猫と暮らすと豚肉アレルギーが発生!? 身の周りにあるアレルギーのもと
アレルギーを引き起こす物質は数知れず。発症するのはいやだが、ただ恐れるのもバカらしい。食物から金属、そして不耐症まで。その特徴は? 注意すべき点は? 今回は、アレルギーの環境因子について深堀り。思わぬものが食物アレルギーを引き起こすことも。幼い子供で起こるものと思いがちだが、実は大人も注意したい。まず敵を知ることから始めよう。
取材・文/井上健二 イラストレーション/Hi there 監修/伊藤浩明(あいち小児保健医療総合センター センター長) 参考文献/『食物アレルギー診療ガイドライン2021』(一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)
初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売
教えてくれた人:伊藤浩明さん
いとう・こうめい/あいち小児保健医療総合センター センター長。米国留学、国立名古屋病院小児科などを経て現職。日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会副委員長として『食物アレルギー診療ガイドライン2021』を監修。医学博士。
ハウスダスト
アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などを起こしやすいのが、ハウスダスト。室内のチリやホコリのなかでも、1mm以下の細かいものを指す。そこに含まれるダニの死骸や糞、カビ、細菌、花粉などがアレルゲンとなる。
部屋の掃除や寝具の洗濯を念入りに行って室内を清潔に保ち、寝具にはダニを通しにくいカバーをかけるなどの工夫を。
動物(犬猫)
動物でポピュラーなのは、ペットアレルギー。猫や犬の毛やフケ、インコなど小鳥の羽毛や糞などがアレルゲンとなる。
ペットの飼育と連鎖し、食物アレルギーが出ることもある。ペットのアレルゲンと似た作りを持つ食べ物のアレルゲンによる交差反応が引き金だ。代表的なのが、「ポーク・キャット症候群」。ネコのアレルゲンを吸い込んでIgE抗体ができて(経気道感作)から、豚肉を食べると発症する。
このほか、キャンプ中などに誤ってマダニに嚙まれて、そのアレルゲン(α-Gal)が体内に入ってIgE抗体が生じた後、似たアレルゲンを持つ牛肉や豚肉を食べて交差反応が生じる「α-Gal症候群」もある。
昆虫(ハチ)
蜂に刺されたことによる蜂毒アレルギーは、じんましんや呼吸困難などを伴う。アナフィラキシーで死ぬこともあり、国内で年間20人ほどが亡くなる。スズメバチ以外に、アシナガバチやミツバチなどでも起こる。
これらの蜂毒には、ホスホリパーゼA1など多くのアレルゲンが含まれている。森林で作業する機会が多く、蜂に刺されやすい林業や電気工事業の従事者では、その30〜40%が蜂毒によるIgE抗体を持っているという。その状態で再度蜂に刺されると、アナフィラキシーを起こすこともあり得るのだ。
金属
ピアスや指輪などの金属に触れた皮膚がかぶれるのが、金属アレルギー。汗と反応してイオン化した金属成分が、皮膚のタンパク質と結合。それがアレルゲンとなる。ニッケル、コバルト、クロムなどで頻発する。
多くは、金属が触れた部分のみにかぶれや痒みが出る接触皮膚炎だが、歯科治療に使う金属や食べ物に微量に含まれる金属で、体内の金属イオンバランスが崩れてしまい、全身にアレルギー性皮膚炎(全身性接触皮膚炎)が起こることもある。
ラテックス
手袋などに使われている天然ゴム(ラテックス)でじんましんなどが出ることもある。アレルゲンは、天然ゴムに含まれるヘベインという成分。
なかには、果物を食べた後、全身にアレルギー症状が生じるタイプも。これは「ラテックス-フルーツ症候群(LFS)」。ラテックスのアレルゲンと、果物のアレルゲンの構造が似ていることによる交差反応だ。
薬物
薬の有効成分は分子量が小さく、体内でアレルゲンと認識されにくいため、アレルギー反応を起こしづらい。でも、ペニシリン系やセフェム系などの抗生物質で薬物アレルギーが生じることもある。新型コロナウイルスのワクチンに対しても、稀にアナフィラキシーなどの薬物アレルギーが報告されている。大半はワクチンに含まれる添加剤・ポリエチレングリコール(PEG)という成分によるもの。