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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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腎臓は、1日に1.4トンもの流れ込む血液を濾過する超働きもの。質量あたりでみると、あの肝臓を上回る代謝量というから驚き。でも実は、腎臓の機能は他にもあるんです。ホルモンや骨の生成にも関連する知られざる腎臓のスゴさに迫る。
やまがた・くにひろ/筑波大学医学医療系腎臓内科学教授、日本腎臓学会理事。筑波大学医学専門学群卒業。米国オレゴン大学分子生物学研究所、筑波大学臨床医学系内科助教授などを経て、現職。医学博士。
腎臓は、背骨の両側にある左右1対の臓器。フォルムは空豆状で、大きさは握りこぶしよりもやや大きいくらい。ヘソの少し上(第11胸椎から第3腰椎)に位置している。肝臓があるため、右側の腎臓は左側よりも少し低いポジションを占める。
背骨側に「腎門」という凹みがあり、そこから血液を運ぶ血管や尿を運び出す尿管が出入りする。表層を皮質、その内側を髄質と呼び、円錐状の髄質と周辺の皮質で腎葉という基本単位を作っている。
腎葉に詰まるのは、ネフロン。
糸球体という毛細血管の固まりをボーマン囊が包む腎小体+尿細管からなる。腎小体は、分子量が大きな血球やタンパク質を濾過して原尿を作る。
原尿を濾過する尿細管は、分子量の大きさでは分類できない物質を排出したり、再吸収したりする。腎小体に近い近位尿細管では水分、ブドウ糖、アミノ酸、ビタミン、ナトリウムなどが再吸収される。その先の遠位尿細管では水分やナトリウムなどの再吸収が行われる。
腎臓の役目をひと言でいうなら、血液を濾過しながら快適な体内環境をキープすること。そのため、多くの血液が流れ込む。
心臓が全身に送り出す血液は、毎分約5L。その20%に当たる約1Lが、腎臓に流入する。1日計1.4トン以上だ。腎臓は2個で240〜300gだから、その3〜4倍もの血液が流れている計算になる。
脳と比べてみよう。脳にも1分間に0.7〜0.8Lの血液が流れているが、脳の重さは体重のおよそ20分の1(5%)。腎臓は脳の4〜5分の1の重さしかないのに、脳より多くの血液が流れているのだ。
その仕事ぶりは盟友・肝臓も凌駕。安静時代謝量に占める割合は肝臓の半分以下だが、重量当たりの代謝量は2倍以上だ。
腎臓の血液の濾過は、簡単にいうと2ステップで行われている。濾過を担当するのは、ネフロン。腎小体とそこにつながる尿細管という細い管で構成されている。
腎臓は、腎小体で第1段階の濾過を行う。腎小体は目の粗いザルのようなもの。体外に出してはならない、赤血球や白血球などの血球とタンパク質を濾す。ゆえに、尿にタンパク質が出てくる尿タンパクは、腎機能低下のシグナル。
腎小体を通過するのは、水分と電解質(電気を帯びたミネラル)。これはオシッコの元になることから「原尿」と呼ばれる。
腎臓が1日に作る原尿は約150〜180L。浴槽1杯分にもなるが、オシッコの量は1日1.5Lほど。原尿は尿細管を通るうち、その99%以上が再吸収されるからである。
腎臓には、副腎という小さな臓器がちょこんと乗っている。
この副腎は、ホルモンを分泌する内分泌器のセンター役。ストレスに対抗するコルチゾール、交感神経を刺激するアドレナリンなどのホルモンを作る。そして、腎臓自体も、いろいろなホルモンを出している。
その代表格はレニン。
血圧はつねに変動するが、血液の安定的な濾過には血圧を一定にしたいところ。そこで血圧の低下を感知すると、腎臓はレニンを放出。アンジオテンシンⅡというホルモンの生成を促す。アンジオテンシンⅡは血管を縮め、ナトリウム量をキープし、循環する血液を増量して血圧を上げる。
この他、腎臓は酸素を運ぶ赤血球の合成を促すエリスロポエチンも作っている。
骨は、カルシウムとリンが合体したリン酸カルシウムとタンパク質から作られる。この骨を強く丈夫にするのも、腎臓に他ならない。
小魚や乳製品などに含まれるカルシウムは、腸管からの吸収率が悪い。このカルシウムの吸収を助けるのが、ビタミンD。ビタミンDは鮭などの食べ物に含まれるし、皮膚でも紫外線を浴びると合成されるが、いずれもそのままでは働けない。
「肝臓と腎臓で活性型ビタミンDとなって初めて働けるようになるのです」(腎臓専門医の山縣邦弘先生)
活性型ビタミンDは腸管でカルシウムとリンの吸収を促し、尿細管からのカルシウムとリンの再吸収を促進。骨を作る材料を提供する。
取材・文/井上健二 イラストレーション/野村憲司(トキア企画)
初出『Tarzan』No.847・2022年12月15日発売