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薄毛、ED、寿命。加齢によるテストステロンの減少で起こること

近頃、加齢によるテストステロンの減少は従来の予想よりも心身に大きなインパクトを与えるとわかってきた。薄毛、ED、寿命まで、男性によっていかにテストステロンが重要なのかをお伝えします。

1. テストステロンは、加齢で減る。

歳を重ねても、テストステロンは女性ホルモンほど急激には減らない。だが近頃、加齢によるテストステロンの減少は、従来の予想よりも心身に大きなインパクトを与えるとわかった。

体内を循環するテストステロンには3つのタイプがある。

もっとも多いのは、肝臓が作るタンパク質であるSHBG(性ホルモン結合グロブリン)と合体したSHBG結合テストステロン。全体の35〜75%を占める。次に多いのは、やはり肝臓で合成されるアルブミンというタンパク質と合体したアルブミン結合テストステロン。これが全体の25〜65%。そして最後は何とも結合していないフリーテストステロン。わずか1〜2%しかない。

SHBG結合テストステロンは分子量が大きすぎて細胞内に入れないため、テストステロンとしての活性がほとんどない。体内で活躍できるのは、アルブミン結合テストステロンとフリーテストステロン。両者を合わせて生物学的活性テストステロンと呼ぶ。心身に響くのは、この生物学的活性テストステロンの減少だ。

「加齢でもトータルのテストステロン量はそう減らないのに、生物学的活性テストステロンは緩やかに減ってくるため、それに応じてさまざまな不調が起こりやすいのです」

加齢に伴う性ホルモンの変化
加齢に伴う性ホルモンの変化。/男性ホルモンも女性ホルモンも20歳前後が分泌のピーク。女性は45〜55歳前後で閉経を迎えると、女性ホルモンは激減する。男性ホルモンは女性ホルモンほど減らないが生物学的活性テストステロンは20代後半から右肩下がりで減り続ける。
原図/久末伸一

2. テストステロンが減ると薄毛になりやすい。

テストステロンが多い人は毛深いというのは俗説だが、テストステロンが減ると薄毛(進行性男性型脱毛症。以下AGA)になりやすいというのは真実。

AGAの直接の原因は、テストステロンが5αリダクターゼという酵素で転換されたジヒドロテストステロン(DHT)。毛根の細胞に作用し、生え替わりの周期であるヘアサイクルを短くする。結果、未熟で細く短い毛が増えるので、頭髪は薄くなるわけだ。

逆説的だが、DHTが増えるのは、テストステロンが減ったから。

「DHTはテストステロンの30倍もの活性がある物質。テストステロンが減ると、それを補おうと酵素で転換されるDHTが増えるため、AGAが起こりやすくなるのです」

AGA治療薬である《プロペシア(成分名フィナステリド)》は、テストステロンからDHTを合成する酵素の働きをブロック。ヘアサイクルを正常化して太い頭髪を増やす。

DHTは前立腺にも働きかけて、前立腺肥大を起こす。前立腺肥大にも、AGA同様にDHTを合成する酵素を阻害する薬が使われる。

ただしDHTは、脳で記憶を担う海馬に不可欠。AGAや前立腺肥大を治すためにDHTを減らしすぎると海馬が萎縮してしまい、認知症になる恐れもある。

3. テストステロン減少で、寿命にも悪影響。

加齢で活性のあるテストステロンが減ると、寿命も縮むかも。こちらの記事のようにテストステロンは免疫を下げるが、少なすぎても死亡率は上がるのだ。

寿命との関係で、まず注目したいのは血管

血管は栄養素や酸素を全身に運ぶ大事なインフラ。「人は血管とともに老いる」という言葉があるように、血管が硬く細くなり、詰まりやすくなる動脈硬化が起こると、老化が進んで病気リスクが高まる。テストステロンは血管を広げるNO(一酸化窒素)を出す酵素を刺激し、血管をしなやかに保つ。その分泌が減ると動脈硬化は進みやすいのだ。

次に目を向けたいのは、肥満

テストステロンは筋肉のタンパク質合成を促して筋肉量を保つ。テストステロンが減ると筋肉が落ち、その分だけ代謝がダウン。食事量を増やさなくてもエネルギーが溜まりやすくなり、余った分は体脂肪として溜まる。中年太りの引き金だ。

体脂肪が内臓まわりに溜まりすぎて太る内臓脂肪型肥満になると、血圧や血糖値を上げたり、血中の脂質代謝を乱したりする悪玉物質が分泌されるようになる。行き着く先は、メタボリックシンドローム。メタボもまた動脈硬化のリスクで、心臓病や脳卒中を招いて寿命を縮める。

テストステロンが多い人ほど長生き
テストステロンが多い人ほど長生き。/40〜79歳の男性を平均6〜10年間にわたってフォロー。テストステロンの濃度と生存率(寿命)を調べた研究。分析の結果、テストステロンの濃度が高いグループの方がより生存率が高くなることが判明した。
Khaw KT et al. Circulation 116: 2694-2701, 2007

4. EDとテストステロン。

男性にとって薄毛と並び、気になるのがED(勃起障害)。EDとは、満足なセックスを行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態である。EDを自覚する人は30代から現れて、50代では20%に達する。

テストステロンは性欲を高めてくれるから、セックスのやる気が起こらないのはテストステロンが減っている恐れがある。テストステロンは睡眠時勃起、いわゆる朝立ちも起こしているから、朝立ちが減ってきたらテストステロンの減少を疑う

だが、EDはテストステロンの減少のみで起こるわけではない。

勃起は、ペニスの中身である海綿体というスポンジ状の組織が充血して起こる。EDの背景にあるのは血行不全であり、動脈硬化が進んでいる恐れもある。ペニスの動脈は直径約2mmと細いから、動脈硬化が起こると真っ先にとばっちりを受けて、血行不全に陥りやすいのだ。

EDの治療に用いられるのは、ペニスの動脈に潜むPDE5という酵素の働きを邪魔するPDE5阻害剤。《バイアグラ》や《レビトラ》といった商品名で知られている。

「PDE5は血管を緩めて広げる物質を分解する酵素。PDE5阻害剤はその作用をブロックし、血管を広げてペニスを充血しやすくします」

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗、谷尚樹(しおざわクリニック取材) スタイリスト/山内省吾 ヘア&メイク/大谷亮治 取材協力/久末伸一(千葉西総合病院泌尿器科部長)

初出『Tarzan』No.782・2020年2月22日発売

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