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腎臓が寿命を決めている!? 老化を進めるリンと腎臓の話

リンと寿命の関連性

一般的に動物は体のサイズが大きくなるほど寿命が長くなる傾向がある。が、人間だけは例外。その理由は老化を進めるリンの排泄を担う腎臓機能の高さにある。寿命を左右するリンと腎臓の関係とそのメカニズムを解説しよう。

教えてくれた人:黒尾誠さん

くろお・まこと/自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授。東京大学医学部卒業。脊椎動物の老化抑制遺伝子「クロトー」を世界で初めて発見。米国テキサス大学で教授を務めた。医学博士。

リンと寿命には関連性がある?

ネズミの寿命は3年、ウサギは10年、羊は20年、ゾウは70年といわれる(いずれも概算の平均値)。ここからわかるように、一般的に動物はサイズが大きくなるほど、寿命が長くなる傾向がある。

その例外ともいえるのが、ヒト。人間はゾウよりもずいぶん小さいが、日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えており、100歳以上の百寿者は9万人を数える。

なぜヒトはサイズの限界を超えて長生きなのか。その秘密の鍵を握っているのが、私たちが素晴らしい腎臓の持ち主だから

「実は、腎臓が動物の寿命を決めているのです」(抗加齢医学が専門の黒尾誠先生)

腎臓が寿命と関わっているのは、血液中の余分なリンを排泄する仕事を担っているため。リン(P)は必須ミネラルの一つである。

動物たちのリン濃度と寿命

横軸:リン濃度(右にいくほどリン濃度が低く、左にいくほど高い) 縦軸:寿命(上にいくほど寿命が長く、下にいくほど短い)

このグラフを見てほしい。縦軸に寿命、横軸に血液中のリン濃度を取ると、右肩上がりのキレイな直線上に動物たちが並ぶ。ヒトはここに並べた動物のなかで、血中のリン濃度がもっとも低く、ゆえにいちばん長生きなのである。

腎臓を活性化して余分なリンを排泄する能力を高めれば、最強のアンチエイジングとなりそう。

腎臓のリン排泄が滞ると老化が進む

リンは老化に関わり、腎臓がリンをスムーズに排泄すれば、老化を緩やかに進めることができるのではないか。

黒尾先生がそう気づくきっかけになったのは、30年ほど前に「クロトー遺伝子」を発見したこと。老化が加速する異常なマウスを調べたところ、なぜかこのクロトー遺伝子が壊れていたのだ。

「クロトー遺伝子の働きがわかったのは、それから10年ほど経ってから。腎臓におけるリンの排泄に関わっており、クロトー遺伝子が壊れるとリンがうまく排泄されなくなり、その結果老化が進行すると判明したのです」

後述するように、リンが溜まりすぎると有害なので、カラダにはリンが溜まりすぎると腎臓から外に出すメカニズムが備わる。そこで大きな役割を果たすのが、骨が分泌しているFGF23というホルモン。腎臓に作用してリンの排泄を促す。

このFGF23をキャッチする受容体となるのが、腎臓のクロトー遺伝子。骨がいくらFGF23を分泌しても、クロトー遺伝子が壊れていたら、「リンを排泄せよ」という骨からの信号は伝わらず、リンが容赦なく老化を進めるのだ。

リンが老化を進める詳しいメカニズム

リンの多くは、体内では「リン酸カルシウム」として存在している。これぞ、骨の主成分。骨はカルシウムからできているとよくいわれるが、実態はリンと結びついたリン酸カルシウム。全身のリンの約80%は骨にある。

「リン酸カルシウムは極めて丈夫な物質。リン酸カルシウムにより、重力に対してカラダが支えられるようになり、海で生まれた生物の上陸が可能になったのです」

残りの20%のリンもまた、体内で不可欠な働きを担う。

全身の細胞を包む細胞膜は、リン脂質。リンと脂質が結びついた物質だ。そして細胞のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)は、その名の通り、3個のリンを含む。ATPからリンが1個外れて、ADP(アデノシン二リン酸)に変わるときの化学的なエネルギーが、私たちを細胞レベルで動かしている。

そんな大切なリンが、どうして老化の引き金を引くのだろう。

血中のリン濃度が高まると、骨以外の場所にもリン酸カルシウムが現れる。血中のリン酸カルシウムは、タンパク質と結合したCPPとして安定する。このCPPに毒性があり、細胞レベルで老化を加速させるのである。

リンが増えると腎機能が急速に悪化する

ヒトは血管から老いる」という金言がある。過大なリンから生じるCPPは血管をボロボロにして、カラダを内側から老けさせる。

具体的には、CPPは血管をセメントのように固める「石灰化」を起こす。すると、血液を運ぶ動脈が硬くなり、血栓という血の塊が詰まりやすくなる動脈硬化が起こる。動脈硬化は、死を招く心臓病や脳卒中の発端となる。

CPPは、他ならぬ腎臓にも深刻なダメージを与える。過剰なリンCPPが大量にできると、腎臓はCPPを体外へ排泄しようとする。そのプロセスで腎臓の尿細管は、毒性の強いCPPに晒され続ける。それで尿細管が破壊されると、そもそも加齢で減りやすい腎臓の基本ユニットであるネフロンの減少に拍車がかかる

ネフロンが減ると、CPPの処理能力がダウン。CPPが、血中にも腎臓の原尿中にも溢れる。それで動脈硬化が進み、さらにネフロンが減るという悪循環から抜け出せなくなり、慢性腎臓病(CKD)のリスクが跳ね上がる

リンは必須ミネラルだが、現代人は摂りすぎ。腎臓を守り、老化を避けるには、食事からリンの過度な摂取を抑えるべきなのだ。

取材・文/井上健二 イラストレーション/市村ゆり 取材協力・監修/黒尾誠(自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授)

初出『Tarzan』No.847・2022年12月15日発売

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