【歪みチェックつき】あなたの“足”は大丈夫? 基礎から学ぶ足の機能と重要性
カラダは常に全体が連動して動く。だからいくら、ほかを整えても、土台となっている足を疎かにすれば台なしになることも。あなたの足は大丈夫? 足の構造、運動特性、全身との連動性など基礎知識を押さえたうえで、自分の足の状態を点検しよう。
取材・文/鈴木一朗 イラストデータ撮影/安田光優 イラストレーション/村林タカノブ 編集/堀越和幸
初出『Tarzan』No.853・2023年3月23日発売
菊池恭太先生
教えてくれた人
〈医療法人社団青泉会 下北沢病院〉足病総合センター長。北里大学医学部卒。横浜総合病院整形外科医長、創傷ケアセンターから下北沢病院へ。日本フットケア足病医学会 評議員。著書に『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』(日経BP)。
土台でとくに重要なのは、距骨と踵骨の位置
全身には約200個の骨が存在するが、足の骨だけで左右28個ずつもある。なんと4分の1ほどの骨が足に集まっているのだ。それだからこそ、細かく複雑な動きを、常に滑らかに行うことができるのである。
この足の骨の中でもっとも重要なのが、距骨と踵骨だ。距骨は脛骨および腓骨の土台として接して足関節(距腿関節)を成し、また踵骨の上に乗っかるようにして距骨下関節を形成している。
距骨と踵骨は、たとえば足を一歩踏み出したとき、最初に重量のすべてをここで支える。さらに、足首を回すような動きの中心となるのが、距骨下関節なのだ。
この2つの骨の位置関係が良好であれば正しく立てるし、歩ける。しかし、位置関係が悪くなると、理想的な姿勢を保てなくなり、カラダのいろんな場所が不調に陥る。そして、現代ではそんな人が多いのだ。
距骨、踵骨の位置関係
距骨、踵骨が司る、回内、回外という動き
歩くときに距骨と踵骨によって起きる2つの動きがある。それが、回内と回外だ。
まず足を踏み出して接地する。足は甲の方向に反り(背屈)、爪先は開き(外転)、足底が外方を向く(外返し)。そして、足裏全体が地面を捉えるまで足の骨が緩み、アーチ(土踏まず)が潰れて衝撃を吸収する。これが回内だ。
次の動きは踵を上げながら蹴り出し。そのときは、アーチを元に戻して骨がしっかりとロックされる。緩んだままだと、蹴り出す力が得にくくなり、推進力が小さくなってしまうからだ。
このとき足は足裏方向に曲がり(底屈)、爪先は閉じ(内転)、足底は内側を向く(内返し)。これが回外で、この2つが無意識に使い分けられているのが理想だ。
回内、回外という運動
回外:地面から浮いている状態では、回外は足が底屈、内転、内返しする動き。足裏がついてから蹴り出すまでの間はこの動き。
回内:地面から浮いている状態では、回内は足が背屈、外転、外返しする動き。足裏全体が接地したときがこの動きだ。
距骨と踵骨の位置関係
回外:回外になると距骨が外側に傾きながら上に持ち上がる。習慣化してしまうとハイアーチになり、アーチが沈まなくなる。踵骨の尖端は内側に傾く。
ニュートラル:踵骨の上にまっすぐに距骨が乗る。これが理想の位置関係で、回内、回外をきれいに使い分けることができる配列なのである。踵骨は地面に垂直になる。
回内:右足を前から見たイメージ。回内になると、距骨が内側に傾きながら下に沈む。習慣化するとアーチが潰れっぱなしの扁平足に。踵骨の尖端は外側に傾く。
ところが、生活習慣や日常のクセで、これが上手くいかなくなっていることが多い。回内が過剰に働くと、アーチが潰れて扁平足になってしまうし、回外が過剰になると逆にハイアーチ(甲高)になる。結果、距骨と踵骨のアライメントが崩壊して、それがカラダの不調に繫がることに。
2つの骨の関係悪化が、全体の不調を生む
扁平足とハイアーチは下肢にも影響を与える。立っている状態では、距骨下関節の動きは下肢の関節に運動連鎖を及ぼすためだ。
回内では距骨が内側へと傾くため、脛骨、膝、大腿骨、股関節に同じ方向である内旋力が連鎖して作用する。回外は逆。距骨は外側に傾くので、脛骨もその方向へ傾き、膝、大腿骨、股関節も同じ方向である外旋力が作用する。
回内や回外が過剰な状態では、健康的な歩行や運動を行っているつもりでも、ねじれによって下肢全体の筋肉や関節にまで障害や痛みを発生させてしまうこともあるのだ。距骨と踵骨の関節が正しい位置にあることで正しい運動連鎖が起きる。
足が及ぼす下肢への影響
回外:回外は距骨は外側に傾くので、脛骨もその方向へ傾き、膝、大腿骨、股関節にも同じ方向である外旋力が作用する。
回内:回内では距骨が内側へと傾くため、脛骨、膝、大腿骨、股関節へと同じ方向である内旋力が連鎖して作用する。
また、O脚やX脚も距骨と踵骨の位置関係に影響を与える。
O脚の場合なら脛の傾きを代償するために歩行時の足は回内に誘導されやすくなる。極端なX脚では重心が踵の内側に偏るために距骨と踵骨の関係が崩れて重度の回内に至ることもある。
自分の足は大丈夫なのか、チェックしよう
では、自分の足が危険な回内であるかどうかを確認してみよう。距骨が内側に倒れ下に沈むことで、外見にもさまざまな特徴が表れる。
たとえば、回内であれば、踵方向から足を見たとき、外くるぶしの下のカーブが上よりも強くなる。ニュートラルなら上下のカーブはほぼ同等、回外は外くるぶしの上のカーブが強くなる(チェック1)。
また、同じように、回内は踵の尖端が外側へと傾く。ニュートラルは踵の裏全体で地面を垂直に捉えている。回外だと内側に倒れてしまう(チェック2)。
足を後ろから見るチェック法(右足)
チェック1:回内は外くるぶしの下に強いカーブ。ニュートラルは上下同等。回外では外くるぶしの上が強くカーブする。
チェック2:回内は踵の尖端が外側に倒れる。ニュートラルは踵の裏全体が地面に垂直。回外は内側へと傾く。
チェック3:回内は親指が見えやすい。ニュートラルはどちらも同等。回外は小指が見えやすい。
回内の人のシューズは?
重心が内側にかかりやすい回内の人は、シューズの踵の内側部分がすり減ることが多い。シューズを履いて歩いたときに、なぜかベロが外側へとズレていくという人も回内だ。
ここでは全部で3つのチェックと、回内の人の靴の特徴を紹介した。そして、いくつかで回内に当てはまってしまったら、硬くなった筋肉をほぐし、足裏のアーチを復活させるエクササイズで回内を改善していってほしい。距骨と踵骨の位置関係がよくなっていけば、上体の不調も和らぐ可能性があるのだ。