運動すると食べすぎる人は強度を上げるべし|効率良くカラダを変える食事の基礎【前編】
カラダを快適に動かしたい。トレーニングでいい変化を得たい。その鍵を握るのが食事。だが“鶏ささみ&ブロッコリー”が最適解とも限らない。そこで知っておきたいのがフィットネスライフを底上げする食にまつわる基礎知識。前編では栄養の基礎から3食のカロリーバランス、食欲のコントロール術など…トレーニーのための9つのティップスをご紹介。「これならできる」と思えるものから始めてほしい。
取材・文/井上健二 イラストレーション/金安亮 取材協力/河村玲子(管理栄養士) 編集/門上奈央<br />
初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売
目次
一汁三菜で栄養バランスを整える
ハードに鍛えても、食事を疎かにしていたら成果は上がらない。何より大切なのは、栄養バランスを整えること。糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維という6大栄養素を偏りなく摂ろう。
参考になるのは、一汁三菜という考え方。主食+主菜1品+副菜2品+汁物の5アイテムを揃えると、6大栄養素が満遍なく補える。
主食はご飯やパンなど。エネルギー源となる糖質の供給源となる。
主菜は肉、魚、卵、大豆食品、乳製品などのメインのおかず。タンパク質、脂質などが摂れる。
副菜は野菜、海藻、きのこなどを用いたサイドディッシュ。油断すると足りなくなるビタミン、ミネラル、食物繊維がカバーできる。
汁物は、副菜同様に野菜、海藻、きのこを具材にすると、ビタミン、ミネラル、食物繊維がプラスされる。
ファストフードを因数分解してトッピング
一汁三菜といえば真っ先に和定食が思い浮かぶが、ファストフードも一汁三菜視点で“因数分解”しよう。
牛丼は、主食のご飯に主菜の薄切り牛肉の煮込みが乗っているもの。足りない副菜2品と汁物を追加オーダーすれば、一汁三菜になる。
バーガー店のチーズバーガーは、主食のバンズで主菜のパテとチーズを挟んだもの。サイドを野菜サラダ、飲み物を野菜ジュースにすると、一汁三菜に近づける。
立ち食いそばやうどんは、素のままだとそばやうどんといった主食と汁物しか摂れない。肉そばや月見うどんにして、肉や卵といった主菜をオン。ワカメを入れたり、おひたしを食べたりして副菜を2品揃えたい。
活動量から自分の必要カロリーを知る
自分は1日どの程度のカロリーを摂るべきなのか。それは身長と活動量のみで簡単に求められる。
体重と身長から求めるBMIが22のとき、ヒトはいちばん健康で長生きできる。BMI22のときの体重を「理想体重」と呼ぶ。下の計算式で早速計算してみよう。
この理想体重に30または35を掛けたものが、1日の摂取カロリーの目安。デスクワーク中心で活動量が少ないタイプは30、立ち仕事が多く比較的活動的なタイプは35を掛ける。身長170cmなら、理想体重は63・58kg。活動量が少ない人は1907キロカロリー、活動量が多めな人は2225キロカロリーとなる。こうして求めたカロリーを守っていれば、いずれ理想体重に近づける。
必要なカロリーの求め方
身長170cm(1.7m)で体重70kgならBMI=70÷1.72≒24.2。BMI
25以上が肥満、BMI18.5未満が痩せすぎ(低体重)。理想体重は身長からBMI22になる体重を逆算。それに30か35を掛けたものが摂取カロリーの目安だ。
- BMI=体重(kg)÷身長(m)2
- 理想体重(kg)=身長(m)2×22
- 1日に必要な摂取カロリー(kcal/day)=理想体重×30 or 35
タンパク質を1食20g以上摂る
カラダを変えたいなら、とにかく摂りたいのはタンパク質。筋肉の材料であり、運動で消耗するからだ。
トレーニーが摂りたいタンパク質は体重1kg当たり1.6g。
さらに、食間の筋肉の分解を防ぐには、1食当たり20g以上のタンパク質を摂ることが望ましい。すると消化管から食欲を抑えるホルモンが分泌されて食欲も適度に抑えられる。ただし、一度に30g以上摂っても、タンパク質は体内では効率的に利用されない。30g×3食=1日90g以上のタンパク質を摂るなら、後述するプロテインを食間に活用しよう。
1日に必要なタンパク質量 = 体重(kg )×1.6g
体重から自分の1日のタンパク質の必要量を計算しておこう。体重70kgなら1日の必要量は70×1.6=112gとなる。体重1kg当たり1.6g以上のタンパク質を摂っても効果はないとされる。
カロリー摂取は3:4:3のリズムで
現代人の三食のカロリー摂取量は、おそらく朝食2:昼食4:夕食4といった割合が平均的だろう。
でも、本来はこれから活動を始める朝に多めに食べ、あとは寝るだけの夕食は少なめにすべき。朝食4:昼食3:夕食3が妥当だが、忙しくて作る時間も食べる時間も限られる朝にたっぷり食べるのは難しい。
まずは朝食を少しボリュームアップして朝食3:昼食4:夕食3を目指してみる。仮に1日2000キロカロリー摂るなら、朝食600キロカロリー+昼食800キロカロリー+夕食600キロカロリーとなる。
運動してもお腹が空かないくらいの強度で運動する
運動をするとお腹が空き過ぎて食べ過ぎる。そんな悩みを抱えているなら、ちょっぴりトレーニング強度を上げた方がいいかもしれない。
運動するとカロリーを消費するし、筋肉のグリコーゲンが減り、タンパク質も分解される。それを補うために食欲旺盛になるのが当然の反応だが、アスリートの世界では逆に運動後に食欲が落ちる現象が知られている。これを「運動誘発性食欲不振」という。
メカニズムはまだ完全には解明されていないが、どうやら食欲を調整している消化管ホルモンが関わるようだ。運動誘発性食欲不振は有酸素運動で生じやすく、筋トレでは食欲の低下は有酸素ほど大きくないとされている。
ただし、運動誘発性食欲不振が起こるのは、アスリートのように追い込んだハードなトレーニングに励んだ場合のみ。有酸素運動では、息が切れる寸前の強度(最大酸素摂取量の60%前後)を超えると、運動誘発性食欲不振が生じやすくなる。運動すると食べ過ぎるという悩みがあるなら、直後に少し食欲が落ちるまで、強度を高めてみてほしい。
足りないタンパク質は好みのプロテインで補う
食事のみでタンパク質を1日体重1kg当たり1.6g摂るのは、ぶっちゃけ大変。
そこで積極的に活用したいのが、プロテイン。牛乳などからタンパク質(プロテイン)を精製したパウダー状のサプリで、1食分で15〜20gのタンパク質が摂れる。食間や就寝前などに1日1〜2回補うと、必要なタンパク質量が満たせる。
加えてトレーニング直後は、プロテイン摂取のゴールデンタイム。トレーニングをすると一時的に筋肉の解体が進んでしまうが、プロテインを摂ると合成が優位になり、筋肉の減少をストップさせて増量へ導く。
体内でタンパク質としてもっとも効率的に利用されるプロテインは、牛乳の乳清(ホエイ。ヨーグルトの上澄み部分)のみを高純度で精製したWPI(ホエイ・プロテイン・アイソレート)というタイプ。けれど、それ以上に大事なのは、いろいろ試してお気に入りのマイベストプロテインを見つけること。WPIタイプでも好みに合わないと長続きしない。
朝食を欠食しない
朝食を食べない人は20代で男性の34%、女性の22%に上る。年代を追うごとにその割合は減るものの、一人暮らしに限ると40代男性の25%、同女性の22%が欠食している。
トレーニーになるなら、朝食は食べるべき。欠食は言語道断だ。
寝ている間は絶食しており、筋肉のタンパク質の分解が進んでいる。朝食を食べた瞬間にそのプロセスが中断されて、合成へと大きく舵が切られる。欠食すると、昼食まで筋肉の減少が続くと覚悟すべし。
朝食を抜く人の多くは、夕飯を食べ過ぎてお腹が空いていない。夕飯を控えめにすれば、お腹が空いて自然と朝食を欲するようになる。朝食の自炊が難しいなら、コンビニのサンドイッチ、市販のスムージーといった簡単なものを用意しておこう。
マルチビタミン・ミネラルは摂って損はない
お腹まわりが気になるほど食べ過ぎているのに、栄養が足りていない人は多い。タンパク質以外で欠乏しやすいのはビタミンとミネラルだ。
栄養素は食事から摂るのが鉄則だが、ストレス社会ではビタミン、ミネラルは浪費されやすいし、運動すると必要量も増える。食事のみでクリアするのが厳しいなら、より手軽にまとめて補えるマルチビタミン&ミネラルを役立ててみよう。
そもそもビタミンとミネラルは互いに助け合って働くから、単独ではなくセットで摂るのが正解。商品によるが、1か月当たりのコストは数百円程度だからコスパ抜群だ。