これならきっと続く。楽しくランニングする36のアイデア【後編】
ランニングはストイックなだけの運動ではない。発想次第で楽に、新たな喜びももたらしてくれる!走りのプロフェッショナルに、さまざまな角度から気持ちよく走るための工夫やアイデアを聞いてみた。後編では、ランニング前後の工夫、走り方、練習方法などにまつわる17のアイデアを紹介。型にはまらず、自分に合ったスタイルでランニングを楽しもう!
取材・文/中野 慧 イラストレーション/STOMACHACHE.
初出『Tarzan』No.874・2024年2月22日発売
目次
公園に立ち寄り自体重トレ
運動への飽きを防ぐためにも、「走る」以外の動きを取り入れてバリエーションを増やそう。
「ランニングの途中の公園で5分間ほど自体重トレをします。走り続けるのが辛い時は無理しないで少し歩いたりして、走りに固執しないようにしています。無理しないのは大切、人生も同じ」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。
教えてくれた人:〈ランニングと朝食〉メンバーのみなさん)
「はじまりの時間を共有(シェア)する」をコンセプトに朝食を食べるためにランニングを行うコミュニティ。アメリカ、タイ、シンガポールも含め世界各地で40チームが活動している。WEBサイト
チンニングバーなど、大人用の健康器具を備えている公園も少なくない。休憩を兼ねつつ、筋力量を増やして基礎代謝を上げるためにも、「公園自体重トレ」をランニングのルーティンに加えてみたい。
ヨガを普段からやっておく
ヨガをすることで走力がアップするケースもある。
「呼吸に合わせてゆっくりポーズをとると、ふだん使わない筋肉も使うので、少しずつ筋力を鍛えることができます。体幹が鍛えられるポーズもたくさんあり、ランニングフォームの軸がしっかりしてきます。
ホットヨガをやるとカラダの芯から温かくなり、汗をたくさんかくのでカラダの奥の老廃物が出やすくなって代謝が上がり、より健康になったという人もいます」(田中さん)。
教えてくれた人:田中猛雄さん
たなか・たけお/TAKEアスリート鍼灸院院長。五輪メダリストをはじめ、多くの市民ランナー向けに治療とトレーニングのアドバイスを行う。フルマラソン完走60回以上、マスターズ陸上、ウルトラマラソンにも出場する現役ランナー。
「ランの途中で公園に立ち寄ってヨガをしてます」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。
コモドドラゴンのように走る
地を這うコモドドラゴンの動きを取り入れた“コモドストレッチ”は走りにもシナジーをもたらす。
「うつ伏せに寝て、片側の足をできる限り上半身に引き寄せ、その足の踵が浮かないよう注意し、引き寄せた足と反対側の肘を地面につけ、胸と腹をできるだけ地面に近づける。
そこから膝を内側から押して体幹を捻る。ランニングでは体幹・股関節・肩甲骨を滑らかに動かす必要があり、それらの可動域を上げれば、楽に走ることが可能になります。無理せず頻度高くやっていけばパワフルな走りに繫がるはずです」(中野さん)。
教えてくれた人:中野崇さん
なかの・たかし/トレーナー、理学療法士。(株)JARTA international代表。国内外のプロアスリートへの身体操作トレーニング指導、トレーナー育成に携わる。SNSではプロ選手のノウハウを一般の人でも実践できる形で紹介・発信。
仕事にランミーティングを取り入れる
「人と会話しながら走ると、顔を正面から見なくていいため、丁度いい距離感でトークが弾むんです」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。
誰かと一緒にランニングすれば、日常のコミュニケーションに変化をつけられる。走るのが好きな同僚がいたら、始業前にランに誘ってみると、思わぬビジネスの種が見つかるかも?
リカバリーグッズを駆使する
ランにケガはつきもの。
「せっかく走れるようになってきたのに、ケガで走りたくても走れない、というランナーを数多く見てきました。僕自身も経験したことがありますが、ランナーにとって非常に苦しい時間です。そこで提案したいのは、日頃のリカバリーの質を上げるためのグッズを揃えること。リカバリーの充実こそが走るモチベーションを上げてくれると言っても過言ではありません。
定番化しているマッサージガンの《Hypervolt Go2》。他にも、脚全体を加圧できる《Hyperflux》、温熱と振動で背中の筋肉をほぐすことができる《Venom2 Back》などもおすすめです」(上田唯人さん)。
教えてくれた人:上田唯人さん
うえだ・ゆいと/『走るひと』発行人。野村総合研究所で戦略コンサルタントを経験した後、2014年にランニングカルチャー誌『走るひと』を創刊、編集長・発行人に。スポーツやカルチャーに関わる分野でさまざまな発信を行っている。
「冬場は風邪予防のためにも、快適で汗冷えしない温熱ランニングウェアが重宝します」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。
ランニング以外の趣味も合う人と走る
「同好の友人と一緒なら、趣味のトークをしながら走れるのでただ走るよりずっと楽しいです」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。
また、「ランニングの仲間は気質がシンプルな人の率がとても高く、安心感のあるコミュニティ。これを知っていること自体が、ランを楽しむ秘訣のひとつかも」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。
走りながらカラダをほぐす
「ほぐすor刺激を入れる」ことも重要。
「おすすめは次の3つです。
①胸骨の中心を両手の指で押さえて皮膚だけでも少し上に上げ、その状態で深呼吸を3〜5回行う(=胸郭が広がり、綺麗なフォームへの変化も期待できる)。
②脇の後ろのくぼみを反対側の手の人差し指・中指で強めに押しながら腕を前後に回す(=腕と体幹の連動性が向上し、腕だけでなく体幹を使う動きが引き出される)。
③片足を1歩前に出しハムストリングスの内側上半分を反対側の手の拳で叩く(=地面を蹴る力を高めることができる)」(中野さん)。
フォーム解析できるアプリを活用する
走りを楽しくするためにはスマホも有効活用したい。
「フォーム改善できるアプリを使って、修正しながら走るのが意外と楽しい。おすすめはカシオとアシックスが共同開発した『Runmetrix』。腰に装着する専用のモーションセンサーを購入して使えば、一人ひとりに合ったフォーム改善情報を知ることができます」(ゆう先生)。
教えてくれた人:ゆう先生
ランチューバー、整体師。埼玉・和光で〈整体院 祐〉を営みつつ、人気のYouTubeチャンネル『ランニング整体師ゆう先生』では、カラダの使い方やトレーニング、食事、ギアなどの観点からランナーの悩みを解決する方法を発信中。
「《Apple Watch》などのスマートウォッチは走ったコースの地図やその日の天候なども記録されるので旅ランの思い出を保存することができますし、走行距離、ペース、心拍数など基本的な情報も把握できます。より真剣に走りたいなら、VO₂Max(最大酸素摂取量)、ピッチ数、接地時間など、専門的な指標を把握できる製品を活用し、フォーム改善に役立ててみては」(角谷さん)。
教えてくれた人:角谷 剛さん
かくたに・ごう/米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)。アメリカ・カリフォルニア在住。コンコルディア大学でコーチングおよびスポーツ経営学修士号を取得。クロスフィット・トレーナーと高校クロスカントリー部監督を務めている。各種メディアで執筆も。
キョンシー走りをする
疲れ防止には腕を上げるといい。
「ペースダウンした際、キョンシーのように手を前に突き出すと肩甲骨の動きが良くなり、脚の動きが復活します」(南井さん)。
教えてくれた人:南井正弘さん
みない・まさひろ/フリーライター、『Runners Pulse』編集長。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年間勤務した後、ライターに転身。著書に『人は何歳まで走れるのか?不安なく一生RUNを楽しむヒント』(集英社)がある。
さらに、「両手の指を組んで手首を返して頭の上に上げると胸椎が伸展し上半身のポジションが改善します。またみぞおちを押して走ると腸腰筋が刺激されて脚が上がりやすくなり、上半身との連動性も向上します」(中野さん)。
ランで社会貢献する
近年認知が高まりつつあるのが、プロギング=走りながら町のゴミ拾いをすること。
「自分が暮らす町をきれいにしつつ、自らの健康も保つアクティビティです。湘南エリアなどローカルコミュニティが主催するもの、アディダス等ブランドがリードするものなどがあります」(南井さん)。
「1マイル走るごとに100円が緑の保全活動などに寄付される『グリーンマイレージプログラム』もおすすめ。ランニングはハマると自己完結しがちですが、自分のランニングで自分以外の何かに関われるのが面白いです」(上田さん)。
教えてくれた人:上田唯人さん
うえだ・ゆいと/『走るひと』発行人。野村総合研究所で戦略コンサルタントを経験した後、2014年にランニングカルチャー誌『走るひと』を創刊、編集長・発行人に。スポーツやカルチャーに関わる分野でさまざまな発信を行っている。
ランニング前後に自撮りする
「これからランを習慣化したいと思っているなら、始める前に鏡の前で全身を撮り、少し経ってからまた撮って体型の変化(腹筋が出てきた、ウェストラインが出てきたなど)を観察するのもいいと思います」(ゆう先生)。
ビフォー&アフターを目に見える形で記録することで、モチベーションの維持に役立てよう。
サウナ巡りをする
サウナ巡りもランニングに取り入れてみたい。
「サウナがある温浴施設を拠点に、荷物を置いて走って、帰ってきたら、サウナに入ります。友人の誘いで10年ほど前に始めました。最近ではいろいろな場所にいいサウナ施設が増えてきているので、出張先や旅行先でも応用できます。
海外だと、ベルリンマラソンの翌日にフィンランドでサウナに入ったり、ニューヨークシティマラソン完走後にマンハッタンのロシアンサウナに入ったりしました。サウナを探すのも旅の楽しみになっています」(上田さん)。
個人指導を受けてみる
筋トレのパーソナルトレーニングはすっかり普及したが、ランニングにも同様のものは存在する。目標を立てて走りランニングに取り組むことで、ランニングが習慣になったり、モチベーションを維持しやすい。
「私が所属する〈Japanマラソンクラブ〉では個人向けランニング指導を行っています。初心者の方は姿勢、筋力、柔軟性などをチェックし、ストレッチのやり方や走り方の基本を習得してもらうことができます。
走れなかった時間や距離を走れるようになるなど成長を実感できるのもランニングの魅力の一つ。また、仲間と一緒に駅伝大会やリレーマラソンに出場するのもおすすめ。大会を完走した時の達成感もひとしおです」(深野さん)。
教えてくれた人:深野祐子さん
ふかの・ゆうこ/管理栄養士、Japanマラソンクラブコーチ。東京農業大学応用生物科学部栄養科学科卒。病院や介護施設で献立作成から調理まで担当、2008年スポーツネットワークサービス入社。ランニングアドバイザー兼食事・栄養カウンセリング等を行う。
禁断の「ビールランニング」に踏み出す
お酒とランは混ぜるな危険? 実はベテランランナーたちの場合、そこまで禁欲的でなかったりもする。
「大阪城公園は大阪マラソンの発着地点で大阪のランナーが愛するランニングコースですが、天満、京橋、鶴橋といったB級グルメの聖地が至近距離にあります。走った後のビール&焼き肉、串カツ、お好み焼き…etc.は本当においしい」(南井さん)。
「Facebookで活動する〈横浜ビールランニングクラブ〉という気になるランコミュニティがあります」(渡邊さん)。
教えてくれた人:渡邊亜紀子さん
わたなべ・あきこ/トレーナー、スウェディッシュマッサージ師。東京・自由が丘のスウェディッシュマッサージ&ストレッチサロン〈リュッカ ティル〉主宰。運動が苦手な人でもイキイキと動けるカラダ作りを発信すべく『マイナビウーマン』でコラムも執筆。
月に一度、横浜の街を走ったあとに参加者みんなでビールで祝杯を上げる恐るべき集団だ。他にも、走ったあとに飲み会を開催しているランコミュニティは少なくない。ぜひ一度、禁忌を破る楽しさを体験してみてはどうだろう。
夏フェスで走る
毎年夏に新潟・苗場で行われるロックフェス『フジロックフェスティバル』ではランイベント『フジロックラン』も開催されている。
「開場前の朝にゆっくり走ったり、さらには会場周辺のゴミ拾いをやる日もある。自分もフェスを作り上げている一人なんだということが実感でき、音楽を浴びる準備も万端になります」(上田さん)。
1マイルレースに出場する
大会に出てみたいけど、マラソンはちょっとハードルが高い。そんな人でも参加しやすいのが1マイルレース(1.6kmラン)。
「初心者も気軽に参加することができ、かつトップアスリートのダイナミックな走りを間近で見られるのも大きな魅力です」(上田さん)。
『TOKYO 1MILE』『北渋マイル』などがある。
美しいビーチを走る
「東京近郊エリアだと、湘南海岸サイクリングロードはとても気持ちのいいコース。晴れていれば富士山を望むこともでき、江の島をゴールにすれば日帰りで温泉も楽しめます」(深野さん)。
「宮崎のトロピカルロードはアカウミガメの産卵地としても有名な美しい海とビーチに沿って、ランニングコースが設置されています。踏んでもあまり沈まない砂浜なので走りやすい。景色×波音×いろんなパターンの地面という、五感を刺激する組み合わせが楽しめます」(中野さん)。
ランニングコミュニティに参加してみる
一人で走ると続かないタイプなら、ランニングコミュニティに参加してみるのも手だ。
「東京・新宿のランニングショップ〈downbeat RUNNING〉では、毎週水曜にゆっくりペースで約5kmを走る無料のグループランが行われています。注目シューズの試し履きができるのもショップならではのお得感がある。
ファッションサイトのフイナムが主宰する〈フイナムランニングクラブ〉は、少し文化系な雰囲気。首都圏エリアのオシャレランナーから愛されています。不定期開催されるファンランからの飲みも人気です」(南井さん)。
「僕のLINE公式アカウントから参加できる〈Run-Fun会〉は、ランニング初心者の方でも楽に走れるフォームの習得を目指すことに特化したコミュニティ。月1度のリアルランニング会では、参加者同士の交流会が毎回盛り上がっています」(ゆう先生)。
恋活、出会いを兼ねる
「ランニングを通じて婚活ができるサイトもあり、〈社会人サークル NewDay〉は全国でイベントを開催しています」(渡邊さん)。
「私たちのランコミュニティには実は20〜30代男性が少ないんです。若い男性はあまり積極的に参加しないので、口コミで広がればいいなと思います!」(〈ランニングと朝食〉女性メンバー)。
男子は臆せず足を運んでみよう。