その不調「男性更年期」かも。いますぐできるチェックシート
更年期は女性にしかないと思われてきたが、テストステロンの減少によるLOH症候群はいわば男性更年期。女性の更年期は通常中年以上にならないと始まらないが、男性更年期であるLOH症候群は早い人では30代から起こることがある。まずは、LOH症候群の有無をチェックしよう。
取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/山内省吾 ヘア&メイク/大谷亮治 取材協力/久末伸一(千葉西総合病院泌尿器科部長)
初出『Tarzan』No.782・2020年2月22日発売
1. LOH症候群の有無をチェックする。
やる気が出ない、集中力が足りない、疲れやすい、お腹が出てきた、ほてりや発汗がある、朝立ちが減ってきた…。こうした徴候が出てきたら、テストステロンの減少による「LOH症候群」を疑った方がいい。
更年期は女性にしかないと思われてきたが、LOH症候群はいわば男性更年期。働き盛りにうつや不安を感じるミドルエイジ・クライシス(中年の危機)の大半も、おそらくLOH症候群だろう。
女性の更年期は通常中年以上にならないと始まらないが、男性更年期であるLOH症候群は早い人では30代から起こることがある。
なぜなら加齢以外でも、強いストレスや睡眠不足といった要因でテストステロンが減り、LOH症候群が起こる可能性もあるからだ。
LOH症候群をチェックするものとしては、フィジカルからメンタルまでを広くカバーする17項目からなる「AMSスコア」が一般的(下図参照)。26点までなら正常だが、27点以上なら疑いアリ。
LOH症候群を対象としている泌尿器科やメンズヘルス外来を検索して受診するべし。血液検査を行い、前述のフリーテストステロンの血中濃度が8.5pg/mlを下回ると、LOH症候群と診断されて治療の対象となる。
2. テストステロン補充療法とは?
LOH症候群には、減ったテストステロンを補うテストステロン補充療法(TRT)が有効。TRTには2つある。
ひとつ目はテストステロンの注射。テストステロンの濃度が上がり、LOH症候群に効果抜群。こちらは健康保険の適用が受けられる。注射をすると血中濃度はグッと高まるが、そこから緩やかに低下するので2週間おきに注射を続ける必要がある。
もう一つの方法は、テストステロンをクリーム製剤で補うこと。
皮膚からのテストステロンの吸収率は決して良くないが、毎日行うと血中テストステロン濃度をある程度高められる。クリームを塗るのに最適なのは、皮膚が薄くて表面積も広く吸収率が高い睾丸だ。
残念ながらクリーム製剤は保険適用外の自由診療。施設によって価格差はあるけれど、一般的には3か月で2万円(3か月ごとの採血&チェック料金込み)程度。1日当たり200円程度で、寿命にも生活の質にも大きな影響を与えるLOH症候群が緩和できるならお安いもの。
ちなみに、かつてはTRTで前立腺がんが増えるとされてきたが、現在では否定されている。逆にテストステロン値が低い前立腺がん患者は、がんの悪性度が高いと報告される。
3. 自分でできることを見つけてやっておく。
日常生活の過ごし方次第で、テストステロンは減ったり、増えたりする。TRTのみに頼るのではなく、テストステロンに優しい生活を心がけたい。
最悪なのは、眠る時間を削って仕事に励み、残業終わりに痛飲してストレスを解消するような生活。睡眠不足もアルコールも、テストステロンの分泌を下げてしまうからだ。
ストレスもテストステロンを減少させる。ストレスを感じると、精巣でのテストステロン分泌を促す下垂体のホルモン(LH)が減るからだ。ストレス解消なら、お酒ではなくぜひ筋トレで。筋トレを行うと成長ホルモンが分泌されるとよく聞くが、テストステロンの分泌量だって高まるから一石二鳥なのだ。
食生活も大切。日本人に不足気味の亜鉛というミネラルは、テストステロンの分泌を促す作用がある。亜鉛は牡蠣や牛肉などに含まれる。
加えて玉ネギやニンニクなどの臭み成分である硫化アリルは、テストステロンの分泌を促してくれる(ただし、生食すると逆にテストステロン値は下がってしまうという研究結果もある)。
牛肉を玉ネギやニンニクなどと一緒に食べる焼き肉は、テストステロンを増やすもっとも手軽な方法。週1くらいはストレス発散を兼ねてノンアルで焼き肉パーティを楽しもう。
今日からできること。
- 睡眠不足を避ける。
- 過度な飲酒をしない。
- ストレスを極力溜めない。
- 週2〜3回の筋トレを習慣にする。
- 牡蠣などから亜鉛、ニンニクなどから硫化アリルを摂取。
何も特別な努力はいらない。食事、運動、睡眠という基本的な生活リズムを健康的に整えていくことが、加齢で落ちたテストステロンをV字回復させるうえでも重要なのである。