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役割はこんなにも多彩。テストステロンは、男性にとって大切な“正義ホルモン”

性行動や性機能に関わり、筋肉の細胞に働きかけてタンパク質合成を促し、トレーニング効果を高める。数あるホルモンでも、男性にとってとくに大切なのが、男性ホルモン(アンドロゲン)。その大半を占めるのは、テストステロンだ。

1. その役割はこんなにも多彩だ。

数あるホルモンでも、男性にとってとくに大切なのが、男性ホルモン(アンドロゲン)。その大半を占めるのは、テストステロンだ。

テストステロンの働きでいちばん知られているのは、男性らしいカラダつきへ変貌させる思春期の第二次性徴に関わる作用。

でも、成人だって毎日朝になるとドッと分泌されており、性行動や性機能に関わる。この他、テストステロンは筋肉の細胞に働きかけてタンパク質合成を促し、トレーニング効果を高めている。

「さらにテストステロンは腎臓に働いて血を作る造血を促したり、血管を強くしたりするなど、全身に作用しています」(千葉西総合病院泌尿器科部長の久末伸一医師)。

テストステロン

男性のテストステロンは、おもに精巣で作られている。そこへ指令を出しているのは、脳にある下垂体。下垂体が作る黄体化ホルモン(LH)が精巣に働きかけるのだ。大事なホルモンだから、精巣を持たない女性でも副腎で合成されており(男性も副腎で合成する)、その濃度は男性の3分の1ほどに達するという。

加齢に伴うテストステロンの濃度の変化は心身に大きな影響を及ぼす。その点については、こちらの記事で詳しく触れることにしたい。

2. テストステロンは筋肉も骨も強くする。

テストステロンは筋肉ばかりではなく骨の新陳代謝にもひと役買っている。

骨には、骨を分解する破骨細胞と合成する骨芽細胞が潜み、筋肉と同じように新陳代謝を行う。テストステロンは骨芽細胞を活性化する作用があり、骨を強くしてくれるのだ。

そしてテストステロンが骨を強化するルートがもう一つ。

男性の体内で、テストステロンの一部はアロマターゼというホルモンで女性ホルモンに転換される。女性ホルモンは骨芽細胞を活性化するだけでなく、破骨細胞の活動を抑えるので、骨はより頑丈になる。

この女性ホルモンの働きで女性は骨の健康を守っているが、45〜55歳前後に閉経すると女性ホルモンの分泌量が一気にダウン。あおりをモロに受けて骨は弱体化しやすい。男性より小柄でそもそも骨量が少ないアウェーな状況も裏目に出て、閉経後は骨がスカスカになり、骨折しやすくなる骨粗鬆症に陥りやすい。

男性も加齢でテストステロンは減るが、閉経前後の女性ホルモンのような劇的な減少はない。歳を重ねてもテストステロンから女性ホルモンを作るルートは残るので、骨は丈夫に保てる。骨粗鬆症の男女比が1:3で男性に少ないのは、テストステロンによるところが大きいのだ。

3. テストステロンはメンタルにも関わる。

テストステロンは脳に作用してメンタルをも左右する。

第一にテストステロンは、リスクを取って挑む気持ちを高める。トレーダーを調べた研究で、テストステロンの分泌量が多いと大きな勝負に出やすいことがわかっている。

チャレンジに成功し、投資やゲームなどに勝つと、テストステロンの分泌量は増える。分泌量が増えるとより大胆になり、それが勝利を呼び込むという好循環が生まれる。スポーツのリーグ戦で、一般的に初戦に勝った方が有利とされるのは、おそらく勝者のホルモンであるテストステロンの援護射撃のおかげだろう。

「負けた場合、そのゲームを繰り返しビデオで観て客観視すると、次はこうやって勝ってやろうという意欲が湧くようになり、テストステロンの分泌も増えて勝率が上がります」

テストステロンが多い人はウソをつかない。
テストステロンが多い人はウソをつかない。/サイコロの目×1ユーロがもらえるゲームを実施。6を0ユーロとすると5が最も儲かる。どの目も出る確率は均等だが、テストステロンを塗らないと5が出たとウソをつく人が多いのに、塗るとウソが減り確率は均等に近づく。
Libra et al. PNAS 2012

勇ましい話だけではない。テストステロンを塗り薬で与えると、ウソをつきにくくなるという実験もある。テストステロンは「正義ホルモン」でもあり、テストステロンが増えると正義の味方にもなれそうだ。

筋骨隆々の肉体を武器に勇気を持って冒険するのに、ウソが嫌いでフェアなジェントルマン。テストステロンがリッチなら、まるでラガーマンのような人間に生まれ変われそう。

4. テストステロンは免疫だけは下げてしまう。

フィジカル面でもメンタル面でも、テストステロンはとことん善玉。そのほとんど唯一の弱点が、免疫との関わり。詳しい理由は不明だが、テストステロンは免疫だけは下げてしまうのだ。「男なら太く短く、骨太に今日を生きろ!」というのが、テストステロンからの秘めたメッセージなのか。

たとえば、インフルエンザウイルスの罹患率には男女差があり、男性の方が女性よりもインフルエンザに罹って重症化しやすい(新型コロナウイルスの死者も男性の方が多いという報告がある)。これはテストステロンが免疫を下げる一方、対照的に女性ホルモンには免疫を高める働きがあるからだと考えられる。

女性の方がワクチンが効きやすい
女性の方がワクチンが効きやすい。/インフルエンザワクチンに対する反応性。テストステロンが少ない女性は男性の2倍も免疫反応が起こって効きやすい。男性でもテストステロン濃度が低い方がワクチンに対する反応性は高い傾向。
Furman et al. PNAS 2012

さらに、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に罹りやすい人は、テストステロンの濃度が低い傾向がある。テストステロンの濃度が低いと免疫力は高いはずだから、アレルギーには罹りにくい気がする。でも、現実は真逆なのである。

「免疫とは、異物を排除する働き。アレルギー疾患の多くは、このシステムの誤作動により、自分の細胞を異物と見誤って攻撃して生じます。もともと免疫力が高いタイプほど、その反応が激しく起こり、アレルギーに罹りやすいと考えられます」

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗、谷尚樹(しおざわクリニック取材) スタイリスト/山内省吾 ヘア&メイク/大谷亮治 取材協力/久末伸一(千葉西総合病院泌尿器科部長)

初出『Tarzan』No.782・2020年2月22日発売

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