楽だから続けられる「筋肉を緩める」ボディケア
疲れて硬くなった筋肉を強く揉んだり、伸ばしたりすると余計に緊張して縮み、硬くなる一方。とはいえ、疲れて硬くなったカラダをどうにかしたい。開発者自身が自分のカラダを癒そうと発見した、今までの常識とは反する楽するメソッドで、頑張らずに全身を緩めよう。
取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾 監修/黄烟輝 エクササイズ指導/中村尚人
初出『Tarzan』No.831・2022年4月7日発売
頑張らずにほぐすマッスルリセッティング
疲れを取るため、マッサージに通ったり、ストレッチをしたりする人は多い。でも、一時的にカラダがラクになっても、疲れはなかなか取れない。そういう悩みがある人に、ぜひ試してほしいのが、「マッスルリセッティング」。押さない、揉まない、頑張らない、が合言葉。筋肉を緩め、一発でリセットする画期的な方法だ。
開発したのは、中国出身で中国の医師免許を持つ整体師の黄烟輝さん。
「発端は、私の個人的な体験。以前の私は、一日中クライアントのカラダを揉む生活でした。その日が終わる頃には腕の疲労度はマックス。あるとき疲れを癒やそうと温泉に入りながら、ふと筋肉を寄せて緩めてみると、ウソのようにラクになることを発見。この方法をマッスルリセッティングとして体系化したのです」
疲れて硬くなった筋肉を強く揉んだり、伸ばしたりすると余計に緊張して縮み、硬くなる一方。ストレッチでゆっくり静かに筋肉を伸ばすのは、伸ばすと筋肉が反射的に縮む反応(伸張反射)を避けるためだ。
マッスルリセッティングのやり方
マッスルリセッティングでは、張りや痛みを感じる場所を見つけ、近い方の関節か筋肉の真ん中に30秒間寄せる。これだけで筋肉が緩み、凝りも痛みも軽くなる。次に筋肉を5秒ほど揺らし、血流を促して疲労物質を流せばOK。手軽で優しい。
① 探す
緩めたいところに指や手を当てて軽く押し、痛みを強く感じる場所を見つける。強く押しすぎると緊張するので、軽めの負荷で。寄せて揺らしたら、もう一度軽く押し、筋肉が緩んでいることを確認。
② 寄せる(30秒間)
痛みや凝りを感じる場所から、指3本分ぐらい離れた箇所に指や手を添えて、筋肉を寄せ緩める。関節に向かって寄せるように意識しよう。四肢では筋肉を骨から浮かせるように、ふわっと寄せる。
③ 揺らす(10往復・5秒間)
痛みを感じる場所に指や手を軽く添えて、上下に優しく揺らして振動を与える。1秒間に2往復ほどのリズムで10往復。強く摑むと筋肉が緊張してしまうので、あくまでソフトタッチで行う。
「筋肉が緩むと、連携する脳の緊張もオフになり、交感神経の興奮が抑えられて疲れが軽減します」(黄さん)
まずは、デスクワークで緊張しやすい首すじと頭部にアプローチ。リセッティングの効果を実感したら、腰、肩、脚と疲れが溜まりやすいところを緩め、全身をラクにしよう。
デスクワークの疲れを気軽にリセッティング
こめかみ(眼輪筋)
目の使いすぎによる眼精疲労を和らげる
左右のこめかみに両手の人差し指を押し当て、痛みを強く感じる場所を探す。その少し奥に両手の指を当て、後ろから前へズラして筋肉を30秒間寄せる。痛みを感じる場所に改めて指を添えて、10往復優しく揺らす。
側頭部(側頭筋)
ピンと張り詰めている頭皮をリラックス
左右の耳の少し上に両手の人差し指を押し当て、痛みを強く感じる場所を探す。その少し下に両手の指を当て、下から上へ押し上げて筋肉を30秒間寄せる。痛みを感じる場所に改めて指を添えて、10往復優しく揺らす。
後頭部(後頭下筋群)
頭の重みを支える深部の筋肉を緩める
椅子に坐り、顎を軽く引いて両手の親指を髪の生え際に押し当て、痛みを強く感じる場所を探す。その少し下に指を当て、顎を軽く上げ、下から上へ押し上げて筋肉を30秒間寄せる。痛みを感じる場所に改めて手を添えて、10往復優しく揺らす。
緊張しやすい場所の凝りと痛みをリリースする
肩(肩甲挙筋、僧帽筋)
頑固な肩こりを元からシャットアウト
肩甲骨の内側の角(上角)を見つけ、首すじに沿って頭蓋骨まで同じ側の指を押し当て、痛みを強く感じる場所を探す。その少し下に反対の指を添え、下から上へ引き上げて筋肉を30秒間寄せる。痛みを感じる場所に改めて指を添えて、10往復優しく揺らす。左右を変えて同様に行う。
腰(脊柱起立筋、広背筋腰部)
重たい腰を軽くして、慢性的な腰痛から解放
背骨の両脇にある筋肉の盛り上がりに、両手の親指を押し当て、痛みを強く感じる場所を探す。その少し上に手のひらを当て、上から下へ押し下げて筋肉を30秒間寄せる。痛みを感じる場所に改めて手を添えて、10往復優しく揺らす。
脚(大腿筋膜張筋)
脚の疲れが溜まるところをリセットする
太腿の横に片手の親指を押し当て、痛みを強く感じる場所を探す。その両脇を両手で優しく挟み、真ん中に筋肉を30秒間寄せる。痛みを感じる場所に改めて片手を添えて、10往復優しく揺らす。左右を変えて同様に行う。
広いエリアをまとめてお手軽リセッティング
指や手の力を使わなくても、縮みすぎた疲れた筋肉を簡単に緩めることができる。それがここで紹介する「坐って前傾」と「背面壁押し」。デスクワークのブレイクタイムなどに試してほしい。
「坐って前傾」では、重力で肩甲骨が下がるこで背中上部の筋肉がリセットされ、「背面壁押し」では、脱力して壁に体重を預けることで、硬く縮こまっている背面全域が満遍なく緩められる。
坐って前傾
椅子に浅く坐り、膝を曲げて両脚を左右に大きく広げる。両腕をクロスさせる。全身の力を抜き、両脚の間に上体を深く前傾させ、両腕の間に頭を入れる。
ゆっくり呼吸をしながら1分ほどその姿勢をキープする。重力で肩甲骨が下がり、背中の僧帽筋などが肩甲骨で寄せられてリセッティングできる。
背面壁押し
壁に背中を向けて立ち、上体を反らせて壁に後頭部をつけ軽く体重を壁に預ける。膝を軽く曲げ、肩と腕の力を抜く。腕の重みで胸を開き、目を閉じてゆっくり呼吸をしながら1分ほどその姿勢をキープする。
これで首すじからお尻まで、デスクワークなどで縮んだままの背面の筋肉がまとめて緩められる。