かいという感覚)や重感(重たいという感覚)で交感神経を抑え、副交感神経を優位に。

正式なものは複雑で長いので、今回は手足限定のシンプルプランを提案する。理想は1日3回だが、朝晩2回でOK。「朝は“消去動作”を忘れずに。血管が開き血圧が下がるので、消去動作を行わないと起立性低血圧で倒れる恐れがあります」。

やり方

10位 ズボラ自律訓練法

  1. 椅子に坐り、手の甲を膝に乗せ、両目を閉じて気持ちを落ち着かせる。ベッドでもOK。
  2. 心のなかで「気持ちはとても落ち着いています」と繰り返し唱える。
  3. 意識を右手に向け、「右手が温か〜い」「右手がホカホカして温か〜い」と何度も唱える。
  4. 同様に左手、両手、両手と右脚、両手と両脚に順番に意識を集め、温感訓練をする。
  5. 終わったら消去動作。バンザイをするように両腕を上げ、両手を開いて閉じる「グーパー」を4〜5回行う。両手を膝に戻してもう一度「グーパー」をしてから目を開ける。