戦場のマインドフルネス。平常心を保つための呼吸法「システマブリージング」
いま、密かにビジネスパーソンの間で流行っている呼吸法が「システマブリージング」。“戦場のマインドフルネス”の異名を持ち、どんな状況でもリラックスするのが狙い。緊張を強いられる職場はもはや戦場。「システマブリージング」を会得してして、いつでも平常心を保てる自分を目指そう。
撮影/小川朋央 スタイリスト/川合康太 ヘア&メイク/村田真弓 監修/天田憲明(公認システマインストラクター、システマ・ボストーク代表)
初出『Tarzan』No.858・2023年6月8日発売
教えてくれた人
天田憲明(あまだ・のりあき)/公認システマインストラクター。システマ・ボストーク代表。小学生のときに格闘技を始め、空手、柔道、中国武術、ムエタイ、ブラジリアン柔術、クラヴマガなどを経てシステマと出合い、2015年に公認システマインストラクターに。カルチャーセンターなどで指導中。
平常心を保つシステマブリージング
いま、ビジネスパーソンの間で密かに流行っている呼吸法がある。「システマブリージング」だ。システマとは、旧ソ連で軍隊用に開発された戦闘術。ソ連崩壊後、指導者の一人がカナダへ亡命したことから世界中に広まった。その神髄は独特な呼吸法にある。
「戦場は平常心でいないと生き残れない。呼吸を止めず、どんな状況でもリラックスするのがシステマブリージングの狙い。“戦場のマインドフルネス”の異名を持ちます。緊張を強いられる職場は実弾の飛ばない戦場のようなもの。だからビジネスパーソンにも受けるのでしょう」(公認システマインストラクターの天田憲明さん)
呼吸法の多くはじっとしたまま行うが、戦場を想定したシステマブリージングは動きながらの呼吸も想定する。「歩きながらリラックスするワーク」を会得し、通勤中などに実践すれば、外出先でもどこでも副交感神経を優位にし、心を平穏に保てるはずだ。
システマ4つの原則
- キープ・ブリージング
- キープ・ポスチャ
- キープ・リラックス
- キープ・ムービング
戦場を前提としたシステマには、呼吸法のほかにも、良い姿勢を保つ、リラックスする、動き続けるという原則がある。
呼吸と姿勢を整えるワーク
両足を腰幅に開いて立ち、両腕を体側で下げてリラックス。鼻から息を吸い、口からロウソクの炎を消すようにフッと息を吐く(呼吸は以下同じ)。この基本呼吸をまず2〜3回行う。
鼻から息を吸いながらバンザイをするように両腕を高く上げ、首を伸ばして視線を高く、視野を広く。口から息を吐きながら、両腕をストンと戻す。これを2〜3回。仕事中や疲れたときに。
呼吸を徐々に深くするワーク
姿勢を整えたら、呼吸を徐々に深くするワークへ。頭の前から後頭部を通るように鼻から息を吸ったら、息を喉から吐くイメージで口から吐く。次はさらに深く吸い、横隔膜から吐くイメージで口から吐く。
同様に鼠蹊部→太腿の真ん中→脛の真ん中→足裏とイメージするポジションを下げ呼吸を徐々に深くする。
歩きながらリラックスするワーク
静止して深い呼吸ができるようになったら、歩きながら深い呼吸を。1歩でスッと鼻から息を吸い、次の1歩でハッと口から息を吐く。
それができたら左右1歩ずつでスッスッと息を吸い、左右1歩ずつでハッハッと息を吐く。同じ要領で呼吸を長くし、最終的には左右5歩で吸い、左右5歩で吐けるようにしていく。
脈を感じるワーク
手首内側の親指の付け根(橈骨動脈)に、反対の手の3指(人差し指、中指、薬指)を当てて脈を取る。リラックスして脈をカウントしながら、5拍で鼻から息を吸い、5拍で口から息を吐く。脈拍が徐々にゆったりするまで続ける。
できたら8拍で吸って吐く→10拍で吸って吐く…と呼吸を少しずつ深くする。
力を抜くワーク
交感神経が興奮してつねに力んでいると、力を抜く感覚が摑みにくい。そこで息を吸って目一杯力んでから、息を吐いて一気に脱力。力を抜く感覚を覚える。
仰向けで、鼻から息を吸って上半身に力を入れ、口から息を吐いてリラックスする。次に鼻から息を吸って下半身に力を入れ、口から息を吐いてリラックス。