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目指せ、骨量キープ! 今日から始める骨トレ【理論編】

3月7日発売の雑誌『Tarzan(ターザン)』760号では、「カラダを10歳若くする! 今日からできる“体組成改善メソッド”」と題し、体組成にフォーカスしている。体組成とはカラダを作る筋肉量、体脂肪量、骨量などのことだが、本記事では、なかでも骨量に注目。生活習慣病を防ぎ、男性機能も保つために重要な骨の鍛え方を解説! まずは基本となる4つのポイントをチェックしてほしい。

1. 骨量と骨密度の違いをしっかり理解しておこう。

骨の健康度の指標に骨量と骨密度がある。混同しがちだから、骨太を目指す前に整理しておこう。

骨は全身を支える柱。タンパク質の一種、コラーゲンなどから作られたフレームに、カルシウムやリンなどのミネラルからなる骨塩(ハイドロキシアパタイト)が硬く結晶する。鉄筋コンクリートの柱に喩えるならタンパク質が鉄筋、骨塩がコンクリートだ。

年齢、性別で見る骨量の変化を示したグラフ
年齢、性別で見る骨量の変化
男女ともに30代までに人生における最大量(ピーク・ボーン・マス)を迎えると後は右肩下がり。ことに骨量を保つ働きがある女性ホルモンの分泌が激減する閉経以降の女性は減り方が顕著だ。

骨量はタンパク質+骨塩。体組成計で推定値がわかるのは、この骨量である。骨量は20〜30代をピークに加齢で減りやすい傾向がある。骨量と似た言葉に骨塩量がある。これは骨塩の量のみを表し、X線や超音波を用いて測る。

骨量や骨塩量が骨の量を反映するなら、その質を示すのが骨密度。骨塩量を骨の面積や体積で割って求める。たとえ骨量や骨塩量が大きくても、骨密度が低いとスカスカで骨太とはいえない。

「体組成計で骨量が正常と出ても安心せず、医療機関などで骨密度も測ってください」(骨代謝に詳しい内科医の藤澤孝志郎医師)

骨量と同時に骨の質も大事にしたい
量だけではない。質も同じように大事にしたい
たとえ骨量が大きいとしても油断大敵。骨密度が低いと骨の質が落ちるので、骨粗鬆症や骨折などのリスクが上がる。量は質を補えないし、質は量を補えない。量と質の両立を目指して。

2. 骨は電気を発し、カルシウムを引き寄せている。

さきほど骨を鉄筋コンクリート製の柱に喩えたが、両者には大きな差がある。後者は一度作ったらそのままだが、骨はつねに分解と合成を繰り返し、全身の骨は約3年ですっかり入れ替わるのだ。

骨が入れ替わるのはなぜか。

第一に人体にカルシウムは絶対に不可欠。筋肉や神経の活動のスイッチを入れているのは、カルシウムなのである。骨はこのカルシウムの貯蔵庫としての役割も担っており、カルシウム濃度を保つために骨を分解して放出するのだ。

骨がカルシウムを集めるピエゾ効果の仕組み
骨がカルシウムを集めるピエゾ効果の仕組み
カルシウムはプラスに帯電したイオン(Ca2+)として流通。骨を圧迫するとマイナスの電位が生じ、カルシウムイオンが集まりやすい。“ピエゾ”は「圧搾する」という意のギリシャ語から。

第二に骨は古くなると弾力性を失い、脆くなる。これを防ぐために定期的に生まれ変わっている。

カルシウムを放出する一方では、骨は脆くなるだけ。そこでカルシウムを骨に定着させるシグナルがある。それは骨への圧力。

規則正しい結晶体である骨に圧力を加えると圧電効果(ピエゾ効果)という現象で骨がマイナスに帯電。血中のカルシウムのイオンはプラスなので、運動などで骨を刺激するとカルシウムが引き寄せられて骨は丈夫になるのだ。

3. 骨が目減りすると、顔もカラダも老ける一方だ。

私たちは筋肉や体脂肪の増減に一喜一憂しがちだが、骨にも注目。

30歳以降、骨量は減る一方でV字回復させるのは難しい。成長期以降は骨の長さと太さは変わらず、筋肉のように肥大しないからだ。

骨が弱くなる最大のデメリットは骨粗鬆症のリスクが上がること。骨粗鬆症とは骨がスカスカになって骨折しやすくなった状態だ。

破骨細胞と骨芽細胞による新陳代謝
破骨細胞と骨芽細胞による新陳代謝
骨を分解するのは、血液由来の破骨細胞。コラーゲンやカルシウムを溶かし、血液中に流出させる。それに対抗して骨を作っているのは、骨の内部に控えている骨芽細胞。コラーゲンを作り、カルシウムを吸着させて骨を再合成する。

骨量の減少はカルシウムの減少から始まる。骨粗鬆症かどうかの判定は骨量に加え、おもにカルシウムの密度を反映する骨密度の測定を介して行われる。骨密度が20〜40代の平均値(YAM)の70%未満だと骨粗鬆症の疑いがある。

化粧品に走る前に顔の骨トレをきちんと行おう
化粧品に走る前に顔の骨トレをきちんと行おう
目尻のシワ、目の凹み、ほうれい線、首のシワ……。皮膚の老化によるものだと思われているエイジングの大半は皮膚を下支えする下顎の骨などの萎縮による。肌ケアの前に骨ケアを!

骨の減少は外見の老けにも直結する。皮膚が弛むと老けて見えるというけれど、その背景には皮膚を支える骨の萎縮が隠れている。

「なかでも萎縮しやすいのは下顎の骨。ここが縮小すると顔の弛みやシワの原因となります」

運動と食生活改善で骨量を保ち、骨密度を上げる骨トレをすると、骨粗鬆症も老け顔も防げる。

骨密度の判定
骨密度の判定/70%より減ったらNG
骨粗鬆症かどうかの医学的な診断には、骨折の有無などの判断基準が加わる。厳密な判定を脇に置くと、20〜44歳の平均値から骨密度が70%より減少してしまったら、体組成に異常が生じて骨が脆くなっていると覚悟した方がいい。※YAM(Young Adult Mean、20〜44歳の平均値)

4. 骨を鍛えると、生活習慣病を防ぎ、男性機能も保たれる。

骨太を志して運動と食生活の見直しにせっせと励んでいると、見逃せない御利益がある。

それは骨芽細胞が分泌するオステオカルシンというタンパク質が増えてくることによるもの。

オステオカルシンにはホルモンのような機能があり、膵臓でのインスリン分泌を促して糖尿病を防いだり、脳の海馬に働きかけて認知機能を引き上げたりする。

骨代謝が低下する骨粗鬆症ではオステオカルシンの分泌もダウン。認知症のリスクも高まる。実際、藤澤先生が診た認知症患者約50名は全員骨粗鬆症であり、その半分は骨折経験があったという。

そのうえオステオカルシンは男性の精巣に働きかけて、男性ホルモンのテストステロンの分泌を促してくれる。テストステロンは骨や筋肉を強くするほか、精力ややる気の源でもある。

テストステロンは加齢で減りやすく、それが40代以降のいわゆる男性更年期やうつ病の引き金にもなるとされる。骨トレでテストステロンの維持・増量を図ろう。

取材・文/井上健二 イラストレーション/加納徳博 取材協力/藤澤孝志郎(Dr.孝志郎のクリニック院長) 参考文献/『世界一効率よく若返る! 1日5秒骨トレーニング!』(藤澤孝志郎著、ビジネス社刊)

(初出『Tarzan』No.760・2019年3月7日発売)

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