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小島慶子さん・原田龍二さん対談 更年期とどう向き合うか

原田龍二 小島慶子 更年期 対談

数年前にカラダの不調を感じ始め、自身の更年期について発信しているエッセイストの小島慶子さんと、最近妻・愛さんが更年期の症状を訴えている俳優の原田龍二さん。立場は違えど同じ悩みと向き合う同世代の2人に、「更年期」を真剣に語ってもらった。

家族や医者に適切に頼ることが大切

原田さん
小島さんが更年期を自覚し始めたのはいつ頃からですか?
原田龍二 小島慶子 更年期 対談

原田龍二さん(はらだ・りゅうじ)/1970年生まれ。映画、ドラマなどで活躍。『バラいろダンディ』(東京MX)金曜MC。映画『太陽とボレロ』に出演中。新著『精霊たちのブルース』(万代宝書房)を上梓。

小島さん
数年前、40代中頃ですね。

頭痛やめまいを起こすことが増えてきて、最初は「疲れが溜まっているのかな?」ぐらいに思っていたのですが、その後膣の突き当たりのあたりに常に静電気が溜まっているような不快感を感じ始めて、次第にイライラするようになってきました。

腰にアースを付けて今すぐ電気を抜きたい!って。

原田龍二 小島慶子 更年期 対談

小島慶子さん(こじま・けいこ)/1972年生まれ。TBSアナウンサーを経てエッセイスト、タレントとして幅広く活躍。『さよなら! ハラスメント』(晶文社)など著書多数。東京大学大学院情報学環客員研究員。

原田さん
それはしんどいなあ…。
小島さん
この症状は何?と思ってネットで検索してもよくわからないし、昔からお世話になっている婦人科で感染症や他の病気を調べてもらっても異常はない

すると先生が「小島さん、これは更年期の症状かもね」って。それでいよいよ私にも来たか、と。以来、ホルモン剤を処方していただいたり、肩こりやメンタルの不調を和らげる薬を飲んでいます。

ホルモン剤は2種類あって、ジェル剤を内腿やお腹のあたりに毎日塗るのと、月に1回注射剤で補充しています。あとは漢方薬も組み合わせたり。

原田さん
そうした対処法でだいぶ落ち着かれたんですか?
小島さん
はい。私は昔から自分のカラダの仕組みに興味があって、その婦人科にも長年通って先生に何でも話してきたので、私のカラダの変化を確実に感じ取ってもらえたからよかったのかもしれません。
原田さん
婦人科に行くハードルは結構高いっていいますよね
小島さん
婦人科の診察台ってご覧になったことありますか?
原田さん
いや、ないんです。
小島さん
なかなか大胆な作りで、歯医者さんにあるような椅子に座ると、両脚が上がって自動的にガバッと開かれちゃう。これに抵抗を持つ人がいるかもしれませんね…。

そういえば原田さんの奥様も更年期の症状で通院なさっているとか。

原田さん
そうなんです。以前から発汗やカラダのほてりなどホットフラッシュの症状があったのですが、四十肩の治療で病院に行った際、プラセンタ注射をしたらついでにホットフラッシュも楽になったと。

以来たまに注射していますね。

小島さん
私は未経験ですけど、ホットフラッシュは冬でも急に滝のような汗が流れてくるんですよね。そのあたりの悩みは原田さんもちゃんと聞いてあげたのですか?
原田さん
はい。体調に関する話は更年期に限らず家族の間で普通にしていますし、基本的に女性のカラダは繊細なので、具合が悪かったり気分が優れないようなら、聞いてあげることで少しでも楽にしてあげたいなと思っています。
小島さん
ささいなことでも家族に話すと落ち着くんですよね。

わが家は8年前から生活拠点をオーストラリアに移していて、夫と2人の息子が向こう、私が日本に単身赴任という状況なのですが、私は家族に何でも話すので、更年期のこともビデオ通話で普通に打ち明けました。

女の人は生理がなくなるタイミングで必ずそういう変化があるんだよ」って。

原田龍二 小島慶子 更年期 対談

今まで更年期が正しく理解されていなかった

原田さん
小島さんが更年期について発信しようと思った理由は?
小島さん
30代の頃、テレビのバラエティ番組で「よっ! 更年期」とか「更年期だからイライラしてんだろ?」と男性共演者たちにからかわれたのがきっかけなんです。

“もう20代ではない女性”に向かって年齢を強調するつもりで言ったのだと思います。「更年期」という言葉に若くない女性をバカにする意味合いを込めたんだなと。

ショックでした。そもそも更年期が正しく理解されていないなって感じました。

原田龍二 小島慶子 更年期 対談

原田さん
今は違うけど、昔のテレビはそういう物言いが許される空気がありましたよね。
小島さん
その頃から、いざ自分が更年期になったら、それを悪口のように言うのはおかしい、みんな更年期で辛い思いをしているんだよってしっかり伝えようと考えていました。

あと、今まで「私は更年期です」と堂々と語る人があまりいなかったというのもありますね。やっぱり発言しないと理解はなかなか深まらないなって。

ところで原田さんは男性更年期的な症状を自覚することはあるんですか?

原田さん
それがまったくないんですよ(笑)。周りが風邪をひいても僕はひかないし、至って丈夫。50を過ぎてもアクションシーンをバッチリこなせます。
小島さん
やっぱり、普段から鍛えていらっしゃるから。
原田さん
何か特別なことをしているわけじゃないですけど、昔から毎日走っていて、定期的に近所の公園のゴミ拾いをしたりも。地味だけど生活の中でこまめにカラダを動かすよう心掛けているので、体力面の衰えはあまり感じません。

ただ、ここ数年記憶力が落ちたな~とは感じています。セリフひとつとっても30~40代と比べて覚えが明らかに遅くなっているし、同世代の友人と話していても、固有名詞がなかなか出てこないのはしょっちゅう。「ほら、あのあれだよ」なんて会話ばかりです(笑)。

でも年をとれば自然と男性ホルモンも減っていくでしょうから、それは仕方ないのかなと。

小島さん
男性の更年期はカラダよりもメンタルに来やすいって聞いたことがあります。

こんな時代だからこそ根源的な生き方に学びたい

原田さん
僕はプリミティブな世界が好きで、昔はテレビ番組の『世界ウルルン滞在記』で先住民族を訪ねて一緒に生活した経験もあるのですが、現代においても狩りを生活の糧とする彼らも、僕らと同じように更年期の症状が出たりするのか? と考えることがあるんです。

生きるか死ぬかの状況で暮らしていると、更年期という概念は限りなくゼロに近い気がするんです。

小島さん
なるほど。
原田さん
ああいう世界で暮らす民族には、統計的にも自殺する人がまずいないんです。

女性は生理が終わる時期にカラダの変化という形で更年期が訪れますが、男性更年期に関してはいろいろと進化しすぎてしまった社会の負の側面の表れじゃないのかな、とも感じるんです。

あまりにもストレスを溜め込みすぎているというか。

小島さん
女性も男性も、ストレスフルな社会に生きてますもんね。

原田龍二 小島慶子 更年期 対談

原田さん
こういう混沌とした時代だからこそ、彼らの昔からの風習や文化、知恵から学べることがたくさんあると思うんです。根源的な生き方のエッセンスを取り入れることで、カラダもメンタルももっとタフに、かつ他人に優しくなれる。

あとはデジタルデトックス。今はどうしてもスマホに向かう時間が長くなるので、一日数十分でいいからスマホを手放して公園で森林浴をしたり、お寺で座禅を組んだりすると、心がクリアになってスッキリします。

自分を無の境地に近づけるのも男性更年期対策になるんじゃないかな。

小島さん
先住民族における更年期」。興味深いテーマですね。従来、彼らの平均寿命はそう長くなかったはずで、それが現代医療の恩恵を受けて延びたときに、どんな形で更年期の問題が表出するのか…。

考えてみれば、ほんの70年前まで日本人の平均寿命も60歳台だったんですよね。当時は寿命が短い分、更年期が問題になることは少なかったのでは。

原田さん
高齢化社会もそうだし、特に日本の社会は複雑になりすぎていると感じますよ。
小島さん
日本は第二次世界大戦の敗戦から、経済発展へと突き進みました。それを可能にしたのは男性の長時間労働中心の社会で、家庭を顧みることなく誰も彼も出世競争に明け暮れていた。いわば男性ホルモン全開で仕事に邁進していたんですね。

でも、頑張れば給料が上がるから無理ができたんですよね。もう20年も給料が上がっていない今の日本で、今までのような働き方は疲弊するだけです。

加えて、長く働く女性が増えています。昇進の機会と重なる更年期の不調が大きな問題になっている。現代の更年期って、働き方問題ともリンクしているんです。

原田さん
確かに、僕らの世代は人数が多いから責任ある立場の人が更年期に差し掛かっているし、親世代の介護や子育ても抱えている。
小島さん
NHKの調査では、過去3年以内に更年期症状を経験した人のうち、給料が減るなど仕事にマイナスの影響があった人は男女合わせて約100万人。更年期の影響で離職する人も増えていて、その経済損失は年間6300億円に上るそうです。

これは更年期で休める制度がないのが大きく関係していて、各企業は“更年期休暇”を真剣に考える時期に来ているんですよ。従来の組織だと、少し体調を崩すと「あいつはもうダメ」と見放される空気があった。でも人は誰しも調子が悪くなるのが当たり前だし、そんなときは更年期も含めて、普通に「休みます!」と言える社会になってほしいなって。

また、誰かが休みをとっても業務をカバーできる仕組みを整えることも大事。そうすれば周りも「この忙しいときに何やってんだ」ではなく、ちゃんといたわってあげられますから。

原田龍二 小島慶子 更年期 対談

原田さん
体調の悪さを普通に言える社会にするには、学校教育から見直す必要がありますよね。

僕らの世代だと、小学校で授業中にトイレに行きたいと言うと笑われる雰囲気があったじゃないですか。特に大便だと「あいつ学校でウンチした」なんてバカにされて。

小島さん
昔はありましたよね。
原田さん
バカにされたくないから限界まで我慢して最後は漏らしてしまったり。便が出るのは当たり前。絶対笑ってはいけないのにそれが染みついてしまっているんですよね。

子供も大人も、そこでコソコソする必要はない。そういうことを小さい頃から教えてあげないと。

小島さん
心から同意します。排泄や生理などは誰にでもある自然な現象なのに、笑い事にされているんですよね。だから隠したくなってしまう。
原田さん
そういうことは笑うもんじゃない、堂々としていていいんだ、と言える社会になれば、働く世代の更年期問題も解決の糸口が見えてくるのでは。

ちゃんと「人体リスペクト」できる社会になってほしい

小島さん
思うに、今までは人体へのリスペクトが足りなかったんですよね。年は必ずとるし、更年期にはなるし、生殖器や子宮の機能は衰えていく。それを普通に話せれば、みんなもっと楽になると思います。

実際、自分の更年期について発信することで、初対面の女性からも「私も更年期で大変なんです」と打ち明けられる機会が多くなりました。仲間が増えた気分

原田さん
リスペクトという意味では、奥さんや旦那さんの更年期についてもっと学ぶ必要がありますよね。男女のカラダは全く違うからこそ、ちゃんと知らないと相手のことをわかってあげられない

あと、普段からちゃんとコミュニケーションをとっていないと、お互い辛さを気軽に話せませんよ。

小島さん
悩みを話せる夫婦関係って本当に大事だなって思います。私の夫は7歳年上なのですが、自分のことを事細かに話すタイプではないんです。

でも、最近話をするなかで、夫が数年前から心身ともにしんどかったこと、最近そのモヤモヤが晴れたことなどを告白してくれて。「だから慶子の更年期の辛さが理解できる」とも。

つまりそれが彼にとっての更年期だったのかなと。もっと話を聞いてあげればよかったと後悔しました。

原田さん
僕もあまり弱音を吐けない昔気質だから旦那さんの気持ちはわかります。でも、辛かったら一番近くにいる奥さんや旦那さんには言ってもいいのかなって。
小島さん
私たちの世代は「男は強くあらねばならない」という刷り込みがあるので、「そんなの聞きたくない!」となるかもしれないですが、そこは態度に出さず、男性にも更年期の辛さはあるんだって理解できるといいですよね。

即ち相手の老いを受け入れることなのですが、そのことは決してマイナスではない。自分も更年期を経験しているからこそ、相手をいたわる気持ちも芽生えてくると思うんです。

第2次ベビーブーム世代の私たちが更年期を機に「若さ」から降り、今後の人生をどう心地よく過ごすかを考えることは、経済優先で人にやさしくない日本社会を大きく変えるかもしれない。今はそんなことも考えているんです。

取材・文/黒田創 撮影/山城健朗 スタイリスト/天水沙織(小島さん) ヘア&メイク/中台朱美(小島さん) イラストレーション/3rd eye

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