これならきっと続く。楽しくランニングする36のアイデア【前編】

ランニングはストイックなだけの運動ではない。発想次第で楽に、新たな喜びももたらしてくれる!走りのプロフェッショナルに、さまざまな角度から気持ちよく走るための工夫やアイデアを聞いてみた。前編では、ランニングの目的地、コースなどにまつわる17のアイデアを紹介。型にはまらず、自分に合ったスタイルでランニングを楽しもう!

取材・文/中野慧 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/坂西透 イラストレーション/STOMACHACHE.

初出『Tarzan』No.874・2024年2月22日発売

これならきっと続く。楽しくランニングする36のアイデア【前編】

おいしいモーニングの店をゴールにする

楽しくランニングする36のアイデア おいしいモーニングの店をゴールにする

ランニングをより気軽に、ワクワクするものにしたい人は、楽しい目的地をゴールに設定するといい。例えば見たい映画や展覧会、訪れてみたい朝市などがあったなら、行きだけ走って帰りは電車やバスを使う。そんな“片道ラン”も大いにアリだ。

また、早起きして運動できたという達成感が得られる早朝ランに、さらにご褒美を加えるアイデアも。

「ランニングを始める前からカフェなどのモーニングおたくだったのですが、走った後に食べるといつも以上においしい! ランの目的はもっぱら朝食のお店です」(〈ランニングと朝食〉メンバー)。

教えてくれた人:〈ランニングと朝食〉メンバーのみなさん

「はじまりの時間を共有(シェア)する」をコンセプトに朝食を食べるためにランニングを行うコミュニティ。アメリカ、タイ、シンガポールも含め世界各地で40チームが活動している。WEBサイト

楽しい場所をゴール地点にすることで仲間も増え、行き先を探すことでリサーチ力も身につく。結果、企画力やコミュニケーション力がアップするというメリットも。

ふだんから大股歩きする

せっかくランを始めたのに、ケガをして継続できなくなってしまうことも。「ケガ防止のために、大股歩きを取り入れるといいです。大股で歩くには太腿の内側とお尻に力を入れる必要があり、歩きながらも筋トレと同じ効果が得られます。ここを鍛えておくと、ランニングによるケガもしにくくなります」(渡邊亜紀子さん)。

教えてくれた人:渡邊亜紀子さん

わたなべ・あきこ/トレーナー、スウェディッシュマッサージ師。東京・自由が丘のスウェディッシュマッサージ&ストレッチサロン〈リュッカ ティル〉主宰。運動が苦手な人でもイキイキと動けるカラダ作りを発信すべく『マイナビウーマン』でコラムも執筆。

ふるさと納税でマラソンに参加する

「各地でマラソン大会が開催されていますが、応募者多数でなかなかエントリーできない人も少なくない。実は、多くの地域でふるさと納税の返礼品で出走権が出ていたりするので、そこでエントリーできれば一石二鳥にも三鳥にもなるかなと思います」(渡邊さん)。

今年6月開催の『果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン』は出走権に加えサクランボももらえるなど、特産品とセットになったものも。

日の出に向かって走る

「太陽の光を浴びるとストレスが浄化され、心身の病気から守られるといいますよね。朝の光は季節とともに日々変わっていくので、それを見守るのも楽しい。私にとって、ビジネスに繫がるようなランニングはランニングではないです」

「冬の早朝は北斗七星を見上げたり、マジックアワーのグラデーションを楽しんでいます」(ともに〈ランニングと朝食〉メンバー)。

日が明ける前の暗いうちから海岸で走り、ランが終わるタイミングに合わせて日の出を拝めるようにする。それを日々のルーティンにするのも楽しそうだ。

わざと道に迷ってみる

楽しくランニングする36のアイデア わざと道に迷ってみる

家の近くでランニングする際にもひと工夫できる。

「“わざと道に迷ってみる”のはおすすめです。都市化されたベッドタウンに住んでいても、ほんのちょっと市街地を離れるとまるで日本昔ばなしに出てくるような里山や農地、牧場が残っていたりします。日常生活の中で、非日常を感じることができるんです」(角谷剛さん)。

教えてくれた人:角谷剛さん

かくたに・ごう/米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)。アメリカ・カリフォルニア在住。コンコルディア大学でコーチングおよびスポーツ経営学修士号を取得。クロスフィット・トレーナーと高校クロスカントリー部監督を務めている。各種メディアで執筆も。

近所でトレランできる場所を探しておく

マンネリ解消のためには、コースのバリエーションを持っておくことも大事。

「整地されたロードだけでなく、山などで自然に触れて走るととても気持ちいいし新鮮ですよ」(ゆう先生)。

教えてくれた人:ゆう先生

ランチューバー、整体師。埼玉・和光で〈整体院 祐〉を営みつつ、人気のYouTubeチャンネル『ランニング整体師ゆう先生』では、カラダの使い方やトレーニング、食事、ギアなどの観点からランナーの悩みを解決する方法を発信中。

トレイルランニングは、ロードより複雑な刺激を脚に与えることもできる。山に行かずとも、大きめの公園でちょっとした登山道のようなエリアを探してみるのもいい。

銭湯をランステにする

楽しくランニングする36のアイデア 銭湯をランステにする

「ランニングステーションの方が手軽なこともあるけれど、個人的にはランステ利用できる銭湯を推したいです。汗を流すだけならシャワーでもいいのですが、銭湯の良さは湯船に浸かれること。

それだけでマッサージ効果があり、自分で入念なアフターケアを行うのが面倒な方には断然おすすめ。ただ、すべての銭湯がランステ利用できるわけではないので行く前に調べておきましょう」(渡邊さん)。

例えば荒川ランの好基点にある東京・北区〈テルメ末広〉のように、ランナー歓迎を掲げている銭湯もあるので活用してみよう。

プロ野球のファン活を兼ねる

楽しくランニングする36のアイデア プロ野球のファン活を兼ねる

「私はプロ野球選手のサポートもしているので、毎年春にキャンプが開かれる宮崎を訪れるのですが、海沿いのランニングコース〈トロピカルロード〉はとても気持ちよく走ることができますよ」(中野崇さん)。

教えてくれた人:中野崇さん

なかの・たかし/トレーナー、理学療法士。(株)JARTA international代表。国内外のプロアスリートへの身体操作トレーニング指導、トレーナー育成に携わる。SNSではプロ選手のノウハウを一般の人でも実践できる形で紹介・発信。

毎年春の旅行プランに、キャンプ詣でを兼ねた南国ビーチランを組み入れてみるのはどうだろう。

クロスフィットを取り入れて走る

単純に“前に向かって走る”だけでなく、ウェイト、自体重トレ、鉄棒、縄のぼりなどを含めたさまざまな動きを取り入れるのがクロスフィット。

「英語圏では普及しており、日本でも各地に専用ジムが増えました。毎回種目が変わるのでかなりきついですが、誰でも参加できるオープンさで、参加者のコミュニティ感も非常にいいです」(角谷さん)。

「障害物を越えながら走る『スパルタンレース』という競技もあります。〈テディーボンズ〉(Instagram)という団体ではスパルタンレースを習えますよ」(ゆう先生)。

栄養について学んでおく

ラン後の食事を励みに走る人なら、栄養の知識があれば、より楽しくなる。

「私がコーチを務めている〈Japanマラソンクラブ〉では、ランナーに向けた食事・栄養講座を定期開催しています。仕事後に走りたい人は空腹状態を避けるべく、走る1〜2時間前ならおにぎりやうどん、30分〜1時間前ならエネルギーゼリーなどの消化吸収が早く糖質が多いものを摂るといいなどといったラン前後の食事や補食の摂り方、また大会に向けた食事などさまざまな内容から学べます」(深野祐子さん)。

教えてくれた人:深野祐子さん

ふかの・ゆうこ/管理栄養士、Japanマラソンクラブコーチ。東京農業大学応用生物科学部栄養科学科卒。病院や介護施設で献立作成から調理まで担当、2008年スポーツネットワークサービス入社。ランニングアドバイザー兼食事・栄養カウンセリング等を行う。

都会のオアシスで走ってみる

都会でも自然を感じながら走れる場所といえば?

「東京なら光が丘公園や駒沢公園は、ランニングコースもあり空気もよくておすすめです」(ゆう先生)。

「隅田川テラスは川と植栽、東京スカイツリーのコントラストが楽しめます」(田中猛雄さん)。

「福岡なら大濠公園、札幌なら豊平川河川敷と中島公園です」(南井正弘さん)。

教えてくれた人:

田中猛雄さん

たなか・たけお/TAKEアスリート鍼灸院院長。五輪メダリストをはじめ、多くの市民ランナー向けに治療とトレーニングのアドバイスを行う。フルマラソン完走60回以上、マスターズ陸上、ウルトラマラソンにも出場する現役ランナー。

南井正弘さん

みない・まさひろ/フリーライター、『Runners Pulse』編集長。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年間勤務した後、ライターに転身。著書に『人は何歳まで走れるのか?不安なく一生RUNを楽しむヒント』(集英社)がある。

「東京・世田谷区の等々力渓谷は緑と川が近く、夏に走ると涼しくて気持ちいいです」(渡邊さん)

※等々力渓谷は現在樹木調査中で立ち入り禁止。まだまだ発見されていない都会のオアシスを探してみるのもいい。

デートスポットをあえて走る

恋人たちが身を寄せ合うデートスポットは、実は走りやすいランニングコースでもあった。

「横浜市のみなとみらいは車が来ないですし、眺めがすごくいいです。早朝はランナーも多いですが道幅が広く、密集せずに心地いい距離感で走れます。散歩している人もいるので、初心者でゆっくり走っても他人の目が気になることもありません」(渡邊さん)。

「みなとみらいは夜景がとても綺麗なので、夜に走りに行くのもありです」(ゆう先生)。

ランと結びつきづらかったスポットも、コースに使えないか考えてみよう。

離島を一周する

楽しくランニングする36のアイデア 離島を一周する

旅先でも日課として走りたいなら、単なるルーティンではない“離島ラン”という選択肢もある。

「沖縄の竹富島、北海道の利尻島などは海岸に沿って一周する道路が走れます。道に迷う心配は少なく、同じ道を引き返すこともない。一番おすすめしたい“旅ラン”のスタイルです」(角谷さん)。

竹富島は一周9.2km、利尻島は60km。長いと感じたら数日かけて達成してみるのもいい。

街中でバーチャルフルマラソン

街の中で42.195kmのコースを想定して走る“バーチャルフルマラソン”という発想も。

「なるべく信号で止まらずに済み、道のりがフラットで、途中にトイレがあるコースを作るのがコツ。私の場合、札幌の豊平川河川敷を中心にコースを組んでみたところ、快適にフルマラソンを走り終えることができました」(南井さん)。

「超ゆっくりジョグ」をする

ゆっくり走って疲れを抜く「疲労抜きジョグ」。これを習慣化すると、ランニングが辛いものじゃなくなる。

「ペースは、1kmを全力で走れるタイムの2倍以上遅いスピード。“丁寧に、心を込めて走る”が重要です。噓みたいですが、やると本当に心もカラダも変わる。

やり方は、まず両足を揃えて、その場で軽く跳ぶ。膝は曲げず、足首もあまり使わず、着地した時に地面の反発を感じるくらいで。その反発が頭のテッペンにまで感じられるようにカラダの軸をしっかりさせる。

その後、歩くくらいのスピードから徐々に速めていくのがコツ。カラダの軸がぶれず、疲労が抜けやすいしっかりしたフォームになっていきます。私は週1、2回のハードトレーニング日以外は、この方法で毎日の疲労を抜いています」(田中さん)。

鉄道沿線を走る

趣味を兼ねたランニングなら、当然楽しい。

「私は長年の鉄道ファンなので、鉄道沿線を走って巡るのが好きです。関東近郊のおすすめは千葉の小湊鉄道やJR久留里線、神奈川の鶴見線、東京郊外の青梅線、群馬のわたらせ渓谷鐵道、茨城のひたちなか海浜鉄道。京都の神社仏閣巡りや、四国のお遍路でも走ります」(田中さん)。

観光ランニングツアーを主宰する

〈ランニングと朝食〉メンバーはとにかく企画力が高い。

「鎌倉から江の島に向かう海沿いを走って海鮮丼を食べるコースや、新年は七福神巡りのコースなど、季節に合わせた企画を考えてみんなで走っています」

「海外旅行客をゲストに、両国や浅草などで観光ランニングツアーを開催することもあります。同じ趣味の人と走るのも話題が弾んで楽しいですが、暮らしている場所や職業、趣味が全く違う方と走ると、走る共通項はありながら多様な話題が楽しめて刺激的ですし、日本の魅力を再発見できます」。